目の前で起きている出来事が、現実のものと思えなかった。

 より正確にいうならば、現実の光景と信じたくなかった。

 柳也が……自分達の中でも、最強を誇るあの男が、あんなにも力なく倒れ伏しているなんて、現実の出来事として、認識したくなかった。

 先の破壊の杖事件のときも、その身に負ったダメージから、この男は一度ならず倒れたことがあった。

 あの時も、人事不省の状態で倒れ伏す柳也の姿を見て、ルイズ達は大きな衝撃を受けた。

 特にルイズは、寝台の上で昏々と眠り続ける男の姿を見て、もう二度とあの不敵な笑みを見られないのか、と恐怖さえした。自分のよく知る人間が……大切な人が、このまま死んでしまうかもしれない。このまま、目を覚まさないかもしれない。そんな冷たい恐ろしさに、ルイズの心は震えた。

 今回もまた、うつぶせに倒れる柳也の背中を見て、ルイズ達は衝撃を受けた。言葉を失った。しかも、今回受けた衝撃は、破壊の杖事件のときの比ではなかった。

 破壊の杖事件で柳也が倒れたとき、ルイズ達は無知だった。かの男が神剣士であることも、その肉体が高純度のマナで構成されていることも、何も知らなかった。

 しかしまた、何も知らぬがゆえに、彼女達が当時受けたショックは少なくすんだといえた。

 たとえば、医学の知識をまったく持たない人間が、医師から病名を告げられても、ピン、とこないように。たとえば、法律についての知識がまったくない人間に、難解な専門用語で飾られた起訴状を読み上げてもいまいち目立った反応がないように。無知だったからこそ、ルイズ達が受けた衝撃は少なかったといえた。

 しかし、いまは違った。

 他ならぬ柳也自身の口から、ルイズ達は神剣士の肉体の仕組みについて詳しく聞かされていた。

 神剣士が死を迎えるとき、その肉体がどうなるのか。その結末を、いまの彼女達は知っていた。

 ライトンング・クラウドの直撃弾を受けたらしく、柳也は全身に酷い火傷を負っていた。炭化した軍服と皮膚は所々一体化し、肉の焦げる異臭の中には濃厚な血の匂いが混ざっていた。

 熱で焼けただれた傷口からは、黄金のマナの霧が噴出していた。流れ出る血が、黒焦げた肉が、マナの霧へと還元され、蒸発しているらしかった。

 破壊の杖事件のときは何も知らなかった。

 しかし、いまは違う。

 いまは、噴出する黄金のマナの霧が、何を意味しているのかを、ルイズ達は知っている。

 死んでしまうかも、という不吉な想像ではない。

 このままでは死んでしまう、という確信。たしかな未来。その恐怖に、ルイズ達は凍りついた。目の前の光景は現実のものと、認めたくなかった。

「……何、やってるのよ、リュウヤ……そんなところで、倒れて。……そんなの、あんたらしくないじゃない」

 手負いのケティを介抱しながら、ルイズは茫然と口を開いた。

 動揺からか、弱々しい声音だった。しかし、神剣士の聴覚なら、どんなに小さな声でも拾ってくれるはずだった。柳也にまだ、意識があるのなら。彼にまだ、神剣士としての力が残っているのなら。応えてくれるはずだった。

 だが、期待した返事は、いつまで待っても、どれだけ待っても、返ってこなかった。

「何、やってるのよ、リュウヤ……。あんた、戦うことが大好きなんでしょ? ほら、そんな風に寝転んでたら、戦えないじゃない……ねぇ!?」

 ルイズはもう一度、柳也に向けて声をかけた。からからに乾いた喉を必死に震わせての、絶叫だった。

 けれども、柳也は応えなかった。応えるだけの力を、失っていた。

 急激な冷気が、ルイズを襲った。

 破壊の杖事件で、柳也が倒れた時に感じたのと、同質の寒さだった。

 ルイズの鳶色の瞳に、涙の滴が滲み出す。

 「嘘よ……」と、呻くような呟きを、彼女の膝の上で、ケティは聞いた。 

「いや……いやよ、こんなの……」

「るー、ちゃん……」

 自身も苦悶に表情を歪めるケティは、くしゃくしゃになったルイズの顔を、沈痛な眼差しで見つめた。

 見つめることしか、出来なかった。

 どんな言葉をかけるべきなのか。あるいは、かけてよいものなのか、わからなかった。

「まだ、何も伝えてないのに……何も、確かめてないのに、いやよ、こんな……こんな……!」

 自分が抱く、彼への気持ち。その正体。自分はまだ、何も始めていないのに、彼の方が先に、リタイアするなんて……。

「許さないんだから、そんなの……だから……だから、目を覚ましてよ、リュウヤぁ!」

 ルイズの悲痛な悲鳴が、礼拝堂に響いた。

 その叫びを、威嚇と捉えたか。

 ゴーレムの両腕を引きちぎり、拘束から逃れたティラノサウルスが、咆哮した。

 

 

 

永遠のアセリアAnother × ゼロの使い魔クロスオーバー

ゼロの魔法使いとその使い魔と、ついでに現われた守護の双刃

EPISODE:42「悪食」

 

 

 

 誰もが茫然とする中で、いち早く平静を取り戻したのはマチルダだった。

 柳也の身体から黄金のマナの霧が立ち上る様子を眺めていた彼女は、やがてあることに気づくと、杖を握る手に力を篭めた。ルーンを唱え、杖を振る。使い魔の神剣士を取り囲むワルドの群れへと、ウィンド・ブレイクを放った。

 土メイジのマチルダだが、なんといっても彼女はトライアングル・クラスのメイジだ。

 マチルダの放った突風は、並の風メイジでは到底及びもしない勢いと速度で、“偏在”の魔法で数十人に分身したワルドを襲った。

 対するワルド達は、全員が等しく侮蔑の笑みを口元に浮かべて、ウィンド・ブレイクの竜巻を迎え撃った。

 ある者はオーラフォトン・シールドを展開し、またある者はより強力な風の魔法を唱えて、襲いくる強風をねじ伏せる。

「血迷ったかね、ミス・ロングビル?」

「風メイジの、」

「それもスクエア・クラスのこの僕に、」

「風の魔法で挑むなんて」

「パートナーがやられて、気がふれたとしか思えないが?」

 竜巻の魔法を防がれながら、次々と浴びせられる嘲笑の言葉。

 しかしマチルダは、そんなワルド達の態度にはまったく動じず、逆に不敵に微笑んでみせた。

「あんたにとっては残念なことに、正気だよ。……いまのウィンド・ブレイクは、べつにあんたを吹き飛ばすための魔法じゃない」

 それでは、いったい何のための魔法だったのか。

 かつては“土くれのフーケ”の名前でトリステイン中の貴族達を恐怖させたマチルダだ。彼女ほどの歴戦のメイジが、意味もなく魔法を放つとは考えにくい。

 先のウィンド・ブレイクは、いったい何を目的とした魔法だったのか。攻撃を防いだワルドだけでなく、才人達もまた抱いた疑問は、ほどなくして氷解した。

 ワルドの集団に取り囲まれていた六尺豊かな大男の姿が、いつの間にか消えていた。

 一瞬、最悪の事態を想像してしまった才人達は、慌てて柳也の姿を求め、視線を方々に巡らせる。

 探し人はすぐに見つかった。それまで、礼拝堂のほぼ中央で横たわっていた柳也の体は、いつの間にか始祖ブリミルの像の前まで移動し、その場で仰向けに倒れていた。自ら這って移動したふうではない。いやそもそも、いまの柳也にそんな体力はない。なるほど、先のウィンド・ブレイクは、彼をあの位置まで移動させるためのものだったか。しかし、なぜ? いったい、何のために……

 怪訝な表情を浮かべる才人達に、マチルダは視線をワルド達に注いだまま言い放つ。

「まだだよ。いまならまだ、間に合う」

「間に合うって、何が……」

 才人の力のない問いかけに、マチルダは強い語調で答えた。

「肉体の蒸発が始まってから、まだ時間が浅い。消滅のペースもゆっくりだ。いまならまだ間に合う。いまならならまだ、リュウヤを助けることが出来る!」

 元神剣士のマチルダの口から出た力強い言葉に、才人達は、はっ、と瞠目した。

 絶望した表情が一気になりを潜め、代わって縋るような眼差しを、マチルダの横顔に注いだ。

 短い期間だったとはいえ、マチルダはかつて第五位の永遠神剣と契約を交わしていた身だ。神剣に関する知見は、チームの中で柳也に次いで深いものがあった。その彼女が、いまならまだ柳也を助けられると言う。才人達の心臓は、自然と期待で高鳴った。 

 もとより、神剣士の生命力は強力だ。 常人ならば即死間違いなしの致命傷も、神剣士ならば自然に治癒する。極端な話、たとえ心臓をもがれたとしても、マナの補充さえ出来れば、失った臓器の再生さえ可能だった。

 まして柳也が契約している神剣は、体内寄生型が二振。免疫力や自然治癒力を含む身体能力全般の強化に優れる神剣だ。蒸発が始まってから時間の浅いいまならまだ、マナの補充さえ効けば、瀕死の彼を助けられるはず。かつて神剣士だった経験から、マチルダはそう判じていた。

 ウィンド・ブレイクの魔法で強引に柳也を移動させたのも、すべては彼の身を思ってのことだった。風の魔法は、これ以上攻撃を受けないようにするための措置だった。

 ブリミル像の側で横たわる柳也の姿を見て、ワルドは得心した表情で頷いた。

 マチルダと違い現役で神剣士の彼は、彼女の企みを正確に読み取った。

 ワルドは侮蔑の冷笑を浮かべたまま言う。

「なるほど、先のウィンド・ブレイクは、リュウヤを僕達から引き離すための魔法だったか」

「それならば納得だ。いまならばまだ救える命も、これ以上の追撃を受ければ確実に散ることになるだろうからね」

「しかし……」

 ワルドの一人が、やれやれ、とばかりにかぶりを振った。

「それでも、やはり気がふれたとしか思えないな」

「リュウヤを助けるためにはマナが必要だ」

「それも、瀕死の神剣士の命を繋ぎ止めるほどの、膨大なマナがね」

「それほどのマナを、いったいどうやって調達するつもりだい?」

「この礼拝堂内の空間からマナを吸い上げる?」

「なるほど、名案だが、」

「いま、この礼拝堂には僕がいる」

「同時に僕がこの空間からマナを吸い上げれば、」

「すべてはご破算だ」

「さあ、どうするかね?」

「いまこの場に、きみ達が自由に出来るマナはないぞ?」

「いいや……マナなら、ある」

 次々と降りかかるワルドの言葉に、しかしマチルダは、毅然とした態度でかぶりを振った。

 ゴーレムの拘束を解いたティラノサウルスには一瞥もくれず、ワルドのみを真っ直ぐ見据える。

「自分を忘れていないかい、ワルド? 神剣士のあんたなら、リュウヤを助けるのに必要十分なマナを溜め込んでいるはずだ」

「……なるほど、そいつは盲点だった」

 数十人のワルド達は、侮蔑の笑みを引っ込めると、揃って真顔になった。

「危機的状況であればこそ、一か八かの勝負に出る、か……。前言を撤回しよう、ミス・ロングビル。どうやらきみは、この場においていちばん冷静な人物らしい」

 ワルドの唇から、感嘆の吐息が漏れた。

 言葉にこそしなかったが、彼はマチルダのことを厄介な相手だと思った。単に冷静なだけでなく、度胸もある。危機的状況に際して弱気を捨て、かえって大胆な決断をすることが出来るというのは、勇者の資質十分といえた。

 マチルダの企図する作戦は、まさしく大胆不敵と評せた。瀕死の柳也を助けるために、最大の敵たる自分を倒す。上手く事が運べば最大の脅威を排除出来るばかりか、最強戦力を復活させることが出来る。ハイ・リスクだがハイ・リターンの作戦だ。普通ならば、リスクにばかり目がいって二の足を踏むような案だが、マチルダにはそれを実行するだけの胆力があった。そんな彼女を、ワルドは油断のならない相手と認めた。

 偏在の魔法で分身したワルド達が、隊列を組み直した。中央は薄く、両翼は厚く。鶴翼の陣だ。兵力差を活かした、包囲殲滅の構えだった。

「リュウヤのおかで少し数を減らされたが、」

「それでも、“偏在”の魔法で作った分身はまだ四十人いる」

「本体を含めて四一人だ」

「少々卑怯とは思うが、この兵力差を活かさせてもらうよ」

「……サイト、頼めるかい」

 両力の圧迫を強めるワルドの群れに視線を向けたまま、マチルダは才人に言った。

「威勢よく啖呵を切ったはいいが、わたしじゃ、どうあがいたってワルドには敵わない。……せいぜい」

 マチルダは親指を立てて背後を示した。その先には、ワルドの指示を待って獰猛に武者震いするティラノサウルスの姿がある。

「あのデカブツの相手をするのが精一杯だ。悔しい話だけど、わたしじゃあ、神剣士の相手は務まらない。わたしじゃあ、使い魔の仇を取ることも出来ない」

 もともと、ワルド自身が口にした通り、この作戦は一か八かの大博打だ。なんといっても敵は、柳也をも打ち破ったワルドなのだ。

 ガンダールヴでなければ。柳也に次ぐ実力の、才人でなければ。ワルドの相手は務まらなかった。

 自分で提案しておきながら、結局は他人任せ。マチルダが才人の方を振り向かないのは、彼へのそんな負い目も関係していた。

「勿論、出来る限りの援護はするけど……」

「援護はいいです。マチルダさんは、あのティラノサウルスに集中してください」

 マチルダの心情とは裏腹に、才人は迷わず頷いた。

 やけにあっさりと応じた彼の態度を不審に思ったか、マチルダは彼の方を流し見た。

 思わず、息を呑んでしまった。

 才人はワルドに、凄絶な眼光を向けていた。火のような怒りを含んだ眼差しだ。凄まじい怒気の余波に当てられて、マチルダは思わず胴震いをしてしまった。

 左手のルーンが、炯々と輝いていた。どうやら才人の感情の昂ぶりに応じて、輝きを増しているようだった。

 自分を騙し、ルイズを騙し、友と呼んだ柳也さえ騙した。そればかりかウェールズの命を奪い、リュウヤにまで致命傷を負わせた。激しい怒りの炎に、才人の心臓は、魂は燃えていた。

「願ってもないことっすよ。リュウヤさんは、弟子の俺が助ける!」

「勇ましいな、ガンダールヴ」

 ワルドの表情からは、侮蔑の冷笑も、余裕の笑みも消えていた。

 油断のない視線を注ぎながら、四一人のワルドが、一斉にサーベル杖を構えた。

 対する才人は正眼の構え。攻防自在の構えで、ワルド達の顔を睥睨する。

「伝説の使い魔対神剣士か、面白い」

「抜かせ!」

 雄々しい咆哮とともに、才人は床を蹴った。

 両翼を広げて待ち構える鶴の陣形に、真っ向から挑んでいく。

 一見、無謀ともいえる行動だが、才人なりに考えた末の突貫だった。目の前の敵は歴戦の猛者だ。そんな相手に、自分如きがちょっと頭を捻った程度の作戦が通用するはずがない。下手な小細工は諦めて、真正面から、全力で挑んだ方がまだ勝算はある。才人はそう考えた。

 敵は四一人、我は一人。

 才人の孤独な戦いが、始まった。

 

  

 全身を苛む苦痛よりも、肉体が徐々にマナの霧へと還元されていく感覚の方が辛かった。

 自分という人間を形作るモノが、徐々に失われていく。喪失感とも、脱力感とも形容出来る違和感に五体を犯され、しかし呼吸器系をやられているがために呻き声さえ発することも出来ず、桜坂柳也は、浅い呼吸に苦悶を載せて体外に吐き出すしかなかった。

 実のところ、偏在の魔法で分身したワルドの一団と才人達のやりとりは、横たわる柳也の耳にも届いていた。

 神剣の力で強化された魔法の数々を受け、瀕死の重傷を負ってなお、この男の意識は明瞭だった。

 四七人にも分身したワルドに戦いを挑んだ彼は、分身体を六人倒したところで、ついに力尽きた。

 マナを著しく消耗した柳也に、ワルド達は容赦なく魔法を浴びせかけた。ライトニング・クラウドに身を焼かれ、エア・ハンマーの連打に全身の骨を砕かれ、風の刃に四肢の腱を切られた。幸か不幸か、それらの攻撃による痛みが、かえって柳也の意識を繋ぎ止めていた。

 意識ははっきりしていたが、柳也に五体の自由はなかった。

 腱を切られ、神経をずたずたにされた四肢は、文字通り指一本動かすことが出来なかった。瞼を開けるという、小さな動作でさえ凄絶な苦痛を伴った。僅かに、喉を震わせ声を出すことのみ可能だったが、雷撃魔法の熱は、先述の通り彼の呼吸器系をも犯している。吐き出す声は、蚊の鳴き声よりもか細かった。

 ――たしか……、前にも、こんなんあったよなぁ。

 柳也はかつてバトル・オブ・ラキオスの防衛戦の際に、敵の神剣魔法の直撃を受けたときのことを思い出した。あのときも、ニムを庇って敵の魔法を受けた自分は、いまと同じように倒れる羽目になった。

 ――だけど、あんときは回復魔法使えるニムがいたしなぁ……それに、腕は動いたし。

 あのときは、炎の魔法の直撃を受けてもなお、剣を握るだけの力が残っていた。

 しかしいまは、剣を握るどころか、呼吸さえままならない。ゆっくりではあるものの、肉体を構築するマナが分解されつつある。ダメージは、今回の方がずっと大きかった。

 ――そう、か……死ぬって、こんな感覚なのか……。

 マナが、失われていく。

 自分の肉体を、魂を形作る原始生命力が、己の意志とは無関係になくなっていく。

 寒かった。

 寒いと感じる皮膚さえもが、マナの霧となって蒸発していった。

 寒いという感覚さえもが、消えていく。

 そのことが、たまらなく寒かった。

 ――く、そッ……まだ、瞬も見つかってないのに……佳織ちゃんを、助けてないのに……。

 こんな、ところで。

 地球でも、ファンタズマゴリアでもない。

 こんな、異世界で、自分は死ぬのか。まだ、何もしていないというのに。まだ、誰も救っていないというのに。自分は死ぬのか。

 悔しかった。

 たまらなく、悔しかった。

 身の内から湧きあがる悔しさに歯噛みしながら、うつ伏せの柳也は、ひっそり、涙を流した。涙の滴が涙腺から滲む度に、苦痛を感じた。

 柳也の体をウィンド・ブレイクの魔法が襲ったのは、そのときのことだった。

 嵐のような突風に弾き飛ばされた柳也は、やがて壁にぶつかり、ブリミル像の側に落下した。

 背中から床に叩きつけられて、喉の奥から赤い塊が飛び出す。

 柳也は、ひゅっ、ひゅっ、とかすれた咳を繰り返した。

「いまならまだ間に合う。いまならならまだ、リュウヤを助けることが出来る!」

 小さく咳き込む柳也の耳膜を、マチルダの声が撫でた。ライトニング・クラウドの魔法に喉をやられた柳也だったが、聴覚はまだ生きていた。

 始祖ブリミルの無機質な瞳に見下ろされながら、柳也はマチルダの作戦を聴いた。

 自分を助けるために、ワルドを倒す。一か八かの大博打。彼女はワルドの対抗馬に、才人を指名した。

 その言葉を聞いて、柳也は底冷えするような寒さを自覚した。

「願ってもないことっすよ。リュウヤさんは、弟子の俺が助ける!」

「無茶、だ……」

 己を命を繋ぎ止めようとする弟子の言葉を嬉しく思いながら、しかし柳也は、悲壮な表情で呟いた。

 血に濡れた喉を必死に震わせて、ようやく吐き出した声。しかし、それでも蚊の鳴くような声しか出なかった。当然、離れた場所にいる才人達には届かない。

「やめ、ろ……」

 柳也はもう一度、声を張り上げた。

 張り上げたつもりだったが、やはりかすれた声しか出なかった。

 ――駄目だ。いまの才人君じゃ、奴には敵わない……!

 ワルドの強さは自分が身をもって経験した。いまの才人では、あの男には敵わない。無駄に命を散らすだけだ。

 ――俺には、帰りを待ってくれるような肉親はいない。けれど、きみは違うだろう!

「きみは……必ず、地球に帰らなきゃ、ならん、身だ、ろ……」

 やめろ、と何度も叫んだ。しかし、その声は届かなかった。

 地面を蹴る音が、耳膜を打った。

 聞き慣れた、才人の靴の音。

 柳也の瞳から、また涙がこぼれた。

 死地に赴こうとする弟子に、何もしてやれない自分が、悔しかった。

 その時、不意に柳也はぬくもりを感じた。

 ぽかぽか、とした優しい熱が、自分の身体を包み込んでいる。

 いったい何が起こったのか。

 柳也は苦痛に耐えながら、そっと瞼を開けた。

 木製のブリミル像の顔が、視界に映じた。

 次いで、耳朶を男の声が撫でた。

「すま、ない……」

 昨日、顔を合わせてから、短い間に、すっかり聞き慣れた声。

 首の筋肉を必死に動かし、顔を傾けると、腹這いに倒れ伏すウェールズ皇太子の顔があった。

 口から血を吐き、震える手で、杖を握っている。

 そういえば、彼がワルドに胸を貫かれたのは、始祖ブリミル像のすぐ側だったか。

 てっきり死んだと思っていた王子が言の葉を紡ぎ、自分を見つめている事実に、柳也は驚いた。

「僕は、風のメイジでね……水の回復魔法は、専門外なんだ……」

 青色吐息のウェールズは、朱色に濡れた唇でそっと微笑むと、力のない声で続けた。その声を聴いて、柳也は皇太子の死期が近いことを悟った。自分と同じだ。即死こそ免れたものの、致命傷を負い、死を待つばかりの重体だった。

「だからせいぜい、死にゆくきみの、痛みを和らげることぐらいしか出来ない……」

「……いえ、十分、です」

 ウェールズ同様、力のない声で柳也は応じた。

 自分もまた、死に瀕しているというのに、他人を気遣おうとする彼に、不覚にもまた涙がこぼれた。

「すまない、な……」

 ウェールズが、また謝罪の言葉を口にした。

 いったい、何のことか分からずに、柳也は怪訝に訊き返す。

「きみたちを、巻き込んでしまったことに対して、だよ。……何の罪もない、きみたちを」

「それについてだったら、俺達の方こそ」

 ワルドをここまで連れてきたのは、他ならぬ自分達だ。自分達が、この国に厄災の種を蒔いたのだ。

 柳也は瞑目し、静かに涙を流しながら、「申し訳ありませんでした」と、口にした。

 それから彼は、首を傾け、始祖ブリミル像を見上げながら口を開いた。

「……悔しいなぁ。なんて、俺は無力なんだ……」

「従者くん……」

「いつも、俺はそうだ。肝心なときに、役に立たない……大切な人を、守ることが出来ない」

 現代世界で、タキオスとメダリオに襲われたとき、自分は瞬を守ることが出来なかった。

 あのときの悔しさを、もう二度と味わいたくなくて、必死に修行に励んだ。それなのに……、

「くしょう……ちく、しょぉ……せめて、あと少し……」

 マナさえ、あれば。

 マナさえあれば、自分もまた、才人達のもとへ行けるのに。

 涙ながらに口からこぼれ落ちた言の葉は、やはり小さく、か細く、

「……マナ?」

 しかし、柳也と同様、死の淵に立つ皇太子の耳には、たしかに届いた。

「そういえば、さきほどからきみたちが口にしている、マナというのはいったいなんなんだい……? マナというのがあれば、ワルド子爵を、倒せるのかい?」

 

 

 ワルド達の鶴翼の陣形に真っ向から突っ込んでいった才人は、当然のごとく、風の魔法の十字砲火に曝された。

 エア・ハンマーの魔法が十数発左右から襲いかかり、正面からはウィンド・ブレイクの突風が向かってくる。頭上には、ライトニング・クラウドの雷雲。

 まさしく四面楚歌の状況下で、しかし才人は、猛然と吼えた。

「たかが風だろッ! 伝説舐めんな!」

 左右からの殴打をときに避け、ときにデルフの刀身で受け止め、防ぐ。

 トリステインの城下町で新金貨八十枚で購入した骨董品の剣身に触れる度、ワルドの放った風の魔法は消滅していく。デルフの刀身に吸い込まれたのだ。正面からのウィンド・ブレイクも、才人は魔法を吸収する剣身で断ち切った。

「ふむ。そういえば、その剣は魔法を吸い込むのだったな」

 ワルドの一人が思い出したように呟いた。

 正面に立つワルドのうち四人が前に出て、杖を青白く光らせた。エア・ニードル。ウェールズの胸を貫いた魔法だ。

 青白く輝くサーベル杖は、剣身部分が細かく震動していた。回転する空気の渦が、鋭利な切っ先となり、打撃武器の杖に切断能力を与える。

「杖自体が魔法の中心だ。その剣で吸い込むことは出来ぬ!」

 ライトニング・クラウドの魔法が、放たれた。

 と同時に、四人のワルドが才人に向かって殺到する。

 雷撃の雨を援護射撃に、一気に接近する作戦だった。

 雷撃の魔法に気を取られ、才人は肉迫を許してしまう。

「こん、のぉ……!」

 脇に取ったデルフリンガーを、思いっきり擦り上げた。西洋剣といったシルエットのデルフだが、片刃の剣身は僅かに反っている。手の内の要諦は、日本刀と変わらない。

 阿吽の呼吸とともに放たれた斬撃を浴びせられ、ワルドの一体が消滅した。

 しかし、残る三体のワルドが、才人の肩を、足を、胴を薙ぎ払う。

「ぐっ、痛っ……!」

 斬撃の衝撃と、風の刃に揉まれて、才人はたまらず床を転がった。

 ワルドの余裕の声が、才人の耳朶を叩く。

「どうした、ガンダールヴ?」

「動きが鈍いではないか」 「僕はあと、四十人はいるぞ?」

「「「そんな体たらくで、僕を倒せると思っているのか!?」」」

 残忍な笑みを浮かべて、三人のワルドは再び才人に襲いかかった。

 なんとか立ち上がった才人は、八双の構えで迎え撃つ。

 と、その時に、不意に才人の手の中で、デルフリンガーが叫んだ。

「思い出した!」

「なんだよてめえ、こんなときに!」

 正面からの打ち込みを、袈裟斬りをもって受け止め、弾く。その隙に殺到した二人目に胴を斬られ、才人の口から苦悶の声が迸った。幸いにして浅い切り口だが、それだけに鋭い痛みが彼を苛む。

「そうか……ガンダールヴか!」

「だから、なん、だよ……」

 斬られた脇腹を押さえるわけにはいかなかった。三人目のワルドの攻撃を左に斬り払いつつ、才人は苛立った声で怒鳴った。

 すると、才人の手の中でデルフリンガーは、けたけた、と激しく震えた。まるで、歓喜に震えているようだった。

「いやぁ、俺は昔、お前に握られていたぜ。ガンダールヴ。でも、忘れてた。なにせ、いまから六千年も昔の話だからなぁ」

「寝言、言ってんじゃねぇよ!」

「懐かしいねぇ。泣けるねぇ。そうかぁ、いやぁ、なんか懐かしい気がしてたが、そうか。相棒、あのガンダールヴか!」

「人の、話を……」

 エア・ニードルは有効と判じたらしく、両翼からも青白く輝くサーベル杖を携えて、ワルド達が襲ってきた。

 正面に三人。左右にそれぞれ二人ずつ。七人のワルドに同時に襲われ、才人は唯一の逃げ道たる後ろへと跳ぶ。しかし、そこにウィンド・ブレイクの魔法を放たれた。弾け飛ぶ才人。ワルドに斬られた傷口から、血飛沫が噴出した。

 ルイズの、そしてケティの悲鳴が上がった。

 地面を転がった才人は、デルフを床に突き立てて、どうにか立ち上がる。柳也ほどではなかったか、ワルドの魔法を受けたその身は傷だらけだった。

 他方、才人の手の中で、デルフリンガーはいっそう興奮した様子で続けた。

「嬉しいねぇ! そうこなくっちゃいけねぇ! 俺も、こんな格好している場合じゃねえ!」

「いい加減に……」

 しろ。そう、言おうとした。その、瞬間だった。

 キィィィン、と、金属を叩くかのような音が、頭の中に響いた。

 鼓膜を震動させず、直接、頭の中に聞こえてきた、その音。

 鋭い頭痛を感じ、思わずよろめいた。めまいがした。根性を出して転倒こそ免れたものの、急激な疲労感に襲われて、才人は苦悶の溜め息をこぼした。

「悪い、相棒。痛いとは思うが、ちょっと我慢しててくれ。すぐに終わるからよ」

 デルフの声が、耳朶を叩く。

 何を言っているのか分からない。しかし、不思議と嫌悪感が湧いてこない。この痛みが。この苦痛が。“契約”には必要なものと、思えた。

 ――契約? いま、俺、なんで……。

 不意に頭の中に浮かんできた、契約の二文字。なぜ、このタイミングで、そんな単語が思い浮かんだのか。

 困惑する才人の手の中で、デルフリンガーが震えた。

 いや、震えるばかりか、なんと刀身が光り始めた。突然の事態に、ワルド達の攻撃の手が止まる。

「なに?」

「で、る、ふ……」

「いやぁ、てんで忘れてた。そういや、面白いことが何もなくて、飽き飽きしていたときに、テメェの姿を変えたんだった! ……本当の名前も、いまのいままで忘れていた」

「ほんとの、名前……?」

「ああ、そうさ!」

 脳幹を揺さぶる苦痛に表情を歪めながら問うた才人に、デルフは言い放った。

「自分で言うのもなんだが、ヒデェ名前でよぉ。気に入らなくてな。デルフリンガーっていうのは、俺が勝手につけた名前だ。自分で言うのもなんだが、なかなか良いセンスだろう?」

「じゃあ、お前の、本当の名前は……」

 頭痛はどんどん激しくなっていった。

 左手のルーンが、猛々しく輝いた。光芒が、ルーン文字を飛び出し、光線となってみなの視界を席巻する。まるで、才人の左手が太陽になったかのようだった。

 デルフリンガーは、けたましく震えながら、叫んだ。

「俺の本当の名前は〈悪食〉。永遠神剣第六位〈悪食〉のデルフ様だ!」

 デルフが言い放った、その瞬間、頭痛が消えた。

 直後、手の中のデルフから、次々と知識が流れ込んできた。膨大な知の奔流を、なぜだか才人は、素直に受け止める気になれた。

 異変はそれだけにとどまらなかった。

 才人は急に、自分の体が熱を帯びるのを自覚した。身体が熱い。燃えるように熱い。まるで細胞の一つ一つが、小さな太陽になったかのようだった。細胞の活性化に伴って、風の刃が刻んでいった裂傷の数々が消えていくのを自覚した。

 ルーンの光の放出が、終わった。

 伴って、デルフリンガーの剣身も、光るのをやめた。光の放出をやめたデルフの刀身は、たったいま磨き研いだかのように、新品同然の輝きを発していた。

 才人はデルフを正眼に構えると、ワルドを睨んだ。

 軽快に運動するその身からはもう、出血はなかった。

 

 

「な、に……?」

 ワルドの唇から、思わず呻き声が漏れた。

 己の神剣士としての感覚を刺激する、信じがたい知覚に、男の声は無意識のうちにわなないた。

「なんだ、この巨大なマナは……!?」

 才人の体から、そして何より、彼の持つデルフリンガーから感じられる、巨大なマナの気配。神剣士の自分にも劣らぬ、攻撃的なオーラフォトンの閃光。これは、いったい……。

「デルフのマナだよ」

 震えるワルドの声に、才人は冷静な声音で応じた。

「六千年間、ずっと溜め込んでやがったんだ。……ったく、こんな力持ってるんなら、もっと早く言えよな」

「だから、悪かったって、相棒。自分でも忘れてたんだから、仕方ねえだろうよ」

「貴様ら、いったい……!?」

「永遠神剣第六位〈悪食〉。それが、こいつの本当の名前だ」

 才人は正眼に構えたデルフを示して言った。

「〈悪食〉だと!? 馬鹿な!」

 才人の返答に、ワルドは珍しく取り乱したように吠えた。

「契約者以外に、永遠神剣の声が聞こえるなど、ありえん!」

「そいつは、俺が特別な神剣ってことだな。俺様カッチョイー!」

 ワルドの言葉に、才人の手の中でデルフリンガーは平然と答えた。

 あまりにもふてぶてしいその態度に、発言したワルドの方が二の句をなくしてしまう。

 「いきなり態度でかくなったなー」と、呆れた溜め息をこぼしつつ、才人はワルドに言った。

「六千年前、始祖ブリミルに仕えていた先代ガンダールヴに、デルフは使われていたんだ」

「俺がこんな風に舌が上手いのは、その当時からだよ。六千年前からだぜ? 今更、そんな文句を言われてもなぁ」

「……百歩譲って、その剣を永遠神剣と認めるとして……」

 ワルドは忌々しげな視線を才人に注いだ。神剣の声が契約者以外にも聞こえるなど、自分に〈隷属〉をよこした男の話とまるで違うが、現実として自分にも聞こえるのだから、特別と認めるほかない。

 それよりも、気になるのは――――――

「なぜ、貴様が永遠神剣を使える?」

「おいおい、わかりきったことだろうよ」

 ワルドの質問に答えたのは、才人ではなく、デルフだった。

「神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。その能力は、あらゆる武器を使いこなせること。永遠神剣もまた、武器だぜ?」

「……その、左手のルーンか。その左手のルーンが!」

「ああ。俺を神剣士にしてくれた」

 ワルドの叩きつけるような激しい言葉に、才人はこちらも力強く応じた。

「相棒には神剣士としての素質はねぇ。だが、相棒はガンダールヴ。あらゆる武器を使いこなす、伝説の使い魔だった。だから、俺を使うことが出来る」

「これで条件は同じだぜ、ワルド」

 才人は正眼に構えたデルフリンガーの切っ先を、ワルドの顎先へと定めた。

「俺も神剣士。お前も神剣士。これでようやく、イーブンだな」

「……ふん」

 才人の言い分に、しかしワルドは、鼻で笑ってみせた。

「なにがイーブンだ。たしかに、神剣を手にしたことで、戦力は大幅に上がっただろう。だが、所詮は新米の神剣士。僕の敵ではない!」

 

 

「だったら、よぉ……」

 不意に、背後から声が響いた。

 聞き慣れた、男の冷笑混じりの声。

 慌てて振り向いたワルド達は、視線の先に、信じられないものを見る。

「ベテランの神剣士も一人、追加したら、どうだ?」

 見慣れない異世界の軍服を身に纏い、見慣れない異世界の剣を片手正眼に構える男。

 桜坂柳也。

 第七位の永遠神剣二振と契約を交わした、異界より勇者。自分もその実力を認めた神剣士。

 神剣の力で強化された魔法の数々を受け、瀕死の重傷を負っていたはずの彼は、五体壮健、口元に好戦的な冷笑さえ浮かべて、鶴翼の陣の背中を睨んでいた。よく見ると、黄金の霧の噴出も止まっている。完全に、復活していた。

「……馬鹿な」

 ワルドの唇から、再度呻くような呟きが漏れた。震えた声だった。

「瀕死だったはずだ! それが、マナの補充も受けずにどうやって!?」

「マナの補充なら、させてもらったさ」

 柳也は不敵な冷笑を浮かべたまま呟いた。

 そんなはずがない、とワルドは思った。

 周辺大気のマナの量に変化はないし、礼拝堂内には、瀕死の命を繋ぎ止めるだけのマナを持つ生命など存在しなかったはず。マナの補充など、出来るわけがない。

 ――……む?

 その時、ワルドは視界に違和感を覚えた。

 柳也の身に纏っている、オリーブドラブの軍服。ジャケットにべっとりとこびりついた、赤い染み。柳也の血でないことは明白だ。神剣士の体液は、体外に出た瞬間、マナの霧となって蒸発する。ゆえに、自らの血があんな染みを作ることはありえない。

 だとすれば誰かの返り血だろうが、はて、先ほど柳也と戦っている間は、あんな染みはなかったはず。いったいどこで付着したのか……そこまで考えて、ワルドははたと気が付いた。

 柳也の背後に、視線をやる。

 始祖ブリミル像に見下ろされながら、仰向けに横たわる男の姿が、視界に映じた。

 アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダー。

 亡国の王子は、満足そうに微笑みながら瞑目し、息絶えていた。誇り高い、永遠の寝顔だった。

「まさか……」

「悪食、か……なるほど、デルフリンガーが嫌うわけだ。たしかに、良い気分じゃないな。特に、他人様の命を食らう、っていうのはよ」

「貴様、まさか、ウェールズの命を……」

「ああ。もらったよ」

 ワルドの震える声に、柳也は毅然と頷いた。

「俺の体のことや、マナのことを話したら、残り僅かなその命をくれた。俺に、残っているすべてのマナを託してくれた」

 そこまで言って、柳也はいったん言葉を区切ると、父の形見の脇差一尺四寸五分を水平に掲げ、ワルドの顎先にかます切っ先を向けた。

「負けられない理由がまた一つ、増えちまった。最終決戦と、いこうや!」

 峻烈な気迫とともに放たれた啖呵。

 ニューカッスル城の礼拝堂を舞台にした戦いは、新たな局面を迎えようとしていた。

 


<あとがき>
 

 この展開はみんな予想していただろうなぁ、うん。

 どうも、おはこんばんちはっす。タハ乱暴でございます。今回もゼロ魔刃をお読みいただきまして、まことにありがとうございました! 今回の話は、いかがでしたでしょうか?

 原作においてもわりと唐突な感じて書かれたデルフの覚醒イベントですが、ゼロ魔刃では原作以上に唐突な入りで、実は永遠神剣だったんだよ〜、としてみました。これで晴れて才人も神剣士です。

 さて、そのデルフ実は永遠神剣だったんだよ〜、についてですが、実はこれ、ゼロ魔刃EPISODE:01を書き始める時点で決まっていたことでした。

 以前、読者の方から、才人に神剣は持たせないんですか? と、質問がありました。その時は言を左右に明確な回答を避けましたが、実はこういうことだったんですね〜。はい。タハ乱暴は、才人の相棒にはデルフ以外考えられません。神剣持たせたかったら、そのデルフを永遠神剣にしちまえ〜、ってなわけです。

 さて、しぶといワルドとの対決もいよいよ次回で決着です。

 そしてとうとう動き出す、あの男……

 次回もお付き合いいただければ幸いです。

 ではでは〜




ピンチの状況だったけれど、デルフの覚醒と。
美姫 「ウェールズの命のお蔭でどうにか持ち直したわね」
デルフが神剣だったとは。
美姫 「これで柳也とサイト、神剣士が二人に」
とは言え、まだスーちゃんも居るし楽観はできないけれどな。
美姫 「ここから反撃となるのかどうか、次回も楽しみです」
次回を待っています。



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