まえがき
この話は、『ある兄妹の複雑な恋愛模様』最終話の続きですが、イフの未来とでも思ってください。
色々無茶がある話なので、あの終わり方でいい、という人はそのままスルーしましょう。









蛇足な話 もしくはありえるかもしれない未来 一




「ふう」

恭也は一つ息を吐いた。
何だか異様に落ち着いている。

「おにーちゃん、なんでそんなに落ち着いてるの?」

それになのはは頬を膨らませて文句を言った。

「別に慌てても仕方がない」
「それはそうだけど」
「色々と唐突すぎて、俺自身呆気にとられてる部分もあるんだ」
「うん」

それは一緒だと、なのはも苦笑して頷く。

「そろそろ行こう。みんな待ってる」

そう言って、恭也は手をなのはに差し出した。
それになのはは……怖ず怖ずと、白い手袋をした細い手で握る。

「なのは、似合ってるよ」

普段は着ない白い服……タキシードを纏った恭也は、微かに笑い、なのはを見つめて言った。

「ありがとう、おにーちゃん」

それに純白のウェディングドレスを纏ったなのはは満面の笑顔を浮かべたのだった。



◇◇◇



「俺はなのはのことを愛している」

縁側に座った恭也は、妙な貫禄を見せて茶を一口飲むと、唐突に言った。
それを恭也の隣で聞いていた桃子は、一瞬呆気にとられるが、すぐに笑った。

「それはみんな知ってるわよ」
「そういう意味では……いや、そういう意味も入るが、あらゆる意味でなのはを愛してる」
「それは……女性としても、ってこと?」
「ああ。妹としても、娘としても……女性としても。なのはも同じだそうだ」

それを聞いて、桃子はやはりまたも一瞬呆気にとられる。
二人で大事な話があると言われて、聞いてみればこれだ。母親として驚くな、という方が無理がある。
それでも桃子は落ち着いた声で聞いた。

「言ってる意味はわかってるの?」
「ああ。色んな人に迷惑をかけるというのもな」

それを聞いて、桃子はため息を吐いた。

「子供たちにかけられる迷惑なら、喜んで背負うわよ」

その言葉を聞いて、今度は恭也の方が驚いたように眉を寄せた。まさかこうも簡単に受け入れられるとは思っていなかったのだ。
それが伝わっているのかいないのか、桃子はもう一度ため息を吐く。

「なのはが恭也を男性として『も』好きなのは知っていたけど、まさか恭也までなんて」「……待て、かーさん、なのはのことに気付いていたのか?」
「当たり前よ。というよりも、気付いてなかったのは恭也だけ。なのはも私たちが気付いてた、とは思ってないでしょうけどね」
「なら……」
「どうして何も言わなかったのかって?」
「……ああ」

今となっては詮無いことかもしれないが、どうして桃子たちは何も言わなかったのか。

「ある意味仕方がないと思っていたから」
「仕方がない?」
「色んな意味でね」

高町家には恭也以外は女性。そして高町家に関係する者たちも女性が多い。だからこそ、その答えにいきついてしまった。

「恭也がなのはの初恋の相手。これも仕方がないことよ。女の子の初恋が、父親や兄弟であることはそう珍しいことじゃないから。とくに恭也となのはは歳が離れてるし。これは男の子だって同じでしょ?」
「たぶんな」

恭也の場合、あまり普通の幼少時代を過ごさなかっただけに、簡単には頷けないが、それでも一般的な知識としてはそんなものだろうと思っている。
男の子も初恋というのは、母親であったり、姉であったりするものかもしれない。恭也の場合はその姉……フィアッセ……であったし、そう的外れでもないだろう。

「うん。ただこういう場合は、いつのまにか忘れちゃうものなのよね。相手が家族なんだもの。だから本当の意味で初恋って言うのは、その後、家族ではない異性になるものなのよ」

家族は当然血の繋がりがあるから、いずれはそれに忌避が浮かぶ。だからこそ、いつか忘れてしまう。
それは家族愛であったものだ、とされるのだ。

「でもなのはの場合は、そもそも周りに異性がいないでしょ?」
「確かに」

元々この家には男は恭也しかいないし、恭也にもまともな同姓な友人と言ったら、赤星勇吾ぐらいしかいない。とはいえ、その勇吾とて度々高町家に顔を出すというわけではないから、なのはと知り合いではあっても、親しいとは言えない。

「だからそのままになった。立場や環境、どれをとっても仕方がないこと。それでもいずれは割り切れるようになると思ってたのよ。成長すれば、恭也とは一緒になれないってわかることでしょ?」
「……そうだな」

実際、なのははわかっていた。だが、それでも想いが枯れることはなかった。
それが一時、彼女を苦しめたのだ。

「だけど、その想いの純粋さと、やっぱり立場と環境から、恭也以外には考えられなかったんでしょうね」

それはなのは故に。なのはの立場と、その純粋さが引き起こした。
だから、やはりそれも仕方がないこと。

「私も……私達も、なのはの初恋だから好きにさせたかったのよ。初恋を自分の手でケリをつけてほしいって言うのと、やっぱりデリケートな問題でもあるし。
それにそれだってなのはを成長させてくれるから」
「そうかもしれないな」

確かに恭也も今ならわかる。
そういう恋愛というものは、個人を成長させてくれる糧になると。

「母親としては止めなきゃいけなかったのかもしれないけど、でも同時に母親としてその恋は諦めろとは言えないわよ。いえ、少なくとも、私は言えなかった。
何より私が言ってもどうにもならない。そういう気持ちって誰かから諦めろって言われたって諦められるものでも、忘れられるものでもないでしょ? それが家族からの言葉だったとしても。結局諦めるか諦めない、忘れる忘れないかを決めるのは本人なんだから」
「ああ」
「いずれ恭也が結婚でもすれば、本当に諦めもついて、なのはを成長させてくれるって思ったから何も言わなかった。
蛍ちゃんっていう恋人ができて、それもようやくかな、って思ったんだけど」

逆に火か点いちゃったか、と桃子は苦笑した。
もしかしたら桃子は、それすら予想していたのかもしれない。
母親として、本当になのはを……そして恭也を、彼女はよく見ていた。

「でもやっぱり少し驚きもあるわね」
「うん?」
「なのははともかく、恭也がなのはを選ぶとは思えなかったもの。それが妹としてであろうと、女性としてであろうとこれからずっと一緒にいるって誓ったんでしょ?」
「まあな」

それはやはりなのはを選んだということ。

「それはやっぱり驚くわよ。恭也はちゃんとした倫理観があったでしょ?」

その質問に恭也は思わず苦笑してしまった。
殺すための剣を握り、殺すための技術を操り、そして実際に人を殺したことがある恭也は、自分に真っ当な倫理観があるとは思えないのだ。
だがまあ、確かにそう言った方面の倫理観はあったかもしれない。今となっては思い出せもしないが。
ならばなぜそれが取り払われてしまったのか。やはり蛍との恋人としての最後の会話が原因なのか。
いや……きっと違う。

「たぶん、ずっと前から俺はなのはを意識していたのだろうな」

それはきっとあの時から。

「俺となのはは血が繋がっていないかもしれないんだ。あくまで可能性としてだがな」
「どういうこと?」

真剣に問いかけてくる桃子に、恭也は血液型についての話をした。かつて自分自身で知ったことを。そして、なのはもこのことに自然と気付いてしまったことも。
それに多少驚きを見せたものの、桃子は慌てずに頷いた。

「そう」
「父さんが知っていたのか、それとも知らなかったのか、それはわからないがな。それにあくまでかもしれないだ。ちゃんと調べたわけじゃないから」

反応からして、少なくとも桃子は知らなかったようだし、やはり士郎も知らなかったのかもしれない。だが、今となってはもうどうでもいいことだし、確認も取れない。
恭也は今更このことで、桃子にそれで親子でなくなってしまうかなどと馬鹿なことを問う気はないし、彼女も求めていないだろうから、そのことについてそれ以上何も言わない。
それにやはり可能性でしかない。血が繋がっていないというちゃんとした確証はないのだから。

「それを知ったのは、もう随分と前のことだ。その時は血の繋がりなど関係なくなのはは妹だと思っていたのだが」

だがきっと、それだけではなかったのだろう。

「口ではどう言っても、表面的にはどう思っても、やはり心の奥底では意識していたのかもしれない」

きっと恭也は色んな意味で、なのはを意識し続けていたのだ。だからこそ女としての彼女も同時に意識していた。
始まりは、きっとそんな些細なことだったのだろう。それが本当に表に出てきたのがもっと後のことだっただけ。
少しずつ、小さく溜まり続け、気付いたのが数年後だったというだけだった。
だからこそ、なのはの想いに気付いた……いや、蛍に気付かされた時、彼女の想いをおかしいとも、異常だとも思えなかったのだろう。

それらを聞いて、桃子は唐突に苦笑した。

「まあでも、誰かを好きになるのに理由なんていらないのかもしれないわね。理屈もありはしない。理由と理屈がないから、結局誰を好きになったっておかしくはないのよ」
「そうかもな」

桃子の言うことは正しい。だけど同時に間違ってもいるだろう。
好きになることに理由と理屈は必要としないと言うが、好きになった理由がある人だっているし、理屈をたてる人だっているはずだ。だが、同時にそんなものを必要とせず人を好きになることもある。
そして、本人たちには理由と理屈が必要なくとも、周りがそれを必要とする時がある。
つまりは恭也となのはの周りにいる者たち。
兄が妹を、妹が兄を好きになる理由がない、理屈が通らないと言う者たちも絶対にいるだろうから。
桃子のように認めてくれる方が希なのだ。
もしかしたら美由希たちも認めてくれるかもしれない。だが、絶対に全ての人が認めてくれることはない。
血が繋がっていたとしても、繋がっていなかったとしても、周りは二人を兄妹だと思ってきたのだから。

「これから、どうするの?」

桃子は、茶を飲み、ふうと一つ息を吐いて聞いた。

「わからん」

だが、恭也の答えは簡潔だった。
わかるわけがない。
というよりも、

「これまでとあまり変わらないさ」
「それもそうね」

単純に、恭也となのはは当然のことを認識したにすぎない。そのためこれからの生活がそれほど変わるものではない。無論、少しは変わるところも当然あるだろうし、未来を見据えるならば、考えなければならないこともたくさんあるが。

「でも……」
「うん?」
「なのはの夢は叶えて上げたいわね」
「夢?」

翠屋なの店長二代目になるというものか、と恭也は首を傾げた。
まあ、それなら確かにこれからのためにもなる。
そう恭也が呟くと、桃子はなぜか笑った。



◇◇◇



それなりの時が経ったある日。営業時間を終え、閉店した翠屋へと桃子に呼びだされた恭也となのはの前に、彼女は一通の書類が差し出した。

「「婚姻届?」」

恭也となのはは、その書類を見て同時に呟いてしまった。
桃子がテーブルの上に差し出した書類は、まさしく婚姻届だった。しかもご丁寧にも、恭也となのはの名前まで書き込まれている。

「あー、かーさん、これはどういうことだ?」

困惑しているなのはに変わり、恭也が桃子へと聞く。

「どういうって、そのままよ」

桃子の返答に、いや、確かにそうだろうが、と恭也は言葉を詰まらせる。
桃子はニヤッと笑い、新たにもう一つの書類を出してきた。

「これって……」

それを見て、なのはは驚きに目を見開いた。
その後から出された書類は……色々と長ったらしく書かれているが、要約すると上記の二人には少なくとも、三親等以内の血の繋がりはない、ということが書かれている。
DNAや血液による鑑定結果。
そしてそこに書かれてある名前は、高町恭也と高町なのは。

「あなたたちに血の繋がりはないのよ」
「あ、その、え……?」

やはり困惑したままのなのは。

「なーに? 二人は別にもう血の繋がりとか関係なく、色んな意味で愛し合ってるんでしょ?」
「お、お母さん、なんで!?」

なんで知ってるの!? と困惑とは違う意味で、なのはが目を見開く。
それに恭也はすまんと謝罪した。
それで桃子には言っておいたのだと、なのはは理解して落ち着くが、再び鑑定結果を見て困惑する。
それを見ても……可能性としてだけでなく、本当の結果を見ても、なのははそれ自体に恐怖心は抱かなかった。もうなのはには確固たる想いがある。それが揺らぐことはない。
血が繋がっていなくとも、恭也を兄として愛している。それが揺れることはなかった。
そう考えている自分がいて、なのはは安堵の息を吐く。
が、

「つまり、あなたたちは結婚しても問題ないってことよ」
「結婚!?」

続く桃子の言葉で、さらに驚くなのは。
だが恭也は眉をひそめた。

「……血は繋がっていなくとも、俺たちは戸籍上は本当の兄妹だ」

そう、事実はどうであれ、恭也となのはは本当に血の繋がった兄妹とされている。
もしそうでなかったら、とうの昔に戸籍を見て、恭也なり桃子なりが気付いていただろう。
だが、そうであるからこそ、戸籍で認められた結婚は二人には出来ない。

「ああ、そのへんは大丈夫よ。ちゃんとしたから」
「ちゃんと……って」

そんなことできるわけがない。
少なくとも本人たちの意思確認。もしくは恭也の本当の……いや、血の繋がりのある父親、母親にだって何かしらの確認が必要だろう。それをなしにできるわけがない。
つまり、

「そういうことか」

恭也は一つ嘆息する。
おそらくはツテを最大活用したのだろう。そのぐらい何とかしてしまえる知り合いが、恭也にはいて、同時に桃子にもいた。もしかしたら、この鑑定結果すら改竄されている可能性だってあった。
つまり、やはり二人が本当に繋がった兄妹か、そうでないかはわからない。知っている可能性がある者は、目の前の桃子だけだろう。
それはわかった。だが恭也はそれ以上のことは聞かなかった。今更、その答えは求めていない。本当のことなどどちらでもいいのだ。
そんなある意味冷静である恭也ではあるが、なのははそうもいかない。

「な、なのはとおにーちゃんがけ、結婚!?」

本当に混乱しているのか、久しぶりに自分のことを『なのは』と言い、叫ぶ。
混乱するなというのは無理があるというものだ。
確かになのはは恭也を男としても愛している。恭也もまた同じ。それ故に、背徳的な行為と理解していたが、身体を重ねたこととて何度もある。場所がなくてもう色々と大変だった。結局誰もいないときに家でというのが多い。最初のときなど、色々と残ってしまった布団をどうしようとかも大変だった。が、ここでは関係ないので割愛。
とにかく、そんな関係でもあるからこそ、二人は兄妹であり、親子であり、恋人でもあった。そこに夫婦というものを入れらられるのだろうか?
周りがそれを許してくれるとは思えない。
それでも、

「私も息子と娘の幸せな姿を見たいし、娘の夢、叶えて上げたいじゃない」
「お母さん……」

桃子の慈愛に満ちた笑顔に、なのはは涙ぐむ。
だが、桃子はすぐにニヤリと笑い、

「ちゃーんと覚えてるわよぉ。小学校の頃に将来の夢はおにーちゃんのお嫁さんって作文に書いてたの。もう、本当になのはったら可愛いんだから」

からかいに入った。

「ぬ」
「お、お母さん! 私の感動を返して!」

幼い頃の夢とはいえそんな可愛らしい夢を知らなかった息子は僅かに顔を赤くし、幼い頃の恥ずかしい夢を対象本人の前で暴露された娘は、照れからか怒りからか顔を赤くして叫ぶ。
そんな中、恭也は咳払いをすると腕を組む。

「いいのか?」

彼はただそう一言、桃子に聞いた。
たった一言。だが、それはひどく重いというのは、ここにいる三人全員がわかっている。
確かに、二人には……本当かはわからないが……血の繋がりがなかったようだ。だが、人の記憶は二人が兄妹ではない、ということにはならない。
兄妹での結婚というのは、例え血の繋がりがあろうがなかろうが、周りからいらない視線と、陰口を集めるだろう。それは本人たちだけではない。家族である桃子たちにもだ。
無論、結婚などせずとも、二人はそういう関係でもあったから、いつかはという問題でもあったかもしれない。だからこそ恭也は最初に桃子にだけは言っておいたのだ。
だが、結婚すればそれを公言するのと一緒だ。

「言ったでしょ。子供たちにかけられる迷惑なら、喜んで背負うって」
「かーさん」
「お母さん」

やはり慈愛を込めて微笑む桃子に、恭也は感謝し、なのははやはり涙ぐむ。

「美由希たちも、幸せになってほしいって」
「美由希たちが?」
「ええ。みんなには私から言っておいたわよ。で、これはみんなからのプレゼント。あとは結婚式も」
「結婚……式?」
「あとでなのはのウェディングドレスとか作らないとね」

そんな桃子の言葉を聞いて、恭也となのはは顔を見合わせる。
もう二人には内緒で、何から何まで決められていたのだ。それは確かにみんなからの贈り物で、二人に幸せになってほしいという想いなのだろう。
それがわかって、恭也は笑ってしまった。本当に、自分たちは幸せ者だと。
そして、

「なのは」
「は、はい」
「俺と結婚してくれるか?」

これまで兄妹で、親子で、恋人だった。
たぶんそれは一生変わらない。あのとき二人が辿り着いた答えは色褪せない。誰にどう言われようと、それに後悔はなく、その関係でこれからもお互いで愛しあっていく。
だけど、恋人という関係を、夫婦という関係に変えようと、恭也は微笑んだ。

「あ……」

その短くも想いの籠もった言葉……プロポーズに、なのはは両手で口を抑えた。
結婚。
それは絶対に恭也とはできないことだった。
諦めた、というわけではなかったが、それでもそんな関係でなくとも、なのはは恭也を愛していたから、そんなことはできなくてもいいと思っていた。
だけど、それができる。
母や大切な人たちからの贈り物。
そして、何より恭也の言葉が、なのはの心に響いた。

「はい!」

だからなのはは何の迷いもなく、だけど嬉しさで涙を流しながら、満面の笑顔で頷いたのだった。
そんな二人を、ただ桃子は優しく見守っていた



◇◇◇



二人の結婚式は、本当に小さな教会で行われ、本当に大切な人たちだけに祝福してもらった小さなものだった。
だけど、

「恭ちゃん、なのは! お幸せに!」
「なのちゃん! 綺麗やでぇ!」
「師匠、カッコいいです!」
「恭也、ちょっと緊張してるのかな、身体がちょっと堅いよ!」
「恭也! なのは! 早く孫を抱かせてねぇ!」
「く〜ん、なのは、綺麗」
「こ、こら久遠! 花嫁さんに近づいたらだめでしょ!」
「なのはちゃん! ちゃーんと恭也君を病院にこさせてくださいねー!」
「なのはちゃん! 飽きたら恭也貸してねぇ!」
「忍お嬢様、それは……」 
「恭也さーん、絶対になのはちゃんを離しちゃ駄目だからねぇ!」
「高町ー! なのはちゃんを幸せにしろよー!」

式が終わり、教会の外に集まっていた皆から向けられる声。その祝福の声は、大勢の者に向けられるそれよりも、二人にはよっぽど幸福に感じられた。
他にも、さざなみ寮関係の人たちや二人の大切な人たちが、二人の姿を見て、微笑んでいる。
そんな彼らを見て、恭也は微笑むと、となりにいる花嫁にして、妹であり、娘であり、最愛の人を見つめた。
すると彼女も、恭也を見つめ、幸せそうに笑う。

「おにーちゃん」
「なんだ?」
「幸せにしてね?」
「ああ、必ずな」

恭也は微笑みながら、それに深く頷いた。
幸せにしてみせよう。
それをこの場にいる全員に……そして、父に誓おう。
必ず、なのはを幸せにしみせると。






あとがき

蛇足の話。
エリス「二人の結婚式〜」
やっぱり蛇足っぽい。
エリス「でもいいんじゃない、二人とも幸せそうだし」
まあね。
エリス「まあ本当に血が繋がっていないのかは断定してないけど」
えと、ここで少しお話が。
エリス「なに?」
二人が結婚できて良かったー、夢を壊されるのはいやだー、と思う人は続きを読まないようにお願いします。
エリス「ということで少し改行します」











っと、間を空けましたので、続きを。
蛇足っぽい、と言いましたが、話自体が蛇足っぽいというのもそうなんですが、あんまりにも現実味がない話だからでもあります。
エリス「まあ、元々兄妹の恋愛だしね」
それはそうなんだけどね。現実的に言うと、この二人が結婚できる可能性は限りなく0に近いと思います。無論、この話の設定でも。
エリス「血、繋がってなかったとしても?」
戸籍の問題だからね。実際原作でだって二人が本当に血が繋がってるかはわからないし、描写からして、士郎がちゃんと調べたかもわからない。最初から恭也が士郎の養子だったとかなら問題ないと思うんだけど、血の繋がりがないとわかっても、この二人、戸籍上は本当の兄妹だから。このへんもまあ、士郎や不破、御神家が色々とやっただろうけど。
エリス「DNA鑑定とかしてもダメなの?」
この話を書く前に少し調べてたんだけど難しそう。士郎が生きてたり、夏織がいたりしたなら、まあまだ訂正できるのかもしれないけど。さすがにこの二人は特殊すぎて、法律系の本やらを見たり、過去の事例や判例とか見ても、ちとわからない。
エリス「だから蛇足なんだ」
そういうこと。早い話ツテを頼ってのダークパワーで戸籍をねじ曲げたってことだから。これもこの話を送るか送らないか迷ってた部分。ここに来ていきなり力業だから、それも普通はできないようなものだし犯罪です。
エリス「ああ、さらに現実味がなくなっちゃうわけだ」
です。でこれを送った一番の理由が、私の我が儘です。
エリス「言い切ったね」
まあね。今まで黒いのとか、ダーク風味だけどそれでも何となくハッピーエンド風みたいなのは書いたけど、真実幸福な二人というのを書いてないので、ここでちゃんと二人に幸せになってもらいたかった。
エリス「そのために現実味をなくしててでも書いたわけだ。現実味と幸福な話を天秤にかけて幸福を選んだと」
はい。書きたいから書いた、ということなんですけどね。やっぱり恭なの好きとして、一度は幸福な話を書いておきたかった。まあ、ありえるかもしれない未来ということに。
エリス「ということで、この蛇足な話は複雑恋愛のパラレル的な未来のお話と思ってください」
すみません。
エリス「とにかくお話はあと一話だけありますので」
そちらもパラレルということで。



うーん、難しい事はさておき、二人が幸せだから良いか(笑)
美姫 「確かに実際に戸籍上は兄妹となっていると結婚とかは無理だものね」
でも、二人のハッピーエンドは良いじゃないか。
美姫 「そうね。もう一つお話があるみたいだけれど」
そっちも今から楽しみだな。
美姫 「気になるもう一つのお話は」
この後すぐ!



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