<五行でわかる前回までのあらすじ(ダイジェスト版)>

「いやぁぁぁぁぁぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!??? 痴女よっ、痴女!」

「ま、負けた……」

「……なるほど。要するに俺は魔王に囚われたお姫様を救い出せばいいわけだな」

「分かった。じゃあ、るーちゃん」

「解いたのね!?」

 物語の流れがよく分かったところで、本編へどうぞ。

るーちゃん「分かるかぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

才人「台詞の選考基準が恣意的すぎる!」

柳也「なるほど! そういう話かッ。つまり俺はローマに渡ってイングランドの王様と決闘をすればいいんだなッ!」

タバサ「……うるさい。シルフィード、やっちゃって」

柳也「ぎゃぱあああああああッ!!!」

 ……というわけで、改めて本編へどうぞ。

 

 

 長い石畳の床と、同じく石造りの壁、そして天井が、四方を取り囲んでいた。

 褌の男こと桜坂柳也はトリスティン魔法学院教育棟の長い廊下を歩いていた。確たる目的や行き先はない。情報収集を兼ねた散歩だ。要するにいま、彼は暇を持て余していた。

 シエスタとの邂逅からかれこれ半刻後、偉大なる女王陛下から賜ったパンとスープだけの粗末な朝食を取った柳也は、ルイズから暇を出された。

 べつに、ルイズの召使いをクビになったとか、謹慎処分を課された、というわけではない。文字通りの意味で、ルイズから自由時間を出されたのだ。

 曰く、魔法学園の授業は貴族を対象とした格式高い伝統あるもので、平民は原則として教室に入ることすら許されないという。授業の同伴者として許されるのは使い魔のみで、平民でも使い魔の才人は入室が許されるが、ただの平民にすぎない柳也はNGというわけだ。必然、ルイズが授業中の朝から昼までの間は、柳也一人の時間となる。

「それだったら、自由時間なんかじゃなく、仕事をくれよ。俺は、るーちゃんの召使いなんだろう?」

 柳也の意見はまっとうにしてしごく当然、理知的な人間であれば誰もが思うことだった。

 しかしルイズは、「だから、るーちゃんって呼ばないでくれる?」と、前置きした後、「駄目よ」と、きっぱり告げた。

「あんた一人に仕事を任せると、何をするか分からないもの」

 どうやら昨晩、ルイズの下着を解いて数々の褌を作ったことが相当こたえたらしい。

 彼女は不信感漂う痛烈な眼差しで柳也を睨みつけた。

 こうしたルイズの発言に対し、柳也は反論した。

「男から仕事を取り上げるなんて殺生にも程がある。これでは役立たずと言われているも当然ではないかッ」

 というのが、彼の言い分だった。

 しかしルイズは、米神をひくつかせたまま眼光炯々、無残にも解かれた下着の恨みを思い出したか、怒声を叩きつけた。

「そうよ! そう言っているの! いい? あんたはわたしと才人の手が開くまで、一人で仕事しちゃ駄目だからねッ」

 この男が一人でいる時に仕事をさせてはならない。

 下着の全滅という苦い経験から教訓を得たルイズは、念押しした。

 柳也としても、ご主人様からこうまで言われては引き下がる他ない。彼はしぶしぶ承諾した。いったいどこをどう間違えてこんなに信用を失ったのか、とぼやきながら。

 さておき、唐突に自由な時間を与えられた柳也だったが、彼にはこれといってすることが見つからなかった。

 鍛錬をしようにも入浴中に召喚された身では道具がないし、異世界の魔法学校では趣味のミリタリーに走ることも出来ない。

 必然、いまの彼に出来ることなど限られてくる。

「散歩でもするか」

 新しくやって来た場所は自分の足で歩き回らなければ気がすまない性分の柳也だった。

 彼は情報収集がてら魔法学院の校舎内を歩き回ることにした。ルイズからは授業中の教室への立ち入りを禁じられたが、校舎への立ち入りそのものは禁じられていない。それに、魔法学院の維持・運営を賄っているのは、貴族たちが捻出している学費である。貴族の財は、要は領地の平民から徴集した税だ。自分達の払っている税金が何に使われているのか知るのは、納税者の当然の権利だ。

「もっとも、この考えは民主主義登場以降のものだが」

【それにそもそも、異世界人たる主はこの世界の税などびた一文も払っておらぬが?】

「ってか、俺、この世界の税制度知らないし」

【これも一種の脱税になるんでしょうか?】

「ならない、ならない。なってたまるかってんだ!」

 柳也は、からから、と笑って校内の散策に乗り出した。

 かくして、現在に至る。

 トリスティン魔法学院の校舎は、学園の敷地中央にそびえ立つ本塔を、五つの塔が五芒星に囲む形で建っていた。五つの塔のうち四棟はそれぞれ“地水火風”の名が付けられ、残る一棟には学生寮の役割が与えられている。本塔にせよ、五つの塔にせよ、なかなかの大型高層建築物で、柳也の目は魔法を組み込んだ異世界の技術に釘付けとなった。大型の、それも全長二〇メートルを超すような高層建築物を建てるためには、高度に発達した構造力学の知識が必要となる。

 ――魔法ばかりが発達した世界かと思っていたが、こいつは、学問全般のレベルも相当に高いな。

 少なくとも、エーテル技術を例外とすれば、いまだ文明の程度が中世暗黒時代の域を脱していないファンタズマゴリアよりも、学問はいくらか高度だ。

 柳也がいま歩いている廊下の壁面一つとっても、石の加工具合からその事実が察せられる。どの石を要とし、他の石をどう積み上げれば地上七〇メートル超の建物を支えられるモノコック構造が完成するか。魔法学院の建築を監督した人間は、複数の学問に精通した人物だったに相違あるまい。

 本塔の見学を終えた柳也は、次いで本塔を囲む五つの塔の一つ……地の塔へと足を運んだ。

 本塔ほどではないものの、地の塔もまた地上三〇メートルはあろう円柱状の高層建築で、屋根裏も合わせると六階建てにもなった。各階には大学の講義室のような教室が置かれ、塔の上り下りは螺旋の階段を使用する。

「……ん?」

 最上階の窓から本塔を見たらどんな景観となるのか。胸の内に湧き上がった疑問を解決するべく、螺旋の階段を登っていた柳也は、不意に階段を見上げて立ち止まった。

 上の階から、見覚えのある顔が階段を下る姿を視界に映じた。といっても、知り合いではない。150センチとない低い身長に、小柄な体格。ファンタズマゴリアの青スピリットのように澄んだ青色の髪と瞳が特徴的な娘は、ハルケギニアに召喚された初日に、「見苦しい」の一言の下、自分を攻撃魔法でさんざん叩きのめしてくれた眼鏡の少女だった。名前は確か……

【タバサ嬢だ。周りの連中がそう言っていた】

 柳也の疑問に〈決意〉が答えた。

 【付け加えるなら】と、前置きした上で続けて言う。

【我の見立てでは身長142センチ、バスト六八、ウェスト四九、ヒップ六七のAAカップだ。まこと良いつるぺた加減だ。うむ。まさに理想的な幼女!】

【…………ご主人様ぁ、私、もう嫌です。こんな駄剣とこれ以上一緒の身体にいたくありません!】

 ――奇遇だな、〈戦友〉。俺もいま、チラリとだがそう思ってしまったよベイベー赤ちゃん。

 頭の中に〈戦友〉の泣きじゃくる声が聞こえ、柳也は深々と溜め息をついた。

 柳也自身、幼い娘は好きだが、同じ“好き”でも、〈決意〉のそれとはベクトルが違う。柳也が幼子から感じ取るのは父性本能に根ざした保護欲であり、他方、〈決意〉のそれは明らかな性欲だった。

【ところでご主人様、いまって授業中ですよね?】

 ――ああ。そのはずだが……。

 柳也は怪訝に首を傾げながら、みんなからタバサと呼ばれる少女を見た。

 服装から察するに、彼女もルイズと同様魔法学院の生徒に違いない。その彼女が、なぜ、授業中にも拘らず外を出歩いているのか。

 ――サボりか? いや、それだったら、そも教室のある塔には近付くまい。

 考えられるケースとしては、つい先ほどまでは教室に居たが、いまはわけあって授業を中座している、という想定がいちばん可能性が高い。その、わけ、が何なのかまでは分からないが、常識的に考えれば厠へ用足しといったところか。

 立ち止まって首を捻っていると、当のタバサ本人も階段を下りるのをやめて立ち止まっていた。

 眼鏡の奥から覗える水晶の眼差しが、薄っすらと柳也の頬を撫でる。眼鏡は度が入っていないのか、レンズ越しに見える輪郭のラインは、いささかもぶれていなかった。

 タバサがなぜ自分を見つめているのか、柳也は当初、巨漢の自分が道を塞いでしまっているのかと考えた。しかし、どうやらそれは違っているらしかった。

「……なんで」

「ん?」

 少女の愛らしい唇から、小さな声。

 よく注意していなければ聞き漏らしてしまいかねない囁きが、柳也の耳朶を優しく撫でた。

「なんで、無事なの?」

「なんでって……ああ」

 柳也は一瞬、自分が何を言われたのか分からず怪訝な表情を浮かべたが、すぐに得心した様子で頷いた。彼女は、昨日自分に放った攻撃魔法のことを言っているのだ。

 ルイズから聞いた話によれば、このタバサなる少女は学院開校以来の才媛で、エア・ハンマーもウィンド・ブレイクも相当な威力を持っているらしい。それらの攻撃魔法を何十発と受けて無事でいる柳也のタフネスに、ご主人様は舌を巻いていた。青年の褐色の肌には、痣一つ残らなかった。

「生まれつき頑丈だけが取り得でして。それに、るーちゃんに召喚される以前は、あれくらいのことは日常茶飯事でしたから」

 柳也はともすれば無礼と捉えられないほどの慇懃な態度を取って答えた。相手が貴族だからといって臆する必要はない。なんといってもファンタズマゴリアでは、一国の王とタメ口したこともある自分だ。

「それよりも、私の記憶が正しければいまは授業中のはずですが、どうして外に?」

「逃げてきた」

「逃げてきた?」

 オウム返しに訊き返した柳也に、タバサは小さく頷いた。

「教室は危険だから」

 柳也はまたぞろ首を捻った。

 どうやら授業を中座したという予想は正解らしいが、生徒の一人が逃げ出すほど危険な授業とはいったい……。

「……ッ!?」

 その時、柳也の顔つきが険しくなった。

 自分達のいる階よりも一つ上の階層から急速に、そして急激にマナが失われていく気配。それに伴って、ある一点だけが、どんどん、とエネルギーを上昇させていく。本能が警鐘を鳴らし、次いで体内の相棒二人から警告音が発せられた。

「何だッ、これは!?」

 柳也は思わず上の階層を睨んだ。マナの消失と、それに伴う急激なエネルギーの上昇。これではまるで、神剣魔法発動のサインではないか。

 側に立つタバサが不審の視線を向けてくる。

 だが、いまの柳也にそれを気にする余裕はない。

 自分や赤スピリットのそれには劣るものの、この反応は紛れもなく……と、そこまで考え至ったところで、爆音が轟いた。

 雷が地面に炸裂したかのような轟音。次いで、塔全体を横に揺さぶる震動。上の階で爆発が起こったのは、明らかだった。

  震動が収まったのを見て、柳也は上の階へと駆け出した。

 爆発があったと思しき教室へと続くドアの前に立つ。授業中だろうと構うものか。躊躇うことなく、戸を開けた。

 そして、阿鼻叫喚の光景を視界に映じた。

 耳をつんざく悲鳴と怒声。ひっくり返った机や椅子。幻想世界の使い魔達が其処彼処で暴れ、床や壁は大火の後のように黒々と焼け焦げている。

 騒然となった教室内でまともに立っているのは、柳也のご主人様のみだ。

「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」

 一人の女生徒が立ち上がって、煤で真っ黒になったルイズを指差した。柳也好みの豊満な乳房が魅力的な彼女の名前を彼が知るのは、少し後のことになる。

 教壇の中央に立ったルイズは、しかし落ち着いた様子で辺りを見回した。

 見るも無残な恰好だ。ブラウスが破れ、華奢な肩が覗いている。スカートが裂け、パンティが見えていた。

 大騒ぎの教室を一瞥したルイズは、取り出したハンカチで頬に付いた煤を拭いながら、淡々と言った。

「ちょっと、失敗したみたいね」

 

 

 

永遠のアセリアAnother × ゼロの使い魔クロスオーバー

ゼロの魔法使いとその使い魔と、ついでに現われた守護の双刃

EPISODE04:「この上腕三等筋の魅力を思い知れッ」

 

 

 

 ミスタ・コルベールはトリスティン魔法学院に奉職して二〇年になる、中堅の教師だった。“火”の系統の魔法を得意とするメイジで、二つ名は“炎蛇のコルベール”。若い頃は各地に眠る謎を求めていくつもの冒険をした行動派の人間であり、また同時に探究心溢れる学者肌の人材でもあった。

 彼は、先日の“春の使い魔召喚”の際に、生徒の一人……ミス・ヴァリエールが呼び出した平民の少年のことが気にかかっていた。より正確にいうと、少年の左手に現われたルーンのことが気にかかっていた。ルーンとは、メイジと契約を果たした使い魔の体のどこかに刻まれるもので、契約の証といっていい。コルベールはこれまでに数多くのルーンを目にしてきたが、才人少年の左手に刻まれたルーンは、これまで彼が見たこともないものだった。探究心に取り付かれたコルベールは、先日の夜から篭もりきりで図書館の書物を漁っていた。ちなみに、褌の男のことは、どうでもよかった。

 トリスティン魔法学院の図書館は、本塔の中にある。始祖ブリミルがハルケギニアに新天地を築いて以来の叡智を詰め込んだ図書館の蔵書数は圧倒的で、下手な王立図書館にも負けない規模を誇っていた。

 コルベールがいるのは、図書館の中でも教師のみが閲覧を許可されている“フェニアのライブラリー”の中だった。生徒達も自由に閲覧できる一般の本棚には、彼の満足いく回答は見つからなかったのだ。彼は空中浮遊の呪文を使って手の届かない書棚まで足を伸ばし、一心不乱に本を探った。

 コルベールの努力は、やがて報われた。

 それは始祖ブリミルが使用した使い魔達が記述された古書に記載されていた。古い羊皮紙に記された一節を目にした途端、彼は愕然と目を見開いた。

 古書の一節と、少年の左手に現われたルーンのスケッチを見比べる。呻き声が漏れた。一瞬、浮遊魔法のための集中が途切れ、あわや床に落ちそうになってしまった。

 なんとか持ち直して床に下りたコルベールは、本を抱えると慌てて学院長室へと向かった。

 

 

 トリスティン学院の学院長室は、中央本塔の最上階にある。

 魔法学院の学院長を勤めるオスマン氏は、白い口ひげと髪を揺らし、重厚な造りのセコイアのテーブルに肘をついて、退屈を持て余していた。

 ぼんやりと鼻毛を抜いていたが、おもむろに「うむ」と呟くと、テーブルに備え付けられた引き出しを開けた。

 中から、水ギセルを取り出す。現代世界の水煙草、あるいは電子煙草に近い代物で、煙を吹かして遊ぶ大人の玩具だ。オスマンはそれを口に咥えようとしたが、残念ながら、老人の楽しみは邪魔をされた。

 部屋の隅に置かれた机に向かって書き物に精を出している秘書のミス・ロングビルが、羽ペンを振ったからだ。羽ペンは魔法の杖で、水ギセルを学院長の手の中から宙へと追いやると、使い手の手元へと運んだ。つまらなさそうに、オスマン氏が呟く。

「年寄りの楽しみを取り上げて楽しいかね? ミス……」

「オールド・オスマン。あなたの健康を管理するのも、わたくしの仕事なのですわ」

 オスマン氏は小さく溜め息をつくと椅子から立ち上がった。

 理知的な顔立ちと涼やかな所作が、凛々しさを伴う美の精彩を放つミス・ロングビルの背後に回る。

 重々しく目を瞑った彼は、魅了の魔法がかかった彼女の臀部に、ひっそり、と手を伸ばした。

「こう平和な日々が続くとな、時間の過ごし方というものが、何より重要な問題になってくるのじゃよ」 

「オールド・オスマン」

 ミス・ロングビルは、羊皮紙の上を走らせる羽ペンから目を離さずに言った。

「なんじゃ、ミス……」

「暇だからといって、わたくしのお尻を撫でるのはやめてください」

 オスマン氏は口を半開きにすると、ヨチヨチ、と歩き始めた。

「都合が悪くなると、ぼけた振りをするのもやめてください」

 ミス・ロングビルはどこまでも冷静な声で、先ほどより幾分強い口調で言った。

 オスマン氏は盛大に溜め息をつく。深い苦悩が刻まれた溜め息は、この場には似つかわしくないものだった。

「真実はどこにあるんじゃろうか? 考えたことはあるかね? ミス……」

「少なくとも、わたくしのスカートの中にはありませんので、机の下にネズミを忍ばせるのはやめてください」

 オスマン氏は顔を伏せた。悲しげに呟く。

「モートソグニル」

 ミス・ロングビルの机の下から、小さなハツカネズミが現われた。オスマン氏の使い魔、モートソグニルだ。オスマン氏の足を上り、肩に、ちょこん、と乗っかって、首を傾げた。オスマン氏はローブのポケットからナッツを取り出すと、ネズミの顔の先で振ってやった。ちゅうちゅう、とネズミが喜ぶ。

「気を許せる友はお前だけじゃ。モートソグニル」

 ネズミはナッツを齧り始めた。大好物なのだろう。あっという間に平らげると、もっとよこせ、とばかりに鳴いた。

「そうかそうか。もっと欲しいか。よろしい。くれてやろう。だが、その前に報告じゃ。モートソグニル」

 ちゅうちゅう、とネズミが鳴いた。

「そうか、白か。純白とな」

 ミス・ロングビルの眉が動いた。白い頬に、僅かながら朱色が差す。

「うむ。しかし、ミス・ロングビルは黒に限る。そう思わんかね。可愛いモートソグニルや」

「オールド・オスマン。今度やったら王室に報告します」

 ミス・ロングビルは怒りで米神を引くつかせながらも自制を効かせ、強い口調で言うだけに留めた。秘書という立場さえなければ、目の前の老人を蹴り飛ばしていたであろう。

 しかしオールド・オスマンは、反省するどころか目を剥いて怒鳴った。

「カーッ! 王室が恐くて魔法学院長が務まるかーッ!」

 凄まじい眼力だった。棺おけに片足を突っ込んだ爺さんとは思えぬ迫力、胆力だ。

「たかが下着を覗かれたぐらいでカッカしなさんな! そんな風だから、婚期を逃すのじゃ!」

「なっ……!」

 これまで必死に怒りを堪えてきたミス・ロングビルが、ここにいたって初めて怒りの形相を露わにした。

 上司にあたるオスマンの尻を、そしてあらゆる意味で男の命たる腰を、蹴り回した。

「わ、わたくしはまだ二三です! 十分、まだ可能性があります!」

「ごめん。やめて。痛い。もうしない。ほんとに」

 オールド・オスマンは頭を抱えてうずくまった。ミス・ロングビルは、荒い息で、オスマン氏を蹴り続けた。何も事情を知らない第三者がこの光景を目にしたら、何のプレイだろうか、と誤解すること請け合いだ。モートソグニルが、ちゅう、と鳴いた。

 そんな平和な時間は、突然の闖入者によって破られた。

 ドアがガタン! と勢いよく開けられ、室内にコルベールが飛び込んできた。図書館から真っ直ぐ走ってきたのだろう、肩で息をしている。

「オールド・オスマン!」

「なんじゃね?」

 ミス・ロングビルは何事もなかったように机と向かい合っていた。オスマン氏は腕を後ろに組んで、重々しく闖入者を迎え入れた。モートソグニルが、ちゅう、と鳴いた。某宇宙刑事並の早業だ。やはりここは原理説明やもう一度プロセスを見せるべきだろうか。

 さておき、やって来たコルベールはひどく動転した様子で口角泡を飛ばした。

「たた、大変です!」

「大変なことなど、あるものか。すべては小事じゃ」

「ここ、これを見てください!」

 コルベールは、オスマン氏に先ほど読んでいた書物を手渡した。

「これは『始祖ブリミルの使い魔達』ではないか。まーたこのような古臭い文献など漁りおって。そんな暇があるのなら、たるんだ貴族たちから学費を徴収するうまい手をもっと考えるんじゃよ。ミスタ…………………………なんだっけ?」

 オスマン氏は首を傾げた。余談だがタハ乱暴の通っていた小学校の校長先生は、卒業式の際に、生徒一人々々の顔と名前を全員憶えていた。いまにして思えば、偉大な先生だったなぁ……。

「コルベールです! お忘れですか!」

「そうそう。そんな名前だったな。君はどうも早口でいかんよ。で、コルベール君。この書物がどうかしたのかね?」

「これも見てください!」

 コルベールは才人の手に現われたルーンのスケッチを手渡した。

 それを見た瞬間、オスマン氏の表情が変わった。深い皺の間に埋もれた双眸に鋭い眼光が宿り、険しい表情になる。

「ミス・ロングビル。席を外しなさい」

 努めて平静な口調で、努めて淡々と、オスマン氏は秘書の彼女に命令した。ミス・ロングビルが立ち上がり、部屋を出て行く。彼女の退室を見届けて、オスマン氏は口を開いた。

「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」

 

 

 ルイズめちゃくちゃにした教室の片付けは、思いの他早く終わった。駆けつけた柳也が一緒になって、ヴァリエール・ファミリー三人での清掃作業となったためだ。それでも、作業は二時間を超過し、三人が教室を離れる許可を得たのは昼休みの前だった。

 片付けを終えたルイズ達は食堂へと向かった。勿論、昼食を取るためだ。

 その道すがら、才人は何度もルイズをからかった。これまでの不満を爆発させるように、ここぞとばかりに口角泡を飛ばした。

「ゼロのルイズ。なるほどねぇ。言いえて妙ですねぇ。成功の可能性ゼロ。そんでも貴族。素晴らしい!」

 ルイズは無言だった。逆に、才人は浮かれまくっていた。

 柳也はといえば、数歩後ろから難しい表情で二人を見つめている。

「錬金! あ! ボカーン! 錬金! あ! ボカーン! 失敗です! ゼロだけに失敗であります!」

 ルイズの周りを、才人はおどけながらぐるぐる回った。ボカーンと言う時には両腕を上げて爆発を表現した。細かい演出だ。体力の無駄使いとも言える。

「ルイズお嬢様、この使い魔、歌を作りました」

 才人は恭しく頭を垂れた。勿論、その表情は相手を馬鹿にしている。相手を舐めきっている。

 ルイズの形の整った眉が、ひくひくと動いていた。柳也は気付いていたが、浮かれた才人は気付かなかった。

「歌ってごらんなさい?」

「ルイルイルイズはダメルイズ。魔法が出来ない魔法使い。でも平気! 女の子だもん……」

 才人は腹を抱えて笑った。

 そんな才人を、柳也が苦い表情で見つめていた。

 

 

 食堂に到着した。

 召使い役の柳也がルイズのために椅子を引こうとしたが、それよりも早く、才人が椅子を引いた。勿論、その際にイヤミは忘れない。

「はい、お嬢様。料理に魔法をかけてはいけませんよ。爆発したら、大変ですからね」

「……才人君、ちょっと言いすぎじゃないか?」

 さすがに才人の態度が目に余ってきたか、柳也が苦い表情で言った。

 ルイズの手前、あまり調子に乗りすぎると痛い目を見るのはこちらだぞ、と目線で諭してやる。

 しかし、無言の訴えは才人に届かなかった。彼は何ら態度を改めることなく、けらけら、と笑った。

 溜まりに溜まっていた不満の本音を、躊躇いもなく声音に載せる。

「いいんですって。さんざんこき使われて、おまけに犬猫扱いだ。これくらいはしてやらないと」

 柳也は渋面を作って溜め息をついた。

 たしかに、自分達平民に対するルイズの態度は高慢を通り越して横暴ですらある。ささやかな反撃を試みたくなる才人の気持ちも、分からないでもない。立場が逆だったら、自分とてからかい文句の一つや二つ、くれてやっていただろう。

 しかし、だからといってこれはやりすぎだ。柳也は沈痛な目線をルイズに飛ばした。

 嫌味を言われている当の本人は、無言のまま示された席に着く。

 憤懣を抱えた静かな態度は、噴火直前の火山のようでなんとも不気味だった。

「……一応、忠告はしておいたからな」

 柳也は小さく嘆息した。人間は一度痛い目に遭わなければ、自分のやっていることの愚かしさに気が付かない。

 テーブルにはすでに貴族のために用意された豪勢な食事が並べられている。若い娘一人が食べる料理にしては、多すぎる量だった。

 対照的に、床には硬いパンとスープだけの昼食が二人分並んでいる。若い男二人が食べる料理にしては、圧倒的に量が不足していた。

「さてと、始祖ナントカ。女王様。ほんとうにささやかで粗末な食事をこんちくしょう。いただきます」

「いただきます」

 二人が食事にありつこうとすると、才人の方の皿が、ひょい、と取り上げられた。勿論、犯人はルイズだ。

 当然、文句の言葉が宙を舞う。

「なにすんだよ!」

「こここ……」

「こここ?」

 ルイズの肩が怒りで震えていた。声も震えている。どうやら食卓につくまで怒りを抑えていたらしい。効果的にお仕置きが出来るからだろう。不味い事態になったと、パンを齧りながら柳也は思った。

「こここ、この使い魔ったら、ごごご、ご主人様に、ななな、なんてことを言うのかしら!」

 ここにきて、才人は自分がやりすぎたことを悟った。

 情けない声でルイズに言う。

「ごめん。もう言わないから。俺のエサ、返して」

「ダメ! ぜぇーったい! ダメ!」

 ルイズは可愛い顔を怒りで歪ませて叫んだ。

「ゼロって言った数だけ、ご飯ヌキ! これ絶対! 例外なし!」

「そ、そんな殺生な」

 才人はがっくり項垂れた。彼がルイズのことを“ゼロ”と呼んだ回数は、かれこれ十回は軽く上回っている。

 ルイズは勝ち誇ったかのような微笑をたたえた。しかし、その怒りの感情はいまだ矛先をちらつかせていた。ルイズは柳也を睨みつける。

「あんたも……」

「ん?」

「あんたも、内心では私のこと、嘲笑っているんでしょ? 馬鹿にしてるんでしょ? ゼロのルイズ、って。魔法も使えない貴族が威張り散らしているなんてちゃんちゃらおかしい、って」

「そんなことはないさ」

「嘘っ!」

 ルイズはヒステリックに叫んだ。

 八つ当たりだ、と柳也は思った。しかし彼は何も言わなかった。

 不満を溜め込んでいたのは、何も才人ばかりではない。

 才人を召喚したルイズもまた、不満を溜め込んでいたのだ。成功確率ゼロの魔法使い。自身の系統も分からず、同期のメイジ達からは何度も馬鹿にされてきた。汚名を払拭するために挑んだ使い魔召喚では、あろうことか平民を呼び出してしまった。そのことで、みんなからはまた馬鹿にされた。挙句の果てに、呼び出した使い魔にすらからかわれた。この数日間で、ルイズの心はどれほど傷ついただろうか。その痛みは、ルイズ本人にしか分からない。

 周囲に当り散らすことで、その痛みが少しでも和らぐものならば、自分が受け皿になってやればいい。

「小さい頃から、みんなそうだった。お父さまも。お母さまも。家の使用人たちも。口では何も言わないけど、目が言っていた。ゼロのルイズ。貴族のくせに魔法が使えない、駄目なメイジ。お前になんか誰も期待していない。ただ飯食らいの役立たず、って」

 柳也はルイズの発言に対して、反論も、肯定もしなかった。

 ただ静かに、彼女の瞳を真っ直ぐ見つめ、彼女の言葉に耳を預けた。

 プライドの高いルイズが、精神的にまいっているとはいえ、まごうことなき本音を語っているのだ。真摯に向き合うことこそが、唯一の礼儀だと思った。

「魔法学院に入ってからは、毎日がそんな視線だったわ。みんなしてゼロゼロゼロゼロ。魔法だけじゃない。まるで私には何もないみたいに、みんなして……違う、って言いたいのに。でも、実際に私は何も出来ない、何にもない貴族で……」

「それは違うだろう?」

 否定も肯定もするまい。そう思っていた。

 しかし気が付くと自然に口が開き、言の葉が飛び出していた。

 理性が、やめろ、と命令していた。このタイミングで自分の意見を述べたら、かえって彼女の神経を逆撫ですることになりかねない、と。

 反対に本能は、その言葉を聞き捨ててはならない、と切々と訴えかけていた。

「何も出来ないなんて……何もないなんて、嘘だ。少なくとも、君は一つ、魔法を成功させている」

 柳也はテーブルの上で悔しげに握り締められたルイズの拳を握った。

  鳶色の眼差しが、真っ直ぐに自分を見つめてくる。何も出来ない、何もないと思い込んでいる自分自身への哀しさからか、いまにも泣き出しそうな瞳だった。一つしか年の違わないルイズが、急に幼子のように感じられた。

 柳也は、コンプレックスの塊のようなこの少女に、そっと微笑みかけた。

「俺は何だ? そして、俺の隣にいる才人君は何だ? 俺達二人は、どうしてこんな場所にいるんだ?」

「それは私が呼び出したから…・・・」

「そうだ。俺達は、るーちゃんの魔法で呼び出された。ほら、すでにるーちゃんは一つ、魔法を成功させている。ちゃんと出来ているじゃないか、魔法。

 ……それに、君の側には、不肖ながらこの召使いが一人と、使い魔がいる。ほら、何もないなんてこと、ないだろう?」

 柳也は莞爾と笑ってルイズに問いかけた。

 気の昂ぶりからか、視界の中の少女は頬を赤く染めていた。

「だから胸を張れ、とは言わないが、せめて自分を卑下することはやめてくれ。見ているこっちが、悲しくなる」

 柳也にはいまのルイズが、昔の親友と重なって見えた。かつての瞬もまた、プライドの塊で、コンプレックスの塊だった。

 そんなルイズが自分自身を傷つける姿が、柳也にはたまらなく辛かった。

 

 

 両手の中で、握った拳が、ぶるぶる、と震えていた。

 寒いのか。こんな春うららかな陽気の日に?

 怪訝に思った柳也は、ルイズの顔を覗きこんだ。

 顔を真っ赤にしたご主人様が、炯々とした眼光で自分を睨んでいた。

「……っさい」

「ん?」

「うるさい! 召使い風情が、生意気に慰めているつもり?! あと、るーちゃんって言うなぁー!」

「ぐぶぼばはぁあッ!!」

 手の中から質量が消え、その質量が加速を得て、柳也の顔面に炸裂した。

 お手本のような右ストレート。回転を加え、かつ鞭のようにホイップしていた。プロボクサー並に実戦的なパンチだった。コークスクリューでないのが唯一の救いだった。

 どうやら理性の方が警告したように、自分の言葉はかえってルイズの神経を逆撫でする結果に終わったらしい。

 顔面を強打された柳也は転倒してしまった。受身を取ったおかげでなんとか無傷で済んだものの、被害は甚大だった。床に置いてあったスープの皿が、ひっくり返ってしまっていた。

「のわぁぁぁぁあああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! お、おいどんの飯ぐわぁぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 柳也は泣いた。大粒の涙を流した。男泣きだった。悲しくて、悲しくて、生きているのが辛くなった。いっそ死んでしまった方がラクになれるような気がした。

「ああ……もういいや。どうせ人間、いつかは死ぬんだ」

 たかがスープ一杯でたいそうな落ち込みようだった。

 彼は褌に閂に差していた脇差を抜くと、「誰かぁ、介錯してくれないかぁ〜?」と、切腹の準備を始めた。当然、異世界人達は何がなんだか分からない。

 その時、ルイズが手を鳴らした。学院に奉公している給仕係を呼んで、彼女は言った。

「そこで落ち込んでいる私の召使いと使い魔に、あったかいスープを頂戴。あと、オードブルも」

「ふぇ?」

 柳也はルイズの顔を見上げた。

 ルイズがぶっきらぼうな口調で言う。

「一応、あんたのお昼を台無しにしちゃったからね。オードブルはお詫びよ」

「るーちゃん……ウレーシェ」

「また、るーちゃんって言った……ところで、そのウレーシェって、何?」

 聞き慣れない発音の単語に、ルイズばかりか才人も興味を示した。

 柳也は照れ臭そうに笑って呟く。

「俺が以前、暮らしていた国の言葉でね。ありがとう、って意味の言葉さ」

「そう。……リュウヤ」

「ん?」

 新しいスープの皿がやって来た。今度は前菜まで付いている。喜色満面の柳也はルイズを見上げる。

 彼女は相変わらずの真っ赤な顔で、高慢な態度を以って呟いた。

「ウレーシェ」

「……シエステハノハイ」

 聖ヨト語で、「どうしたしまして」と、呟いて、柳也はにっこりと笑った。

 

 

 量の多いルイズよりも先に昼食を終えた柳也は、給仕係で、知った顔のシエスタに頼んで食堂の仕事を手伝わせてもらっていた。

 ルイズがオードブルを頼んでくれたとはいえ、薄いスープと硬いパンだけでは、やはり一八二センチの巨躯を支えるのに圧倒的に量が不足していた。労働力を提供する代わりに、賄いを頂戴したい、と申し出た柳也に、シエスタは快くコック長のマルトーに口利きしてくれた。曰く、「今朝のお礼です」とのこと。

 同じように腹を空かせていた才人の分も用意してほしい、と無理な願いを重ねると、マルトーは自分に皿洗いを、才人に給仕を命令した。

「おっ、お前、なかなか手早く、丁寧だな。筋が良い。男のくせに、手馴れてやがる」

「一人暮らしが長かったもので。……それに、カネがありませんでしたから。結構、色んな仕事に手を染めました」

 コック長というよりは木こりのような太い腕を持ったマルトーに、柳也は、二カッ、と笑いかけた。

 ついこの間までは軍人としてやってきた彼だ。人見知りせず、丁寧な仕事ぶりを見せる柳也のこと、マルトーはすっかり気に入ってしまったらしい。

「色んな仕事っていうと、どんなだ?」

「皿洗いは言うに及ばず。給仕係とか、土木工事とか、色んな施設の清掃係とか。靴磨きに、似顔絵書きなんかもやりましたね。……あと、いちばん儲かったのはマグロ」

「マグロ?」

「知りません? 海の魚なんですけど、これがまた当たると儲かるんですわ。……まぁ、俺の時は五回漁に出て、四回失敗しましたが」

「勝率二割じゃねぇかッ」

 マルトーコック長は、ガハハ、と豪快に笑って見せた。以前、交換留学生で学園にやって来たアイリッシュの男が、こんな感じの男だったか。

 心地の良い懐かしさにかられた柳也は、ついつい饒舌になってしまう。

「いやいや、勝率十割ですよ。一緒にマグロを釣りに行った連中、みんな良い奴でしたから。揺れる船上、集った荒くれ者は約四〇、全員これ我が強く、我こそが真なる海の男と信じて疑わない。高波に〜、のまれもまれて、幾月夜、ぶつけた拳は絆の笑顔〜♪」

「それで殴り合って意気投合か。大したモンだなぁ」

 柳也はマルトーと笑いながら仕事を続けた。

 厨房に血相を変えたシエスタが飛び込んできたのは、そんな時だった。

「リュウヤさん!」

「シエスタ、どうした?」

 顔面蒼白ここに極まるシエスタの様子に尋常ならざる事態が起きていることを悟ったか、柳也は厳しい表情で訊ねた。

「さ、サイトさんを止めてください。このままじゃ、サイトさんが殺されてしまいますっ」

 柳也はマルトーを見た。

 マルトーは何も言わずに、「行け」と、顎をしゃくった。

 柳也は軽く頭を下げて礼をすると、シエスタに着いていった。

 

 

 食堂では才人と金髪碧眼の貴族が何やら口論を繰り広げていた。見知った顔だ。勿論、こちらが一方的に知っているだけで、相手は柳也のことなど知るわけもない。たしか名前は、ギーシュといったか。

「よかろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ。決闘だ!」

「おもしれぇ」

 立ち上がったギーシュに、才人は歯を剥いた。

 そこに、柳也が駆けつけた。そして、叫んだ。

「血糖だと!? 才人君、ギーシュ君! 悪いことは言わない。二人とも早く病院へ行くんだ」

「君が行きたまえ。君が! そして頭を見てもらえ!」

 柳也の言葉に、ギーシュが怒鳴った。いままで醸成したシリアスな空気が、台無しだった。

 

 


<あとがき>

 なぜだろう。ゼロ魔刃ではシリアスな柳也だと逆に違和感がある……。それはさておき、ゼロ魔刃、EPISODE:04、お読みいただきありがとうございました!

 これを書いている最中、私生活でちょっと嫌なことがありました。電車に乗っている時、やたら騒がしい子ども(多分、小学校低学年くらい)がいて、ちょいとその暴れっぷりが無視出来ないものになりつつあった(その隣にいる主婦の方が明らかに迷惑がっていた)ので注意したら、保護者と思しき女子高生くらいの娘に、「頑固親父」呼ばわりされました。……おで、まだ四捨五入したら二十歳なのに。世知辛いわぁ〜。

 悪いこと悪いと言えない。他人の子は叱ってはいけない。暗黙のルールというか、歪んだ常識というか。辛い世の中です。せめてフィクションの中ではと思い、今回、柳也には男前になってもらいました。才人の活躍を期待していた方には、申し訳ないことをしたなぁ、と思っております。

 次回はいよいよギーシュとの決闘編。原作とはちょい違った展開になる予定ですが、楽しんでいただければ幸いです。ではでは〜




シリアスじゃない柳也の方が見慣れてきた、と言うよりも違和感がなくなってきました。
美姫 「流石に戦闘になると違ってくるかもしれないけれどね」
確かにな。でも、まあ決意だけは変わっていないと言うか。
美姫 「確かにね。今回はちょこっとだけシリアスっぽい感じもあったけれど」
最後の決闘のシーンでまさかシリアスをぶち壊すとは。
美姫 「柳也らしいかもね。次回は決闘になるみたいだけれど」
うーん、どんな感じになるんだろうか。
美姫 「次回も待ってますね」
待っています。



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