特別企画

ロシア連邦軍参謀本部情報総局

GRU

Главное разведывательное управление Генерального штаба ВС (ГРУ)

 

 

 

 

 

 

今回は特別編です

舞「あれ? 今回はのっけから後書きなの?」

瑞希「いえ、今回は特別編とのことです」

舞「特別編?」

西川「なんでも、タハ乱暴の話によると『第2部の予告だけじゃちょっと寂しいだろうから、ここで和人達の敵であるGRUについて語っておこう』だとさ」

舞「ああ! だから後書きでもないのにこんな事やってるんだ」

かおる「いやこんな事って……一応、わたし達の物語の重要な存在なんだから、そんな風に言ったらタハ乱暴が拗ねるわよ?」

西川「おろ? もしかしてかおる知らないのか?」

かおる「え? 何が?」

愛歌「あの男ならもうとっくの昔に拗ねてるわ」

加菜「……うん。……もう…ずいぶん前から……」

舞「拗ねて、拗ねて、拗ねまくって、他人との人生観を180度違えちゃった人だからねぇ〜」

タハ乱暴「……お前らな、黙って聞いていれば好き勝手言いおってからに……」

愛歌「……あら、居たの?」

タハ乱暴「居たのってお前……まあ、いい。さて、気分を取り直して、今回は第一部と第二部の間の特別編です!」

舞「お兄ちゃん達の敵。そして救世主という妄執に囚われた人達……」

瑞希「和人さん達を苦しめる未だ謎の多い計画……『メサイア・プロジェクト』を支援し続ける方々……」

タハ乱暴(おお! 珍しく2人がノリノリで煽っている!!)

和人「ロシア連邦軍参謀情報総局……通称、GRU」

信一「かつてはソ連のKGBと並んで西側に恐れられてきたこの情報機関について、今回は軍事について興味のない方にも分かり易く説明するつもりだ」

西川「ま、書いているのがタハ乱暴だから無理だろうけどな」

タハ乱暴「西川ッ、仮にも親に向かってその暴言はだな……」

かおる「でも、事実でしょ?」

タハ乱暴「うぐ! は、反論できない自分が情けない……」

 

 

 

GRUとは?

瑞希「まず最初に、GRUとは一体どんな組織なのかについて説明したいと思います」

舞「GRUは旧ソビエト時代から存続している情報機関で、主に軍事情報なんかを収集している組織だよ。

情報機関っていうのは、国家に所属して、安全保障なんかの目的で国内外の情報を収集、分析する機関のこと諜報活動を行う機関の総称でもあるんだ」

和人「他にも、機関によっては、これに諜報活動や情報操作活動、軍事活動への参加など、非公式であったり、非合法の活動が含まれていることもある。

情報機関として有名なのはGRUの他にアメリカの米中央情報局(CIA)や、米国家安全保障局(NSA)、イギリスの英国情報局保安部(SS、MI5)、瑛国情報局秘密情報部(SIS、MI6)、旧ソ連のソ連国家保安委員会(KGB)などがあるな。あまり馴染みは薄いが、日本の内閣調査室も、歴とした情報機関だ」

愛歌「組織上は列国と同じで、参謀本部の一部署にすぎないけど、参謀系統を通した情報の収集の他にも、スパイ活動や諜報活動(SIGINT)、偵察衛星に、特殊部隊スペツナズの運用も管轄してるわ。…事実上、ソ連KGBに匹敵する巨大情報機関ね」

加菜「……さっき…舞…言ってた。……GRU…旧ソ連…から存続してる……」

信一「GRUの起源は第2次ロシア革命……つまり、11月革命の頃にまで遡る。軍事諜報部として正式にスタートしたのは1918年10月8日だが、その原型ともいえる『参謀本部総局将官補給第2課』は、前年の11月から機能を開始している」

かおる「GRUって組織は何度も名前を変えていて、今の名前に収まるまでにその数なんと22回」

西川「日頃から記憶力に関しては自身アリと豪語してるタハ乱暴でも、未だにソラでは全部で言えないって話だ」

 

 

 

 

GRUという組織

現在のGRUの機構

 

タハ乱暴「……コホンッ。まず、上の組織図を見てください。各局の具体的な説明は小難しい話になるから大雑把で済ませますが、これだけでもかなり巨大な組織であることが分かるでしょう」

和人「旧ソビエト時代に限れば、各局の内容は大体こんな感じだ。

 

第1局 - エージェント諜報。5課を有し、各課は国毎の班を有する。

第2局 - 前線情報

第3局 - アジア諸国

第4局 - アフリカ及び中東

第5局 - 作戦・戦術情報。通常の参謀系統は、この局が管轄する。スペツナズを管理する特殊情報班が存在する。

第6局 - SIGINT。特殊部隊OSNAZが存在する。

第7局 - NATO担当。6課を有する。

第8局 - 特別指定国に関する業務

第9局 - 軍事技術

第10局 - 軍事経済、軍事生産及び売却、経済保安

第11局 - 戦略核戦力

第12局

行政技術局

会計局

作戦技術局

暗号解読局

 

説明文の着いていない下から4局は名前そのまま。第12局に関してはソ連崩壊後の現在も情報が不足していて、はっきりとした内容は未だ不明となっている」

信一「まさに、謎の機関だな……

GRUが保有している教育施設としては、軍事外交アカデミーがある。スパイ、駐在武官、情報参謀が教育を受ける場所で、モスクワの地下鉄の「オクチャブリスコエ・ポーレ」駅の近くに位置している。ちなみに隠語で『音楽院』なんて呼ばれているな。

第1学部は「背広」、言い換えると、大使館「カバー」の下で支局で働く者を訓練している」

瑞希「第2学部では駐在武官職員を訓練していて、第3学部では軍管区本部に配置される作戦・戦術情報将校を訓練しています。軍事外交アカデミーからは毎年200人程度の卒業者が輩出され、情報機関のエリートとして活躍しているそうです」

和人「ちなみに、俺達が戦っているのはこのうちの第9局で、連中は『メサイア・プロジェクト』による古代種のクローン量産化を企んでいるんだ」

 

 

 

リヒャルト・ゾルゲ

信一「……さてここで、GRU関連である人物の事を紹介しよう」

舞「その人の名前はリヒャルト・ゾルゲ! 軍事に興味がない人でも、聞いたことぐらいあるんじゃないかな?」

瑞希「あの有名な『ゾルゲ事件』の首謀者で、2003年の7月30日に、『その時歴史は動いた』でも紹介されたあのリヒャルト・ゾルゲは、実はGRU管轄のスパイだったんです」

かおる「じゃあここからは、しばらくそのリヒャルト・ゾルゲについて紹介していくわね。

リヒャルト・ゾルゲが生まれたのは1895年10月4日。9人兄弟の1人としてソ連邦・アゼルバイジャン共和国の首都・バクーで生まれたの。彼の叔父はカール・マルクスの秘書で、3歳の時に家族と一緒にベルリンへと移住したわ」

西川「1914年10月に、ゾルゲは第一次世界大戦にドイツ陸軍の志願兵として参戦した。負傷して、戦線から退いたゾルゲは、入院中に社会主義思想と出会う。19年にハンブルク大学で政治学の博士号を取得して、その後ドイツ共産党へ入党した。21年にドイツへ戻って結婚したけど、3年後には党での活動が評価されてコミンテルン本部からスカウト。ソ連共産党、さらに労農赤軍本部第4局(後のGRU)に籍を移して、ソ連の首都モスクワへ移住する……と、まあここまでが、『ゾルゲ事件』を起こす以前の経歴だな」

愛歌「『ゾルゲ事件』っていうのは、リヒャルト・ゾルゲが戦前の日本で行ったスパイ事件の事を言うの。

1930年、ドイツの新聞社『フランクフルター・ツァイトゥング』紙の特派員というカバー(スパイ活動の際の仮の職業)を与えられて上海に派遣されたゾルゲは、現地で特派員としての仕事を通じて、当時中国で活躍していたアメリカ人ジャーナリスト・アグネス・スメドレーや、当時朝日新聞記者だった尾崎秀実とも知り合ったわ。32年1月に上海事変を報告した後は、同年12月にモスクワに戻って翌年まで目立った活動を休止。

1933年9月6日、『フランクフルター・ツァイトゥング』紙の東京特派員として、事件の舞台となる日本・横浜へ派遣されたの。その目的は、日本やドイツの動きをソ連に送ることだったのよ」

 

 

 

ゾルゲ事件

和人「ゾルゲが日本国内に構築したスパイ網は、実に多数の人種から構築されていた。

上海時代に知り合った近衛文麿内閣のブレーンで、この頃は南満州鉄道嘱託職員をしていた尾崎秀実や、フランスのアヴァス通信社(現在のAFP通信社)の特派員で、ゾルゲの特派員仲間でもあったユーゴスラビア人のブランコ・ド・ヴーケリッチ。元老、西園寺公望の孫で、尾崎と同じく近衛内閣のブレーンの一人であった西園寺公一。洋画家で、アメリカ共産党員の宮城与徳。ドイツ人技師のマックス・クラウゼンとその妻アンナ・クラウゼンなどが、その中心メンバーだ」

信一「当時の日本におけるドイツ人社会で、日本通かつ熱烈なナチス党員として知られるようになっていたゾルゲは、オイゲン・オットー駐日ドイツ大使の信頼を得、最終的には大使館付の私設情報官という地位を獲得した。ゾルゲはその立場を利用して、ドイツによるソ連侵略作戦『バルバロッサ作戦』の、正確な開戦日時(1941年6月22日開戦)を含めた詳細な情報を事前に入手したんだが、ゾルゲのことを2重スパイではないかと疑っていたヨセフ・スターリンはその情報を無視。結果、ドイツ軍お得意の電撃戦に翻弄されちまったソ連軍は緒戦で大敗。首都モスクワまで数百キロまで迫られるという状況に陥ってしまったんだ

……もし、ソ連に冬将軍が到来して、ドイツ軍の足が止まらなかったら……冷戦なんてものは存在しなかったかもしれねぇな」

瑞希「そんな状況を受けて、近衛内閣のブレーンで、政権中枢や軍内部に影響力を持つ尾崎は、日本軍の矛先を、同盟国・ドイツが求めていたソ連への進攻ではなく、仏印や英領マレー、フィリピンなどの南方へ向けさせるための工作を開始しました彼の工作がどれほど決定に影響したか定説がありませんが、(日本軍部は、独ソ戦開戦に先立つ1941年4月30日に日ソ中立条約が締結されていた上、南方資源確保の意味もあってソ連との開戦には消極的であったといわれている)、とにかく、尾崎の思惑通りに、1941年9月6日に行われた御前会議で日本軍は、南方及び米国への進攻を軸とする『帝国国策遂行要領』を決定したのです」

舞「当然この情報を事前に手に入れたゾルゲは、それを直ちにソ連本国へ伝えたんだ。おかけで、ソ連軍は圧倒的戦力を独ソ戦(ロシアでは大祖国戦争と呼ばれる)に集中することができたから、その直後のスターリングラード攻防戦でドイツ軍を撃破、最終的に1945年5月に独ソ戦に勝ったんだよ」

タハ乱暴「極東ソ連軍のジェーコフ将軍が戦線に参加したからな〜。あのままジェーコフ将軍が対日対策で極東に留まり続けてたら、ソ連は多分負けてたな」

和人「これらの情報は、クーリエを使って秘密裏にソ連へ送られていただけでなく、クラウゼンが無線機を使いソ連極東部にある中継地に向けても送信されていた。特高は早いうちから怪しい無線電波が東京市内(当時東京は市であった)よりソ連や中国方面に向けて送信されていることを突き止めていたが、クラウゼンが送信する場所をこまめに変更していた上、暗号自体を解読することが出来なかったため、一味が逮捕されるまでその発信源を掴む事は出来なかった」

信一「ゾルゲ事件が発覚し、ゾルゲや尾崎達のグループが一斉逮捕されたのは1941年10月の事だ。太平洋戦争の、まさに開始直前だな。

グループはスパイ容疑で警視庁特高一課と同外事課によって一斉に逮捕された。逮捕されるまでの経緯としちゃあ、まず1941年6月に日本共産党員であった伊藤律が逮捕され、アメリカ共産党員で当時日本に住んでいた北林トモの名を自供、さらにその北林がアメリカ共産党の同志、宮城の名を自供したことがきっかけであったと言われている」

加菜「……グループの逮捕後…尾崎の友人…犬養健。……ゾルゲの記者仲間…ロベール・ギラン…他…数百人……取り調べ…受けた……」

和人「補足すると、犬養健は衆議院議員かつ汪兆銘・南京国民政府の顧問も勤めていて……」

信一「ロベール・ギランはヴーケリッチのアヴァス通信社の同僚であったフランス人の記者だ。

取調べを受けた彼らは、ゾルゲ本人が当時の同盟国であるドイツ人で、しかもオットー大使と親しい事実や、前年にイギリスのスパイの疑惑で逮捕された英国・ロイター通信社の特派員のMJ・コックスが、特高による取調べ中に飛び降り自殺したこともあって、特に外国人に対する取調べは慎重に行われた。

それと、ゾルゲの個人的な友人で、ゾルゲにドイツ大使館付の私設情報官という地位まで与えていたオットー大使は、ゾルゲが逮捕された直後から、友邦国民に対する不当逮捕だとして、様々な外交ルートを使ってゾルゲを釈放するよう日本政府に対して強く求めた。しかし、逮捕されてまもなくゾルゲは自分がコミンテルンのスパイであることを自供、立場を失ったオットーはその後大使を解任され日本を去っちまったんだ」

愛歌「裏切られたオットーにしてはたまったものじゃないわね。信頼していた人に裏切られたばかりか、社会的な信用や地位も失ったんだからね……。

万国共通の認識として、スパイに対する処遇の仕方には最低のモラルしか求められないの。捕虜虐待の禁止を定めた戦争法規ですら、スパイの処刑は認められているんだから。

ゾルゲ達に下された処遇も辛いものだったわ。1942年に国防保安法、治安維持法違反などで起訴された彼らは、一審によって刑が確定。それぞれに1年半・執行猶予2年(西園寺)から死刑(ゾルゲ、尾崎)までの判決が言い渡されたわ」

西川「ゾルゲや尾崎達は巣鴨拘置所(戦後、GHQにより巣鴨プリズンになる)に拘留されて、日本、ドイツ両国の敗色が濃厚となってきた1944年11月7日のロシア革命記念日に死刑が執行された。翌年の1月にはヴーケリッチも北海道の網走刑務所で獄死したけれど、クラウゼン夫婦は戦後連合軍によって釈放されて、生きて故郷の東ドイツに戻ることができたんだ」

タハ乱暴「スパイは、戦争法規が定めた捕虜の権利を持たない。だから、拷問されても、銃殺されても文句は言えない。元々スパイ活動は卑しい任務と考えられてきたし、軍事的に彼らの活動が与える影響とは裏腹に、彼らの人生は報われないケースの方が断然多い。

そうした意味で、ある意味ゾルゲは報われている人間だった」

かおる「ゾルゲが逮捕されてから、ゾルゲ自身がコミンテルンのスパイだってことを自供しても、ソ連政府は頑としてゾルゲが自分達のスパイであることを否定して、その後もソ連諜報史からはゾルゲの存在は完全に抹消されていたの。

けれどその後、反スターリン路線を掲げるニキータ・フルシチョフがソ連の指導者として君臨していた1964年、ゾルゲに対して『ソ連邦英雄勲章』が授与され、死後20年を経て、ようやくその功績が認知されたんだ」

タハ乱暴「スパイの組織的運用が確立されたのは第一次世界大戦中で、第二次世界大戦後、その重要性は次第に認知されてきた。アメリカでは1942年にCOI(情報統制局)が創設され、この組織はすぐにOSS(戦略業務部)となって、戦後CIAへと発展していった。

ゾルゲ達は現代の特殊部隊と同じで、まさに時代に翻弄されたスパイだったんだ」

 

 

 

ロシア最強の精鋭

北斗「最後に、GRU第5局管轄の部隊……スペツナズについて説明しよう」

タハ乱暴「おおう! 北斗、居たのか!?」

北斗「失礼なヤツだな。さっきからずっと居たぞ?」

タハ乱暴「き、気がつかなかった……」

北斗「当然だ。気配を消し、声も殺していたからな」

和人「あ、闇舞さん。第十五章での空中戦、お疲れ様でした」

北斗「和人君も。通算5回の戦闘、お疲れ」

和人「いや、本当疲れましたよ〜」

信一「いくらスタミナが自慢の『古代種』でもあんなに密度の高い戦いばっかだとなぁ。ちなみに俺は通算3回」

かおる「へぇ、戦闘回数は叶君の方が多いんだ」

和人「まぁね。一応、主人公だし」

信一「でも、俺には負けた」

和人「いやいや、あれは得物がベレッタだったから。最初からレミントンM700やH&K・PSG1(どちらもスナイパーライフル)が使えれば……」

信一「いやいやいやいや、俺だって天候さえ無事だったらM60(マシンガン)を抱えてこれただろうし」

和人「いやいやいやいやいやいや……」

信一「いやいやいやいやいやいやいやいや……」

和人「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……」

信一「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……」

タハ乱暴「この負けず嫌いども! さっさと説明をしろ!」

和人「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……」

信一「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや……」

タハ乱暴「む、息子達よ、たまには親の言う事を聞いておくれ(泣)」

北斗「スペツナズとはロシアの特殊部隊のことで、ロシア最強の精鋭部隊だ。スペツナズという名称はロシア語で“特殊部隊”を意味し、大きく分けて旧KGB系、内務省系に分かれている。旧ソ連時代においては西側諸国から『最強』と恐れられていたほどの部隊だ」

タハ乱暴「おおう! 北斗、お前……」

北斗「総員数2万5千人までの24個破壊工作・襲撃部隊は、訓練水準と装備に関しては空挺軍や『宮廷部隊』をはるかに上回り、軍のエリートを構成している」

タハ乱暴「お前だけが俺の言うことを聞いてくれて……ううううう……エエ子やぁ、ウチの北斗はエエ子やぁ……」

北斗「コラ、タハ乱暴! 抱き付くな!! ええい、暑苦しい!!!」

瑞希「GRUとスペツナズの関係は、いわば生徒と教師、もしくは親分子分の関係です」

舞「スペツナズ旅団は、諜報要員の養成の場で、軍事外交アカデミーの聴講生候補者は大尉以上の階級で、5〜7年スペツナズで勤務しなきゃならないの。伝統的に、GRUとKGB(現SVR)支局の間の員数比率は、『純粋な諜報』に有利にするために、6:1ってなってるんだ」

加菜「……親分子分の関係…スペツナズ…作戦統制権…GRUが持ってる。……第二次世界大戦から…ずっと変わってない…」

北斗「唯一の例外としては、主にチェチェンでの任務に就く第8スペツナズ旅団がある。1996年に新設されたばかりの部隊で、最近の物でも文献によっては掲載されていない場合も多い。ちなみに、今回紹介するスペツナズに関しては、この第8旅団は含めていない。

スペツナズ隊員個人に求められる能力は、各種兵器の取り扱い、格闘技、通信、爆破、テロリズム、暗殺、高い言語能力など、極めて多岐にわたる。そんなスペツナズ隊員に鍛え抜かれたアカデミーのエリート達は、現場の第一線で働く頃にはそれこそジェームズ・ボンドのような活躍が可能だ。

――では、今回は最後にそのスペツナズ旅団について紹介しよう」

 

 

 

スペツナズ旅団

和人「今日、スペツナズは7個旅団で構成され、各軍管区に配属されている」

信一「個々の部隊には師団レベルでラズヴェドチキ(パラシュート突撃兵)が配属されている。このラズヴェドチキは長距離偵察警戒中隊1個と、空挺作戦中隊1個で構成され、文字通り特殊部隊の十八番……パラシュート降下のエキスパート集団だ」

愛歌「他に連隊レベルではレイェドヴィキ(近衛兵)が、そして11名で構成されるヴィェソトニキ(精鋭特殊部隊)は、他の部隊と比較しても高い水準のために訓練され、第103、第104、第105空挺師団の大隊レベルに配属されているわ」

北斗「――と、ここであまり軍事に詳しくない人のために少し注訳をしよう。

軍隊……特に陸軍は、基本的に分隊、小隊、中隊、大隊、連隊……という具合に、様々な単位に分別されている。ここで、少しそうした単位について説明しておこう」

かおる「まず、陸軍の最小指揮単位として挙げられるのが『分隊』。10名前後で構成される部隊で、旧陸軍では伍長クラスが指揮を執っていたわ。

その上のクラスが小隊で、3〜4個の分隊で構成されているの。曹長なんかの下士官か、少尉なんかの下級将校が指揮を執っていて、これは各国の陸軍でも変わらないみたいね」

西川「3〜4個の小隊が集まって構成されるのが中中隊だ。指揮官は中尉か大尉で、戦史を読んでみると、少尉が指揮をすることもあったみたいだな。

……んで、例の如くこの中隊が3〜4個集まって構成されるのが大隊だ。少佐か、中佐クラスの仕官が指揮する。この大隊は戦術単位といわれている。理由は、1人の指揮官が直接戦闘を指揮できる最大の部隊だから。ま、普通の人間には一度に数千、数万規模の人間を100%自分の考え通りに動かすなんて無理な話だよな」

北斗「歩兵大隊に限ってだが、大隊の上にはさらに連隊がある。通常、3〜4個大隊から構成され、主に大佐が指揮する。単一の兵種で固有の編成を持つ最大規模の部隊だが、西欧では機動的な部隊運用のために連隊制度は廃止している。まぁ、軍縮が進む今の世の中、連隊規模の部隊をいくつも抱えられる国というのも珍しいから、それもまた理由の一端でもあるんだがな」

瑞希「連隊以上の単位となると、諸兵種の連合部隊となります。連隊のすぐ上は旅団ですが、旅団を置いていない国もあります。この辺りになると、諸々の事情から部隊を維持できない国も多数出てきます。陸上自衛隊には1個歩兵師団につき3個、または2個の歩兵旅団が配備されています」

タハ乱暴「あと、普段は旅団司令部だけが存在し、作戦に応じて数個大隊を与えている国もあります。日本では1877年の西南戦争で初めて旅団が編成、1885年にようやく制度化されました。指揮を執るのは少将か准将ですが、准将という階級自体が存在しない国も少なくありません」

舞「旅団がない国は多いけど、その代わりにほとんどの国にあるのが師団だよ。師団っていうのは歩兵、戦車、砲兵なんかの戦闘兵種を基幹として、それらを支援する工兵や後方支援担当の兵種も有する基本的な作戦部隊のことなの」

信一「今ではごく当たり前の存在になっているが、師団の歴史は比較的新しい。最初に作ったのはナポレオン・ボナパルトで、18世紀末のことだ」

和人「師団編成によってナポレオンの軍隊は単一の兵種では実現できなかった独立した作戦を実施できるようになった。それだけに人数や兵種はケース・バイ・ケースで、1万人ぐらいの師団もあれば、2万5千人の師団もある。師団長には少将が就任するのが一般的だけど、やっぱり戦史を読み解くと例外はあるみたいだな」

北斗「数個師団で編成されるのが軍団だ。中将ないし大将が軍団長となって統帥する。欧米諸国では軍団がなによりも重視される。軍団は純粋な戦闘単位で、人事、補給などの管理は行わない。それらの事務は上級の軍司令部が取り仕切ることになる。

さらに数個の軍団によって構成されるのが、軍。何個軍団であるかは状況に応じて臨機応変に変化するから一概に『これだ!』とは、言えないな。

“軍”司令部は軍団司令部と違って人事や補給についての管理も行う。軍司令部の指揮官は軍司令官で、ここで初めて司令官と呼ばれるようになる。師団“長”や軍団“長”とは、格が違うわけだな。軍司令官は中将、もしくは大将が就任する」

タハ乱暴「軍がいくつか集まって、方面軍や軍集団が編成されます。しかし、これは戦況に応じて用意されるものなので、常備軍ではありません。文字通りの大部隊で、指揮は大将、時には元帥が執ります。

……軍事にあまり興味のない方でも、少しは理解していただけたでしょうか?」

北斗「――では、話をスペツナズに戻そうか。スペツナズ旅団は、“旅団”と呼称されてはいるものの、特殊部隊という性質上、小規模な部隊となっている」

和人「格旅団の兵力が1500人を越えることはなく、実質的には各国の連隊よりも少ないぐらいだ。3個の小規模大隊と本部、通信、情報、支援中隊で構成されている」

信一「スペツナズの高い能力を維持するための訓練内容は、共産主義が崩壊してからは特に範囲、技量の両面で増大している。これは、相次ぐテロなんかに対しては、通常の部隊じゃ対処が難しく、必然的に国民や政府がスペツナズばっかりを頼って、それに応じなけりゃならないからこそ過酷な訓練となっている」

かおる「さっき北斗さんが言ったように、スペツナズに求められる能力は年々増大しているの。最近だと、兵器の操作、国内外の武器への精通、射撃、肉体管理、追跡、偵察、偽装、監視技術なんかを訓練しているわね」

西川「これらの他にも、サバイバル訓練、砂漠・山岳・寒冷地戦闘、徒手格闘、破壊工作、爆発物、捕虜への尋問、戦時捕虜救出、語学訓練、HALO(高々度降下低開傘)/HAHO(高々度降下高開傘)を含んだパラシュート降下、ヘリボーン侵入、戦闘泳法、対暴動訓練なんかも実施している」

北斗「スペツナズの特徴としては、特に他の部隊よりも装備が充実しているという事が挙げられる。折り畳みストック採用のAK−74S、5.45mm自動拳銃のPSM拳銃などの特殊部隊用装備はもとより、9K38イグラ携帯式ミサイル・システム、MDB−3歩兵戦闘装甲車などの兵器、そして最強の兵装として『空飛ぶ狂犬』ことMi−24DハインドD。AH−1ヒュイコブラを原型に開発されたと言われるこの攻撃ヘリは、特殊作戦時にスペツナズの潜入、近接火力支援双方を行うために配備されている」

 

 

 

……んで、これからどうするんだ?

タハ乱暴「――以上が、和人達が戦う強力な敵……GRUについての大まかな解説です」

信一「俺達はこの巨大な組織と日夜戦い、世界の平和のために……」

舞「いや、吉田先輩それ作品が違うから」

和人「叶和人は『古代種』である。彼を狙うGRUは世界征服を企む……」

瑞希「和人さん、それも作品が違います」

北斗「叶和人は悪魔の組織GRUに愛する娘を殺され……」

かおる「北斗さん、ソレ一番本筋から離れてますから……」

西川「…っていうかよ、いつから叶のヤツは娘なんて……」

愛歌「母親は誰かしらね」

和人「いや、皆俺に娘がいることはもう決定済みなの?」

かおる「だって、叶君って私生活謎だらけだし〜」

西川「叶の周りって女ばっかしだしな〜」

信一「ああ。本人もわりと顔が良いからモテるしな」

和人「……お前の顔で言われると嫌味に聞こえるぞ…」

信一「ん? なんでだよ?」

和人「……はあ。もう、いいや」

瑞希「――ところで作者さん、次回から第2部ということですが……」

舞「舞達の出番ってあるの?」

タハ乱暴「…………さ〜て、そろそろ仕事やろうかなぁ〜」

かおる「ちょ、ちょっと待ちなさい! なに!? 今の間と最後の白々しい台詞は…」

西川「も、もしかして俺達の出番……ナシ?」

タハ乱暴「HAHAHAHAHAHA! そんなわけないじゃないか。俺は子供達みんなを愛してるんだから……」

和人「うわ〜…嘘臭い笑顔」

北斗「和人、信一」

2人「はい、なんですか?」

北斗「今、第2部の台本が届いたぞ。次回までにちゃんと読んでおくように」

和人「了解です」

舞「ね、ねぇ、舞達の分は!?」

北斗「む……ないみたいだな」

愛歌「……タハ乱暴、今回もスプラッタ決定ね」

タハ乱暴「ちょ、ちょっと待てェ! だ、第2部は『過去編』だから、皆の出番がないのは進行上必然的なもので……」

瑞希「問答無用です!」

タハ乱暴「うぎゃあああああああああ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 

 

 

 

 





頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ