これはとらは×リリカルなのはA'sのクロス小説です。
設定は全てリリカルなのはA'sで、舞台はリリカルなのはA's最終回その後のお話。
最終回から時間はそんなに立ってない物語なので、なのは達の年齢、学年は放送時のままです。
唯一の変更点、恭也に恋人はいません。


「ありがとうございますー」
図書館の受付のおねーさんにお礼を言って借りていた本を返し終わると新刊書庫の方へと向かう。あれから少しだけ時間が過ぎた。

色々な出来事があった「闇の書事件」多くの人々の人生を狂わせた終わらない憎悪の連鎖を断ち切り、ヴィータ達守護騎士ヴォルケンリッター達の永遠に戦い続ける悲しい運命の楔を解放する事ができた。

でも全てが解決したわけではなくあたしは守りたかったとても大切な家族を失ってしまった。。あの子は泣きじゃくるあたしに

「私は世界で一番幸福な魔道書ですから……」

本当に安らかな笑顔で別れを告げたあの雪の日。なぁ……リインフォース……あんたはほんまに幸せやったんか?あたしはリインフォースに何もしてあげらへんかった、あの子を守ってあげられへんかった。

誰よりも何よりも優しいあの子がなんで……あの子が一番の犠牲者やのに、あたしは夜天の魔道書の主やのに助けてあげられへんかった。

もっと自分に力があればとあの時の事を思い出すだけで後悔と自責の念に囚われ押しつぶされそうになる。気がつけば目じりにうっすらと涙が堪っている自分が窓硝子に映っているのが見え、慌ててゴシゴシと目元を拭きさる。

あかんあかん、最近つい一人になると考えて込んでまう癖がでて油断すると泣き虫さんになってまう。今は泣いてる暇なんてあれへん。あたし達が犯した罪はみんなで背負って時間をかけて償わなあかん。迷惑かけて皆さんには背筋伸ばして真っ直ぐ謝る。

そして今あたし達が出来る事を一生懸命みんなで一緒にいられる為に頑張る。それがあたし達の出した答え。あたしには夜天の魔道書としてまた家族としてみんなのこれからを幸せな毎日にしたげなあかん。

それをあの子まで最後まであたし達の事を想いずっと願い続けてくれとった。だから絶対に叶えたげななあかん。リインフォースの願いはあたしの願いでもあるんやから。

あの子が残してくれた想いの欠片。あれから肌身離さず持っている剣十字の紋章をギュっと握りしめていつものようにあの子とあたし自身にまるで、そうしないと笑えないとでも言うように切なく張り裂けようなな想いを心を刻み続け、

祈りと願いと言うようりも自分を奮いたたるための戒めにも似た想いで誓いを立てる。

あたしは大丈夫。ちゃんと前を向いて新しい一歩を踏み出すんや。あの子の分までみんなを優しくそっと抱きしめて支えてあげられるように。みんなが幸せの中で笑顔でいられるように。だから……


「Little Alice Stories2〜疾風の約束〜」


新刊書庫のコーナーに着くとやっぱり目がいくのは料理系の本。みんな仕事で疲れて帰ってくるから、なんやおいしいもの用意してあげたい。何にしよかなー、おでんもええしお好み焼き言うー手もあるんやけど、今日はちょう新しいもんに挑戦したい気分♪

そんな創作意欲に燃えながら新しい料理本を探していると、一つの本のタイトルを見て身体に電気が走ったかのように思わず目が釘付けになってしまった。その本のタイトルは……

「上田太郎のどんと来い、超常料理」

……あかんあかんあかんあかんでぇーっ!明らかに本のタイトルから悪ふざけの匂いがするやんっ。なんかどっかっで見たこともん。

なんや頭の中で鮮明にダンディーなおじ様と携帯のCMのお姉さんの映像が浮かぶんやけど、それは大人の事情できっとあんまり触れたらあかん事やと小学生ながらに気をつかってまうやん。

それに「超常料理」てどんなんやろ?シャマルの初期段階の料理はある意味「超常料理」と言えん事もないんやけど(苦笑)そう妖しく煌めき胡散臭い匂いお約束のようにがぷんぷんとするタイトルの本に頭の中では「絶対あかん」てわかってる、わかっとるんよそんな事は。

それでもなんやこうあたしの中に流れる誇り高い関西の血が騒ぎ立てんねん。

「考えるよりも、感じろ」

理性では警告を発していても悪魔の誘惑に心がときめき惹かれる自分がおる。これも運命って書いてデスティニーと呼ぶんやろうか。ふっと自嘲気味な笑みを浮かべて心の中で先に謝罪を述べる事にした。

かんにんな、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、関西の血が物語を面白い方に転がせって囁くねん。ちなみに全てパクリやなくてインスパイアやから。これ言うとったら何とか道は開けるやろ(苦笑)

いい訳めいた事を一通り誰かに断っておきつつ、いざ新たなる魅惑の領域へ我を誘え。

「う〜ん、もうっ、ちょいや、もうちょい。がんばれあたし。ん〜、やぁっ、ほぉ、てやっ」

周りに迷惑にならんよう小さな掛け声と自分へのエールと共に頑張って手を伸ばしてみるものの、車椅子のままではあともうほんの少しがどうしても届かない。それでも身体をいっぱいいっぱい伸ばしてギリギリの所まで手を伸ばす。

あと数センチで届くはずだったその本はほんの僅かあたしの手が及ばず、隣の誰かの来訪者によって本はその人の手元へ行ってしまい本棚には一冊分の空白しかそこにはない。

そのぽっかり空いた虚空の闇を声を出すこと無くただ黙って見つめながら少しだけ落胆する気持ちに沈みそうになった時、

「こちらの本でよろしかったですか?」

そう声をかけられて目の前に差し出された一冊の本。その本の題名は「上田太郎のどんと来い、超常料理」

「えっ?」

突然の事に思わず声が出てしまいながら本の差し出された隣の方を見やると、黒いシャツと濃い目のブルージーンズと全体を黒を基調としたシックな感じが良く似合てるおにーさんのとても穏やかで静かな微笑みがそこにあった。

あたしはその笑顔を見て一瞬本の事を忘れてしまいただじっとそのおにーさんに心奪われて見とれてしまっていた。確かにめっちゃかっこええおにーさんやけどあたしが惹かれたのはその吸い込まれそうなほど鮮やかでどこまでも澄んだ真っ直ぐの綺麗な瞳。

そしておにーさんの纏うこの親しみを覚える独特の雰囲気はあたしの知るとても身近な人に良く似てる気がして自分でもなんやようわからん不思議な気持ちに包まれる。

「こちらの本ではありませんでしたか?もし良ろしければどの本か言って頂ければお取りしますが?」

さらにおにーさんが親切に声をかけてくれてやっとの事で我にかえったあたしは、なんや急に恥ずかしくなって自分でもわかるくらい頬を真っ赤に染めて慌ててお礼を言いました。

「い、いえ、これでおうてます。あ、ありがとうございますー(////)」

「そうか、良かった」

そう言ってあたしの手に本を渡してくれて最後にもう一度だけ笑ってくれる。その落ち着いた笑顔がほんまに優しくて、またもやおにーさんに見とれそうになって未だ熱を帯びた頬を隠すように渡してくれた本を宝物のようにギュッと胸の前で抱きしめた。

おにーさんは少し頭を下げて会釈しながらその場を去ろうとしたが、あたしの顔を見て何かを思い出したかのようにその足を止める。えっ?なんやろ、あたしの顔になんやおかしいのついとんのやろか?確かに今ゆでだこさんのよう真っ赤でそんな綺麗な瞳で見つめられるとめっちゃ恥ずかしいってかときめく(////)

なんてちょっと少女マンガ的な妄想物語を勝手に頭の中で展開してしまい一人心の中であたふたしてたら、そのおにーさんから思ってもみーひん以外な言葉があたしの耳に届いた。

「不躾な質問で大変申し訳ないのですが、もしかして八神はやてさんですか?なのはとフェイトのお友達の」

「えっ!?は、はい、あたしが八神はやてですけど、あの、なんであたしやなのはちゃんのことを……」

「あぁ、驚かせてすみません。初めまして、俺は高町なのはの兄の高町恭也と言います。一度なのはに写真を見せてもらった事がありましたので。いつもアレがお世話になってます」

そう丁寧に頭を下げて礼儀正しく自己紹介をしてくれた、なのはちゃんのお兄さんで高町恭也さん……ええっ!!!???なのはちゃんからお兄さんがいるゆー話は前に聞いとったけどこないに素敵でかっこいいお兄さんがおるやなんて、

それが偶然こんな所で出逢うやなんてなんやちょっと、いやかなりびっくりさんやでほんま。ううっ、ちょっとなのはちゃんが羨ましいかもしれへん。

「あぁ、そうやったんですか。あたしの方こそなのはちゃんには本当に色々お世話になってもうて感謝してもし足りないくらいです。えと、改めまして八神はやて言います。よろしくお願いします、なのはちゃんのお兄さん」

「はい、こちらこそ。八神さんはよくここを利用されてるんですか?」

「あっ、はい。たまに利用させてもろてます。えと、別に気を遣てもろて敬語は使ってもらわんでもええですよ、あたしの方がなのはちゃんのお兄さんよりかなり年下なんやし、名前もはやてでええですよ。女の子やのにはやてって変な名前や思いますけど(苦笑)」

「……そうか、わかった。ならはやてと呼ばせてもらう。はやて、君の名前はとても聡明で綺麗な名前だと思う。名前は君がこの世界に生まれた証、大切な君だけの贈り物だ。変なんかでは決してない……それと俺の事も名前で呼んでもらって構わないよ、はやて」

「は、はい、ありがとうございます、え、えと、き、恭也さん(////)」

前にもすずかちゃんと初めて逢うた時もあたしの名前をすずかちゃんは誉めてくれた。その時はすごく嬉しかったんやけど、恭也さんに誉めてもらえると嬉しい通り越して舞い上がるほど照れてまう。あうっ、さっきからずっと照れてばっかで緊張しっぱなしやん、あたし(////)

このままやと真っ赤になりすぎてのぼせてまいそうや。恭也さんに変な子や思われてしまうのは絶対嫌やから、一度大きく息を吸って深く吐くと少しだけ冷静さを取り戻せたような気がした。

「恭也さんもここの図書館で本を借りに来はったんですか?」

「ん?ああ、大学の論文の資料の本を探しに来たんだが、実はあまり図書館の方はあまり利用した事がなくてな、欲しい本がどこにあるかわからず情けない事に迷っていたところだ」

そう苦笑する恭也さんにあたしは本を取ってくれたお礼ともう少しだけ恭也さんとお話したいという気持ちが気恥ずかしさを上回って遠慮がちに申し出てみた。

「あの、どんな本をお探しですか?だいたいの本のジャンルの位置は把握してる思いますので言ってもろたらあたしがご案内できる思いますがどうでしょう?」

「そうしてもらえたら俺は大変助かるのだが、本当にいいのか?」

「さっき本を取ってもろたお礼です、ぜひ案内させて下さい。時間の方はまだ余裕ありますので、全然かまへんですよ♪」

「そうか、じゃぁ悪いが頼む」

「はい、喜んで♪」

そうしてあたしは恭也さんの論文の資料を集めるお手伝いをする事になった。初めはやっぱりまだぎこちなかったあたしも色々話してるうちにあたしも段々と緊張が解けてきて普通に話せるようになった。恭也さんも先ほどと今では少し感じが違う。

雰囲気が今も落ち着いた感じだけれどどこか柔らかい自然な感じになった気がする。自分の勝手な解釈かも知れへんけどそれは家族や親しい友人にだけ見せるそんな姿じゃないやろか?

そう感じたんはさっきも感じた恭也さんに抱くこの妙に隣におって落ち着く親近感の謎が解けたから。その正体は恭也さんがシグナムと雰囲気がそっくりだと言う事。

自分が目指すもの守りたいものの為に振り向かずに迷わず恐れず、ただ真っ直ぐに前を見て己が信じた道をただひたすらに歩んでゆける、そんな心の強さと誰かを本気で想いやれるそんな優しい心の持ち主。

人を見る目にはあたしもちょう自信があるし多分間違いないと思う。だからやろか、恭也さんの隣でもっと一緒にお話したなーて思うてまう。でもなんやちょう違う気もする。

もっと他に「恭也さんの傍にいたい」理由が何かある気がするんやけどこの時のあたしにはまだその本当の理由はわかりませんでした。


恭也さんの資料も無事見つかり、少しだけお話をしてあたしはこの後病院に行く事になっていたので名残惜しいけども恭也さんとお別れする事にした。恭也さんもこれから寄る所があるらしく二人一緒に図書館を出る。

「もし迷惑でなければその場所まではやてを送りたいとと思うのだが?」

「あぁ、別にええですよ、恭也さんも寄る所あるんやしお気持ちだけもろときます。心配せんでも海鳴病院なんでここからそないに遠ないしずっと通ってますから一人でもへーきです♪」

「ふむ、海鳴病院か。なら尚の事、はやてを無事病院まで送り届ける為に俺も同行しよう」

そう言うとあたしの車椅子の後ろに回り、ゆっくりと車椅子を押してくれる恭也さん。

「あ、あの、本当にあたし一人でも大丈夫です。そない恭也さんに気遣てもろてご迷惑かけられませんから」

「気遣いや迷惑などではなく、はやてはなのはとフェイト達の大切な友人であり、俺もはやてを心配する一人の友人としての当たり前の行為だと受け取ってもらえると嬉しい。それに俺の用事も実ははやてと同じ場所だから問題はない。それでも送らせてはもらえないか?」

「あっ、えっと。そ、そう言ってもらえて、凄くすごーく嬉しいです(////)そやったら、その、お、お言葉に甘えてお願いしてもええですか?(////)」

「ああ、ありがとう。そうしてくれると俺も嬉しい」

あたしがお願いしますと恭也さんの申し出を受け入れた時の、恭也さんの嬉しそうに少しだけ微笑んでくれた事があたしも嬉しくて心がぽやっと温かくなる。あたしにお兄さんが居たらこんな感じやろうか?

そんな仲の良い兄妹のように新しく出来た歳の離れた友人と病院への道を歩く。でも一つだけさっきの恭也さんの言葉に引っかかりを覚えた。

「あの、恭也さんも病院て、誰かのお見舞いとかですか?」

「ん?あぁ、違うよ。海鳴病院へは俺や美由希など家族もたまにお世話になったりしているが、今日は俺の月に何回かある診察の日なんだ」

「えっ!?恭也さん、どこか体調が悪いんですか?」

「別に病気とかではなく、子供の頃少々無茶をしすぎてな、日常生活には問題はないのだが膝を壊してしまって以来ずっとあそこにはお世話になっている」

そうどこか遠い哀愁の瞳はここではない通り過ぎた過去へと想いを馳せているその姿はいったい何を思うのだろう。決して取り戻す事もやり直す事も何も出来ない過ぎ去った時間。

終わらない後悔か犯した過ちへの過去の自分に対する怒りか、それとも色褪せた想い出の一ページへとして心の片隅にしまっているのか。でも恭也さんはそのどれでもない気がするのは、きっとあたしの気のせいなんかじゃない。

自分だけが悲しいと自分が世界で一番不幸だなんて、そんなふざけた思い上がりな気持ちはさらさらない。あたしもそれに恭也さんもきっと自分にとって大切な何かをその時に失くしてしまってる。ただ今のあたしには足りない「何か」を恭也さんは確かに持っていて、あたしには見えていないものが恭也さんには見えている。

でもそれが何なのかわからない、自分はその足りない「何か」に気づき理解する事が出来るかどうかも今のあたしにはその答えに辿り着く為のスタートラインにさえ立っていない気さえする。そんなあたしに恭也さんはゆっくりと穏やかにあたしの心に直接触れるようにそっと話しかけてくれた。

「……過ぎ去った時間をどんなに悔やんで悲しんでもその事実が消える事は決してない。人は皆過去に生きるのではなく、明日に続く今を生きなければならないのだから……はやて、少し退屈かも知れないが一人の少年の昔話を聞いてくれないか?」

「……はい」

恭也さんが語る一人の少年の物語。少年の父はとある事件に巻き込まれ何年も生死の境を彷徨いながら奇跡的に命を取り留めたものの長い間入院生活を送る事となる。

少年は父親の変わりに家族を守り、父の振るう「誰かを守る為の剣」その意志を受け継ぎ己自身ときっと自分と父すらもいつか越えて行く妹にその魂と剣を伝える為にがむしゃらに剣の修行に打ち込んだ。ただひたすらにその小さな身体が悲鳴をあげても決して止まる事無く全速力で駆け抜け稽古に明け暮れた日々。

その尋常じゃない稽古量により剣の腕は急激に上がっていったがその代償として過度の稽古による精神と肉体の疲労は既に身体の限界を超えたある日のこと、少年の一瞬の気の緩みが突然の不幸な事故を呼び、後遺症が残る程の大怪我を右膝に負ってしまう。

必死に血の滲む思いで積み上げられたものが一瞬にして崩れ去り、神様の気まぐれなのかそれが運命だったのか理不尽で残酷でそして傲慢なまでに突然奪われ閉ざされた自分の未来。

少年に幼い方に重く圧し掛かる責任、恐れ、悔しさ、怒り、悲しみ、不安など負の感情が後悔と絶望の闇に囚われ自分を自分で追い詰め苦悩する。

それでも出逢いがあって周囲の人々の心に触れ支えられ、厳しいリハビリに耐えて復帰する事が出来た。でもこれ以上自分が剣士として強くはなれないという現実。

それでも少年はそれすらも受け入れて自分自身に課せた使命と自分が為すべき事を、想いを剣に乗せ再び振るうその剣には確かに意志が灯る光がそこにあった。

自分はきっと剣士として完成する事は無い。けれども辿り着けないその場所へと自分と父の想いと意志と全ての剣を正しく受け継ぐべき正統な後継者を導く事が自分の役目だと新しい道を真っ直ぐに揺ぎ無い信念で歩み始めた少年。

その少年はきっと恭也さん自身事なのだろう。恭也さんの負った傷は心も体もあたしが想像する以上に深く辛い悲しい出来事。シグナムはきっとあたし以上に恭也さんの気持ちがわかるのかも知れない。

剣士にとって己の剣は誇りであり魂であり全て。剣士としてこれ以上強くなれず剣士として完成する事は無いと、大切なものを失ってどれほどの絶望と苦しみをこの人は乗り越えたのだろうか。そしてなぜ、そんな大切な話をあたしにしてくれたのか……

話し終わった恭也さんはそれ以上は何も言葉を紡がない。多分やけど恭也さんはあたしを待っている気がする。それはきっと……ある種の予感はその答えを求めて彷徨いゆく。それはあたしがその静かな沈黙を自身の手で破らせる事に何の躊躇いもなかった。

「……どうして、そんな話をあたしなんかに?」

「……俺はなのはやはやて達に何があったのかは知らない。そしてその事に関して俺がはやて達にしてやれる事はそう多くは無いだろう。今もそしてこれからもはやて、答えは自分自身で出さなければならない、どんな時もどんな事もそれはみんな同じだ。でもな、はやての中にある答えを一緒に探してやる事は出来る。自分の事だからこそ自分は気づけずわからず理解できない事を俺は良く知っている。人は誰かの為に何かを出来ない事はないとそうこないだフェイトに怒られた(苦笑)だから俺にもはやての答えに辿り着くきっかけを作る事を一緒に考えて遣れる。今のはやてにはそれがきっと必要だと……思ったからだ」

予想は確かな確信へと変る。やっぱり……この人は気づいていた恐らく初めて出逢ったあの時からあたしが抱えている「迷いと不安」を。答えを出したつもりだった、それでもまだあたしには辿り着けていない本当の答えがあたしの中に眠っている事を伝える為に恭也さんは今ここにいる。その事を思うと純粋にあたしを心配してくれている恭也さんの優しさが嬉しいのと、

自分は今もまた誰かに心配をかけているんだという申し訳なさと情けない気持ちが募ってゆく。そしてあたしはうつむいていた顔をあげ、自身で感情を殺した無機質な声でとある場所を口に出した時の顔は……自分でもわかるほど今にも泣きそうなくらいくしゃくしゃになってもうてた思う。

それはあたしが創り上げた仮面の笑顔は恭也さんの手によってとおの昔に剥がされていた今の本当のあたしの素顔だったのだから。

「……少しだけ寄りたい場所があるんですが、そこに連れて行ってもろてももええですか?」

「……ああ、わかった」

あれから一度も訪れなかったいや訪れようとしなかったあの子との別れの場所。そこにはもしかしたらまだリインフォースがいるかも知れないと、ありもしない希望にも似た妄想をしがみつき際なわれより深い哀しみが胸を締め付ける。

「……あたしの足は今までずっと動かなくてこれからもきっと動かないんやと思てました。それが今ゆっくりですけど足が動くようなってきて身体が徐々に回復して来てるんです。もう少ししたら休学していた学校もなのはちゃんとフェイトちゃんと一緒に行けるようなって何年かしたら歩けるようなるって先生も言うてくれたんです……ただその代わりあたしはとても大切に思てた家族を……失いました……」

なぜこんなにも自然に恭也さんの前で誰にも気づかせないよう努めてきた心の内を明かす事が出来るのが自分でも不思議で仕方ない。恭也さんの持つあたしには無い大きな何かがそれをさせるのだろうか、それとも誰かに聞いて欲しいだけだったのか。

ただ不思議やけどこの人なら本当の事を話してもちゃんと受け止めてくれるという確かな安心感と絶対の信頼をついさっきおうたばかりのこの人に抱いていた。

魔法の事やアースラの人達の事はそんなに詳しくは話さなかったけれど、あたし達自身の事、闇の書事件での犯した罪、その罪を背負い償っていく事、守れなかった無力な自分への後悔、憤り、そしてリインフォースとの別れの事を嘘偽り無く懺悔にも似た独白を恭也さんはただ何も言わず黙ってそれを聞いていてくれた。

「蒐集の事とか早く気づいてあげたらよかったし、あたしがもー少ししっかりしてたらよかったとか、過ぎた事を後悔し続けてもしゃーないとは自分でもわかってるんです。でも、でもあの時もっとあたしに力があれば、こんなはずじゃなかったもっと違った今があったんやないかって、あの子が消えんでもええ方法があったんやないかって……そう思ってしまうんです」

「……世界はいつだってこんなはずではない事ばかりで、ずっと昔から、誰だって、いつだって突然に訪れる。それは誰のせいでもない、もちろんはやてもリインフォースもきっと誰も悪くない。はやて、リインフォースは最後にこう言わなかったか?……自分はとても……幸せだったと」

リインフォースの最後の別れの言葉だけはあえて話さなかったのに、恭也さんは静かな声でその言葉を口にした。

「私はもう世界で一番幸福な魔道書ですから」

その時のリインフォースの顔と言葉が一気にフラッシュバックとして甦り、記憶と共に別れの時の感情が再びあたしの心に一気に広がり動揺が隠せない。

「……なんで、なんで幸せなんっ!消えてまうのにっ、ずっと悲しい思いばっかりして、辛い思いばっかりして最後の最後に消えてしまうなんて、そんなんあんまりやんかっ!あたしはなんもできへんかったらか、あの子を守ってあげられへんかったのに、なんで、なんでや……なんであの子はあんなに幸せそうに笑って消えたんやっ!?」

「……それはな、はやて。リインフォースにとって、はやてが救いだったからだ。はやてがリインフォースを想うようにリインフォースもまたはやてが大好きでとても大切に思っていたからこそ……はやてを守りたかった。だから幸福だったんだ、少しの間でも大好きなはやての傍にいられて綺麗な心と名前をもらえてそして……はやてを守る事が出来たのだから……」

そうあたしの前で膝をつき目線を合わせて真っ直ぐにあたしを見つめた恭也さんの瞳は、あの時のリインフォースのようにとても穏やかで安らかな瞳がそこにある。それを見たらもうダメだった。今まで堪えていた感情の濁流は堰を切ったように止めどなく溢れ出す。

我慢していた涙なんて本当は自分で話していた時から流れていたんやけど、恭也さんの声を聞いたら涙は止まる事も止める事もできずにいる。心の奥底に堪った泥を全て吐き出すかのように目の前の恭也さんに我を忘れるほど激しく縋り付き悲痛な慟哭の叫びが辺りを支配する。

「……でもっ、だからっ、大切や言うんやったら大好きや言うんやったら、消えんでもええやんかっ!あたしが主としてちゃんと抑えてみせる、違う方法も探したる、別にこのまま一生歩けんでもええっ!あたしの傍に、みんなと一緒に居てくれたらそれで良かったやんかっ!ヴィータとシャマルとシグナムとザフィーラとみんな一緒で笑うて泣いていっしょ、一緒に毎日を暮らせるだけで幸せやった、あたしらは家族やみんな揃っての家族やのにっ!」

「……はやて、リインフォースは消えてなんかいない。リインフォースの想いと力ははやての中に溶けたんだ。今もずっとはやての傍に居るんだ。姿が見えなくても声が聞こえなくても想いはいつもはやてと共にある……本当は、その事ももうわかっているのだろう?」

「……」

そう小さな子供をあやすように諭すよう穏やかにゆっくりと話してくれた後、あたしの髪をそっと優しい笑顔で撫でてくれてギュっとあたしの心ごと全てを包み込むように抱きしめてくれた。

「はやて。泣いていいんだ、だから人は泣けるのだから。別れは誰だって悲しい、そんなに無理をして強くなる事はない。はやての前にいるのは魔法とは何の関係もない俺だけだ。はやてが守りたい騎士達は今は見ていない。リインフォースもきっと心配しない。無理に笑おうとしなくていいから、今は安心して泣けばいい」

「ううっ、きょ、う、やさぁっ、んっ、あたっ、あたしっ、あたしは……ふえぇっ」

「そして最後に俺の何も知らないものが偉そうな事を言った事を謝る。すまない、心の傷をえぐるような事をして許してくれてとは言わない。ただ俺ははやてには今の悲しい笑顔ではなく本当のはやての笑顔でいて欲しいと思った。それはきっとリインフォースも同じ気持ちじゃないかと俺は思う」

「ふぇっ……ひっくっ……うぅっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁあああっ!!」

あたしは本気で泣いた。声をあげて今だけは言う事を聞かない駄々っ子のように思う存分泣いた。でもきっとリインフォースはこの涙に心配はせぇーへんと思う。ちゃんとあたしの気持ちをわかってくれる人がおって、その涙を受け止めてくれる人がおる。

これは悲しい涙やけど哀しくはない涙。ちゃんと、これからの自分の本当の答えに辿り着く為のスタートラインに立つ新しい誓いの涙やから。


「リインフォースが残した想いと力ははやてに溶け受け継がれた。そしてはやてやなのはやフェイト、騎士や新しく出逢った人達に残していったものがある」

「……リインフォースがあたし達に残してくれたもの?」

「それはな……「絆」と「約束」だ」

「……絆と約束……」

「はやての周りに今は騎士達の他に色んな人が傍にいる。なのはやフェイトは、はやての事が好きでとても大切な友達だと思っている。あの子達ははやての為にこれからもきっと何があってもはやてを支えて力になってくれるだろう」

「はい、なのはちゃんもフェイトちゃんもとっても優しくて大好きです。クロノくんもユーノくんもみんな、みんな……」

「それが絆だ。出逢いによって紡がれた絆はまた新たな絆を巡り紡いでいく。それはこれからのはやて達にとって一生大切な財産になるはずだ。大切にして欲しいと思う」

「はい。リインフォースとの絆や思うとほんま嬉しいです……また泣いてしまいそうなくらい……」

「そしてもう一つの約束。リインフォースの願いははやてが一番良くわかっているだろう。それを叶えてあげられるのははやてだけだ。なのは達もこの事件を通じてそれぞれに想う事があってそれは自分の目指すべき場所への新たな一歩を踏み出す誓いとなる。それがリインフォースとはやて、なのは達の約束だ」

抱きしめてくれた手でそっと残っていた波を拭ってくれる恭也さんに身体ごと甘えるように身を任せながらなのはちゃんが前に話してくれた事を思い出した。

今の自分と目指すものがあってそれをちゃんと自分で考えて頑張ろうと思えたのは兄の存在が大きい。自分が手に取った力と兄のそれとは違うけれど辿り着きたい場所はきっと同じだと思うから。兄はずっと憧れであり自分の目標。

兄と姉のような才能は自分にはなくただ背中を見守るしかなかった自分が、いつか世界は違っても手に取った力が違っても胸を張って遠く離れていてもどこかで兄の隣を誇りを持って自分の選んだ道を歩いている自分でいたいと。

きっと恭也さんを表す一番相応しい言葉は「鋼鉄の刃」という感じやないやろうか。自分の事では決して迷わず、また誰かの為、自分の守りたいもの為に己の全てを賭けて全力で守り抜く「闇を切り裂く鋼鉄の刃」不器用やけど人を想いやり、人を育て、それは新たな力と意志を生み出す糧となりそれぞれの歩むべき道へと繋がる。

迷い、疑い、とまどい、悲しみ、その全てを受け入れ乗り越えて自分だけの真実に辿り着いた「本当に強くて優しい人」

なのはちゃんが言っていた意味が今ならよくわかる。そして気づいた、恭也さんがあたしにとても大きくてとても大切な存在になってもうたという事に。

「はー、なんや思いっきり泣いたらすっきりした。おーきにです、恭也さん」

それはきっと本当に小さな願い

「そうか。良かった。心からのいい笑顔だ、本当に……」

叶えることができなかった願いがあって、てのひらに残った今があって

「ありがとうございます♪恭也さん、あたし決めました」

どんなに泣いても悲しんでも、過去は戻ってこないけど

「良かったら聞かせてくれるか?」

だけど未来は作っていける

「あたし、ちゃんとリインフォースの願いと意志を受け継げるように自分に出来る事を精一杯頑張ります。自分の非力さに泣かないように、今手に取るこの力を正しく使って今度はちゃんと大切な人たちとその世界を守ってあげられるように。そして……恭也さんのように本当の強さと優しさの心を持った立派な魔導士になりますっ♪」

想いを貫くための力と、空を賭ける翼があるから

「なのはやフェイトと言いはやても俺を買いかぶりすぎた(苦笑)でも、はやてならきっとなれると俺は信じる。その温かな慈しみの心とそれを貫く鋼の意志は、やがて傷ついた人も世界も全てを包んで癒してあげられる明日の笑顔を守るかけがえのない力となる事を……はやて、君は優しい風になれ……」

わたしたちは……きっと……

「……はいっ♪」


心からいっぱいの笑顔とそれを受け止めてくれる穏やかで柔らかな笑顔。そのどちらの笑顔も春の日差しのように温かくて優しくて。きっと恭也さんとのこの出逢いもリインフォースから贈り物だとあたしは思う。

あの子の残した「絆」と「約束」それはきっと今日ここで交わした恭也さんとあたしとの間に紡がれた新しい「絆」と「約束」それが何よりの証。

「さぁ、そろそろ病院に行こうか、はやて。まずはちゃんと身体を直さないといけない。それが今のはやての一番の仕事だ。リハビリは想像以上に大変だが、無理せず焦らず自分のペースでゆっくりと頑張れ。応援しているぞ」

「はい、頑張ります♪」

「ふむ、元気があって良い答えだ。そうだ、先ほどの話の続きがあるのだが聞きたいか、はやて?」

「えっ?さっきの恭也さんの子供の頃のお話に続きがあるんですか?ならぜひ聞きたいですー」

「実はな、最近になって海鳴病院である先生との出逢いがあってな、その先生が言うには俺の右膝は完治出来る傷なのだそうだ。そしてもう一人俺にも目指すべき目標となる人物との出逢いがあった。俺は右膝を完治させてもう一度、剣士の高みへと目指そうと思う。だから最近は頻繁に病院へと通っているんだ。ちなみに親父は今では元気一杯に回復し翠屋の店長として日々を忙しく元気に働いているというわけだ」

「そうやったんですか。なのはちゃんのお父さんも恭也さんも怪我がようなってほんま良かったです♪もしかしたらあたしもあそこの病院は長いことお世話になってもうてるから恭也さんの膝を直してくれてはる先生知ってるかも知れへんですねー」

「そうかも知れないな。若いのにしっかりとしていてとても腕の良く心のケアも大切にしてくる優しい立派な先生だ。小柄で銀色の髪が美しい綺麗な人だと病院内でも人気もののようだがはやても知っているか?」

「はぁ〜、なんや多分そうやろなー思う先生は思う浮かんだんですが、それよりももしかして恭也さんはそういう先生みたいなタイプの女性が好きなん?」

「待てはやて。いったいさっきの会話でどこうどう聞いたらそんな話になるのかさっぱりわからないのだが(苦笑)」

「だってなんや恭也さんめっちゃ嬉しそうに話してたんやもん。はやてさんかて女の子やのに目の前で他の女の子さんの話をそんな顔で話されたらちょっぴりジェラシーやー。そんでどうなん?恭也さんはどんなタイプの女の子が好きなん♪」

「いや、まぁその、なんだ、そうだはやては料理が得意なのか?図書館でも料理の本を借りていただろう?もし機会があればはやての作った料理を食べてみたいと思ったのだがどうだろうか?」

「えっ?まぁ、ずっと料理は自分で作っとったし、今もヴィータ達に作ったげてるから得意ゆーか好きってゆーか、イヤやもう恭也さん、急にそないな事いうて照れてまうやん♪(////)」

哀しかった過去も辛くて心が痛くてずっと流した涙もきっと消える事はない、でもそれはいつか自分の中で想い出に変えてゆける。もっとずっと前の自分よりも優しい自分になれると思う。

だから……一緒に歩いてゆこう。あたしの生きる時間は長いのかも知れない、もしかしたら短いのかも知れない。でもそれは誰にもわからないから、だから後悔しないように、これからの日々を一生懸命生きる。

もっと辛くて悲しい事もあるかも知れないし、心から幸せを感じる瞬間もあるかも知れない。どんな未来をこれから待っていようとも最後に「良かった」って笑えるようにあたしは哀しい過去と優しい想い出によって紡がれた新たな「絆」と「約束」を胸に抱いて一緒に歩いていきたい。

目の前に映るどこまでも澄んだ蒼い空から照らす太陽の光があたしの心も照らしてくれるみたいで心の中も鮮やかに晴れ渡ってゆく。もう大丈夫やよ、リインフォース。主として、そして家族として、リインフォースの願いの約束は絶対守ってみせる。

だからなリインフォース……「さよなら」は言わへんで。いつかきっとまた逢えるやろ?リインフォースの想いを受け継いだ子が新しい命になってあたし達の前にきっと生まれてくると信じてる。

その時は初めましてやなんて寂しいは言わへんよ。あたしもヴィータ達も一緒にいっぱいの笑顔で「おかえり」って言うて迎えてたるからな。あたしらは家族やねんから当たり前や。だから今は安心してゆっくりおやすみ。

また逢える日を心から楽しみに待ってるわ……ほなな、リインフォースあたしの大好きな……祝福の風……


Fin



おまけ
ちなみにこの後、病院の方で待っていたヴィータ達と合流したあたしは恭也さんと別れたが最後にあたしが

「あの……今日はいっぱいありがとうございました。その、また、良かったら、あたしとお話してもらってもええでしょうか?(////)」

「あぁ、俺で良ければいくらでも構わない。はやての料理も実は密かに楽しみに思っていたので機会があれば食べさせてもらえると嬉しい。だからまた話そう、はやて……「約束」だ」

消え入りそうな声でそれでも勇気を振り絞ってそういったあたしに、恭也さんは柔らかな笑顔を浮かべてあたしの前に小指を差し出してくれた。その意味が本当に嬉しくて

「はいっ♪めっちゃおいしい料理作ってお待ちしてますー♪」

そう大切なあたしと恭也さんを結ぶ新たに紡がれた「絆」と新たなる「約束」が込められた大切な指切りをしてあたしと恭也さんは別れた。

ヴィータ達とすれ違いざま会釈をして去っていった恭也さんのみんなの印象はヴィータとシグナムが言うには

「あいつ……多分すげー強ぇー」

「あぁ、確かに。あの者が纏う空気は間違いなく戦士のもの。しかもそれを極めた達人と呼べる程に」

一瞬に見抜く辺りはさすがヴェルカの騎士。恭也さんは剣を習ってるんやよーって教えたらシグナムは割と本気で「一度試合うてもらいたいものです」と剣士として心躍らせているみたいだった。そしてシャマルに至っては

「あの人がなのはちゃんのお兄さんの恭也さんって言う方なんですか、はやてちゃん?とっても素敵な方ですね〜♪」

とこちらも割りと本気で恭也さんが去った方を見て熱い視線を送っている始末。むむむ、それはちょっと大変そやなー。恭也さん、恋人はおらへんて言うてたけど多分恭也さんが知らんというか気づいてへんだけで好意を寄せてる女の子はいっぱいいそうやもん。

初めはこんな優しくてかっこいいお兄さんがおったらなーなんて思っとったけど、今はもう全然違う。あたにしにとって恭也さんは今回相談に乗ってあたしの迷いを振り払うきっかけをくれた尊敬する恩師と呼べる人やし目標としてるお人や。

でも、もっともっとあたしにとって「大切な意味を持つ人」やっちゅー気持ちに気づいてもうた。はぁ〜、あたしもこないな気持ちになったん初めてやから、もう自分でもびっくりや。

でも気づいてもうたからにはあたしかて誰にも負けるつもりはあれへんよ。多分きっとあの二人も恭也さんの事を想ってる思うけど、でもあたしかてこの大切な気持ちは誰よりも強い自信はる。

だから……後悔せーへんように、全力全開一生懸命で頑張るで♪ぜったい振り向かせてみせる♪

「ねー、はやて。なんかいい事あったの?あのにーちゃんとどんな話したの?」

あたしの様子に気づいたヴィータがそんな質問をしてきて、シグナムもシャマルもみんなあたしの答えにそれぞれの想いで興味津々といった感じであたしの回答を待っている。

だからあたしはみんなの気持ちに答えるようにとびっきりのあたしだけの笑顔120%でこう答えた。

「それはな……あたしと恭也さんだけの秘密や♪」

END




あとがき
今回の「Little Alice Stories2〜疾風の約束〜」は前回の「〜運命の初恋〜」の続編ではありませんが物語は繋がっています。
このシリーズはひとつひとつ単体で完結してお楽しみできますが、物語の時間では前回から物語は全て続いていきますので。
今回は前と違って甘い系風味よりもシリアス風味が強いです。はやてはもう初めの段階から「誰かを支える側」という印象が私には強くありました。
だからはやてには支える側ではなく、誰かに支えてもらう、甘えさせてあげるというコンセプトの元書き上げました。
無論その相手は恭也なわけで、今回は恭也×はやて。アニメでは一切関わっていなかった事が、
私的に凄く寂しかったという訳で書いたのではありません……多分、きっと、恐らくは。
全体がシリアスチックになると話が重過ぎるような気がして、ちょっとしたギャグを絡ませて和ませようとした企みは……
見事に失敗の予感。あくまでパクリではなくインスパイアだと私が信じたい。
物語のベースは魔法少女リリカルなのはA's公式コミック。なのではやてのシーンにはコミックの雰囲気を壊す事なく、
相手をなのはとフェイトではなく恭也へと変更。恭也とのフェイトやはやてのアニメでの絡みは個人的には見てみたかったです。
ただこれはとらハとのクロス小説なのでリリカル設定だけではなくとらハ設定も色々と盛り込んで見たつもりです。
久々にとらハ3や自分の持つとらハ関連設定資料集を見て感動して泣いてました。やっぱりいつ見ても名作は名作です。
ちなみに恭也がはやてに贈った最後の言葉「君は、優しい風になれ」は
皆様ご存知「元祖リリカルなのは」のEDテーマのワンフレーズ。はやてにもしっくりくる綺麗な言葉だと思いました。
さて今回の「Little Alice Stories」の選ばれし第二のヒロインははやてでした。
ん〜、都築先生の創られた関西弁のキャラはゆうひといいはやてといい、どうしてこんなに萌えるのだろうか。
可愛いすぎてぐんぐんとはやての魅力に引き込まれていきました。これも一つの都築先生のリリカルマジック♪
残るこのシリーズの最終話はいよいよあの子が登場。最後の第三のヒロインは果たして?





うぅ、いいお話だった。
美姫 「本当にね」
天神さん、素敵なお話をありがとうございます。
美姫 「ございます」
次で最後かと思うと寂しいけれど、それでも次が読みたい!
美姫 「次のお話も心待ちにしてますね」
ではでは。



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