『選ばれし黒衣の救世主』










授業が終わり、いつもの如く救世主候補たちは一カ所に集まる。
場所は恭也と大河が座っていた席の周り。なぜかこの頃、授業が終わるとこういうふうに集まるようになってしまったのだ。

「ねえ、聞いた?」

唐突にリリィが皆にそんなことを聞く。

「聞いたって何を?」
「実はね、食堂に幽霊が出たって話なのよ」

その言葉に、恭也は思わず腕を組む。

「それはまた、命知らずな幽霊もいたものだな」

食堂には耕介がいる。
何しろ耕介は退魔士だ。元の世界ではその幽霊を鎮める立場にいるのである。言葉は悪いが、その彼の縄張りとも言える食堂に現れるとは、と。
だが恭也の言う意味がわからない一同は首を傾げている。

「えっとおにーちゃん、幽霊はもう命はないんじゃ」

恭也と同じくそのへんのことを知っているなのはは思わず突っ込む。
まあ何にしろ、耕介がすでに鎮めていそうだ。

「ふむ、いつのことなんだ?」
「今日の深夜よ。ダリア先生が食堂に食べ物を貰いに行ったらってことらしいから」

リリィの発言に、大河は手を突き出す。

「いや待て、深夜って、冷蔵庫の鍵は料理長が持ってるんだろ?」
「どうも自作したらしいわよ。それでちょくちょく中身を持ち出してたみたい」

呆れた感じのリリィの声。だがそれは他の者たちも一緒で、呆れたり、苦笑したりの反応を見せる。
その中で恭也がすぐに元に戻った。

「深夜か」

その幽霊がいつから現れ始めたのかはわからないが、少なくとも昨日の……いや、今日というべきか……深夜、耕介が部屋を出て行くことはなかった。
ということは、まだ鎮めていないのか。それとも現れたのが、ダリアが見たという時なのか。
それに何かあったなら、耕介も恭也に言ってくるだろう。

「まったく、ブラックパピヨンといい、ダリア先生といい、どうしてこの学園にはこう手癖が悪いのが集まってんのかね」
「ご、ごめんなさい」

大河の言葉になぜか謝るベリオ。

「ベリオさん?」

恭也やなのはは直接そのブラックパピオンのことは知らないが、噂としては聞いている。だが、なぜ彼女が謝るのだろう。
不思議そうにベリオを見る恭也となのは……だけでなく、大河以外の面々。
だが、そこで慌てたように大河が再び口を開く。

「そ、それで、どうしたって?」

その言葉によってリリィが説明を開始するのだが、聞いてみると、どちらかというとそれは骸骨のアンデットモンスターのようにしか聞こえない。
未亜とベリオはそれなりに怖がっていたようだが、なのはを含めてそれ以外の者たちは別段いつも通りの反応だった。

「もう慣れたな」
「確かになあ。腐るほど禁書庫とかで戦ったし。
ってか、今元の世界に戻ってホラーものの映画とかビデオとか見ても、絶対おもしろいとも恐いとも思えねぇ」
「……それは確かにな」

どこかため息混じりの恭也と大河。
そのとき、

「む、大河、後ろ……」
「師匠、後ろに……」
「おいおい、だからもうそういうのは恐いとは思えないって……」

恭也とカエデがあることに気付き大河に注意を促そうとしたのだが、彼は驚かそうとしていると取ったようだ。

「そう言ってくれる勇者が現れるのを待ってたのよぉん」
「のわあああああああ!!」

いきなり大河の背中に柔らかい何かが触れる。それに大河が叫びを上げ、さらにその叫び声で恭也以外の全員が驚きの声を上げた。
そこにいたのはダリアだった。どうも恭也とカエデ以外は気付いていなかったらしい。おそろしい穏行である。

この後、結局救世主クラスの者たちは、そのアンデットモンスターの討伐というミッションをダリアから受けることになる。理由は彼女が夜中につまみ食いができなくなるからという何とも理不尽なものだったが、押し切られる形になってしまったのだった。






第三十七章 動き出す者たち





まだダリアから受けたミッションを行うまでしばらくの時間があり、他の者たちが休憩している間、恭也は食堂に向かっていた。
時間的に、すでに食堂は閉店作業を終えた所だろう。
少し電気を落とされ、いつものより暗くなっている食堂。
そこのテーブルの一つに、耕介と知佳、そしてなのはがまだ仕事着のまま座っていた。さらにはなのはが仕事の後に連れてきたのか、久遠と十六夜までいた。
恭也は知佳に手招きされ、同じ所に座る。

「なのはちゃんから聞いたよ」

前置きなく耕介がそう言った。
この食堂にアンデットが現れたということ。食堂の仕事をこなすと同時に、なのはが伝えていたのだろう。

「気づきませんでしたか?」
「うん。それらしい霊力や妖気、波動も感じなかったから」
「私もそう言ったものは感じられませんでした」
「くおんも……」

耕介と十六夜、久遠の言葉に、恭也となのは、知佳は少し驚いた表情を見せる。
耕介と久遠もそうだが、十六夜も自身が魂の存在というだけに、こういったものにはひどく敏感だ。その三人が気付けないとは。

「やっぱり霊障とかそういったものとは違うものなのかな?」

知佳が少し考えながらも呟くと、耕介も難しい表情になる。

「どうだろうな、妖怪ともまた違うようだけど、ただ……」
「ただ?」

言葉を切る耕介に、なのはが聞き返すと十六夜の方が続けた。

「あんでっと、というのが元が生き物で、死した後に動くというのはやはり霊障と言っていいものです。ですが、それにはやはり生前に残した何らかの強い想いが必要なはずなのです」

残念した者の想い……言ってしまえば、やり残しや怨念と言っていいもの。

「だけど、それならお義兄ちゃんたちが気付かないわけがない」

その想いを霊力や妖気として、死した身体を動かすというのなら、やはり耕介たちが気づけないわけがないのだ。言ってしまえば、身体があるかないかの違いにすぎないのだから。
この辺りは世界が違うとはいえ、そう変化があるとは思えない。

「ああ。それに日本は基本的に火葬だから、死体が動くなんていうのは俺も見たことがないんだ。遺骨も細かくなって骨壺に入れられるわけだから、それが動くこともない。
他の国には似たような事例があるけど、実際に見たわけじゃないから、それと同じなのかもちょっと俺もわからない」
「私もです。申し訳ありません、お役に立てなくて」

十六夜の言葉に全員が首を振る。別に彼女が謝ることではない。
だがある意味、十六夜が一番そういったことに関しての知識を持っているわけだから、彼女がわからないとなると、他の者たちもわからないということだ。

「……あの、例えばその、そういうのを生きた人が操っているというのはないんでしょうか?」
「生きた人?」

なのはの少し考えながらの言葉を聞いて、恭也は首を傾げた。

「うん。ゲームとかそういうマンガで出てくるんだけど、ネクロマンサーみたいな感じの。ゾンビとか骸骨を操る人なの」

恭也の場合は、そのゲームやマンガの内容や知識が頭にないため、さらに首を捻った。
ただこういう世界だ。そういうのがいても何もおかしくはないし、元の世界にいたとしても恭也は驚かないだろうが。

「ああ、確かに似たようなことができる人は俺たちの世界にもいるけど」
「正確には死した肉体を操るのではなく、魂を降ろす方々ですが」

実際にいるらしい。
もはや恭也、知佳、なのはは驚くこともない。何事も慣れだ。

「私もそのへんを調べておくね」

知佳は何かを考えながらも告げる。
この世界のみで使われる力であったりとか、他の世界で使われていた力とかなら知佳が調べられるかもしれない。
今回のことには間に合わないだろうが、色々とわかることがあるかもしれないと、他の者たちも頷いた。

「それで恭也君、これからそのアンデットを退治するんだろ?」
「はい」
「俺たちも行っていいかい?」

耕介は真剣な表情でそう言ってくる。

「俺の力がバレてしまうかもしれないけど……でも、やっぱり放っておけないんだ、退魔士として」
「耕介さん」
「恭也君たちのことを信用していないわけじゃない。むしろ俺なんか必要ないかもって思ってるけど、でもやっぱりさ、こういう事件だとじっとしていられないんだ。何より、俺はこの学園の生徒たちも大切に思ってる。俺の力が役立つかもしれない時に、それを使えないのはさ」
「恭也様、ダメでしょうか?」

十六夜も続けて言ってくる。
二人が来る。つまりそれはアンデットと戦うと言っているのだ。自分たちの戦闘能力を隠さずに使うと。
恭也たちははっきり言ってしまえば、各方面から疑われている。そのため耕介たちは目立たないようにしていたのだ。それを止めると言っている。
だが、

「お願いします」

恭也は何の迷いもなく言った。
なぜなら恭也も耕介の気持ちがわかるから。
自分の行動範囲に危険があり、じっととしていられないという気持ちが。何より対抗手段があるというのに、自分の大切な人たちが巻き込まれるかもしれないのに、その力を眠らせておくことなどできないという思いがわかる。

「骸骨なら物理的に存在してるから、私の力も効くね」
「知佳さん?」
「私も行くよ」
「いえ、ですがそれは……」

知佳の言葉には恭也も言い淀む。
別に知佳のことや、その力を信じていないからとかではなく、いきなり知佳の力まで晒してしまっていいものかと考えたのだ。

「この場合、私もばらしちゃった方がいいと思うから」
「そうですか?」
「うん。警戒を強められると思うけど、むしろその方がいい。言い方は悪いけど、私たちにはあなたたちに対抗する手段があるっていう脅しになる。お義兄ちゃんだけの力だけバラしたら、下手すると実力行使でてこられかねないから。だから、私たち『全員』が戦えるってことを示さないと」
「なるほど、もし実力行使で出られたら、最初に狙われるのは知佳さんと久遠でしょうからね」

なのはも危なかったかもしれないが、今は召喚器を所持しているため、それほどの心配はない。
すると有事の際に狙われるは二人になってしまう。

「そういうこと。まあ、クレアちゃんにも多少圧力をかけてもらえば、今回はそれで乗り切れると思うから。だから、今回は私と久遠ちゃんも思いっきり戦う。あんまり戦うのは好きじゃないけどね」

そう言って知佳は久遠を見ると、久遠は力強く頷いた。

「くおん、おもいっきりたたかう」
「いや、久遠は適度にな。特に大人にはなるなよ」
「そう……なの?」
「ああ。さすがにお前に本気になられたら校舎などが壊れかねん」

この中で最強の破壊力を持つ者は久遠なのだ。その総合的な力でも救世主候補たちすら上回る。
恭也たちの中でも、単純に対抗できるとすれば耕介だけである。恭也でも相性的に久遠には敵わないし、耕介とて何とか対抗できるだけで最終的には敗北するだろう。
その久遠に全力などになられたら、本当に辺りが全て破壊されかねない。
久遠自身はそんなことはよくわからないのだろう、頭を撫でながらの恭也の言うことを聞いて、ニコニコと頷いているだけだ。
そんな姿に苦笑したあと、知佳は再び真剣な表情をとる。

「私たちの力のことはある程度話さなくちゃいけなくなるけど」

そのへんは仕方がないと、恭也たちは同時に頷いた。




集合場所である寮の前まで恭也たちが行くと、すでに他の救世主候補たちは集まっていた。
大河などは眠いのか欠伸をして、隣にいた未亜に小言を言われている。
彼らの元に恭也たちは近づくと、カエデが一番に気付き、その後リリィも恭也たちの方を向いた。

「恭也、なのは、何してのよ、遅いじゃない……って」
「知佳殿、耕介殿? それにキツネも」

恭也となのはの後ろにいた耕介たちの存在な気づき、リリィたちは首を傾げる。

「もしかして知佳さん、夜食持ってきてくれたりした!?」

知佳の存在を認めて、大河が飛びつくように言う。
あのマナ消失事件の時、学園から出発した際に、知佳が……正確には耕介も一緒に……差し入れを持ってきてくれたことを思い出しての言葉だろう。
それを他の者たちも思い出したのか、ああという感じで頷いている。
だが知佳は苦笑して首を振った。

「ごめんね、今日は持ってきてないんだ」
「じゃあ激励? 激励ならばまずその身体で……ぶぼっ!」

本当に知佳へと飛びつきそうになった大河に未亜たち全員が一撃を入れ、彼は思いっきり地面へとダイブした。
それにやはり乾いた笑みを見せて顔を引きつらせる耕介、知佳、なのは。恭也は諦め気味にため息。久遠は地面でピクピクしている大河の頭をポフポフと前足で叩いていた。

「えと、俺たちも今回の件、手伝いに来たんだよ」
『え?』

耕介の言葉に、地に伏せていた大河を含めて救世主候補たち全員が目を丸くさせた。
それも当然だろう。大河たちも今回の件のことを、恭也に耕介たちが聞いたということは予想がつく。だが、敵はモンスターだ。耕介たちがこの学園の生徒だというのならまだわかるが。
無論、恭也という存在を知ってしまった以上、召喚器がないからどうとか言う気は彼らにもない。ただ二人はコックと調理補助兼ウェイトレスでしかないのだ。
それに端から見て、二人が強いとは全員があまり思えないのだ。耕介はまだ身体が大きいのでわかるが、知佳はどう見ても華奢な女性だ。

「きょ、恭也さん、危ないよ」

自分が召喚器なしだと、この中ではなのはと並び普通の少女でしかないからこそ、未亜はそう言った。

「大丈夫だよ、私たちこれでも荒事にはそれなりに慣れてるんだから」

恭也に変わり、知佳がそう答える。

「でも……」

ベリオもあまり乗り気ではないのか、何とか思いとどまらせようとしていた。
そこで恭也は少し考えて口を開く。

「ふむ、ならばこう言おう、耕介さんも知佳さんも俺より強い」
『は?』

恭也の言葉に、救世主候補たちは目を先ほど以上に大きく開いて硬直した。ただし、それは知佳と耕介も同じである。
恭也は戦闘関係では過大に誇張することもない。自分と相手の力量ぐらい考えられなければ、とうの昔に死んでいた。
そういう恭也の考えを救世主候補たちも理解している。なので、恭也は事実を言ったということになってしまう。
恭也となのは、久遠以外の全員が硬直していた中で、まず真っ先に正気を取り戻したのは耕介と知佳だった。

「「いやいやいや!」」

二人は手をパタパタと振って同時にそんなことを言う。さすがは義兄妹、反応が一緒だ。

「どうしたんですか?」
「俺、さすがに恭也君に勝てる気はしないから」
「私もだよぉ」
「そんなことはないと思いますが」

全てを考えれば恭也としては、普通の答えだった。もちろんそう簡単に負けるつもりはないが。

「俺、まだ剣だけで恭也君に勝ったことないんだけど。その上膝が治ってさらにとんでもなくなったっていうのに」

恭也に剣を教わっていた時代から、恭也に勝てたことがなかった耕介はそう言う。

「耕介さんも知佳さんも『全力』になれば俺より上でしょう」

霊力と能力のことを示唆したのだが、耕介はそれでも無理だと言う。

「うー、確かに私もお義兄ちゃんも状況と場所次第なら勝てるかもしれないけど」

恭也が霊力を使えるようになったとはいえ、彼はそれを奇手や遠距離の迎撃ぐらいにしか使わないため、あまり戦い方は変わっていない。耕介と比べれば練度も威力も、制御力も、それによる戦術も、霊力に関することは霊力量以外では全て下だ。なので知佳たちも勝てる要素はいくらでもある。
だが耕介と知佳は苦笑してお互いを見たあと、再び恭也の方を向く。

「なんか恭也君に勝った自分って言うのが想像できないんだよ」
「私も」

実際に、恭也が言うのはおそらく神速なしでの話だろう。知佳は神速を使われれば一瞬で終わりだし、耕介も神速を使われれば霊力を使用しても勝つのは難しい。
何よりどうやっても恭也に勝ったというイメージが二人とも浮かばないのである。逆に恭也が負けるというイメージもあまり浮かばない。
恭也は絶対に負けない。そんなイメージが二人……だけでなく、救世主候補たちやなのはたち、それに元の世界にいる者たちにもあるのだ。
本当の戦いになれば……守る者があれば、恭也は負けないと。

「そんなことはないと思いますけど」

恭也自身はそんなものを感じるはずがなく、ただ首を傾げている。
そんなとき、

「マジで知佳さんたち恭也並に強いのか?」

三人の会話を聞いていただけに、恭也の言葉に真実味が帯びてきたので、大河が起きあがりながらも、どこか信じられないという感じで聞く。
実際に知佳が、確かに状況次第では勝てるかもしれない、と言ったのだ。

「少なくとも私は勝てないです、たぶん」

なのはも二人の力をある程度知っているだけにそう付け足す。
それにまたもや驚く救世主候補たち。つまり召喚器を持っているなのはよりも強いということなのだ。

「まあ二人のはかなり誇張されてると思うけど、それなりに自負はあるよ、俺も知佳も」
「だから連れてってくれないかな?」

二人の言葉に救世主候補たちは顔を見合わせ、なぜか恭也の方を見る。
なんというか、リーダーという訳ではないのだが、恭也がその年上のお兄さんな気質で彼らを纏め、今まで引っ張ってきていたため、こういう決断をどうしていいのか迷ってしまうのだ。
だが今回ばかりは、恭也が救世主候補たちに頼んでいるような状態なので、彼自身が何かを言うことができない。

「恭也、マジで二人の力、信用していいのか?」

そこで大河が恭也に聞く。

「ああ」

その言葉に恭也が力強く頷いた。それには一切の迷いがなく、絶対の信頼があった。
それを聞き、大河は軽く頷いた。

「ならいいんじゃないか」
「って、ちょっと待ちなさい! アンタ勝手に何言ってんのよ!」
「そ、そうだよ、お兄ちゃん!」

勝手に決めてしまった大河に、リリィが噛みつき、さらに未亜も止めようとするのだが、大河は二人……だけでなく、救世主候補たち全員を見た。

「恭也を信じられないのかよ?」
「そ、それは……」
「確かに俺は知佳さんたちが強いのかなんて知らねぇけど、恭也の強さは一番知ってるつもりだぜ。その恭也が二人は強いって言ってんだ、疑う気なんかねぇよ」

何とも大河らしくないセリフだ。それを自分でも自覚しているのか、彼は鼻の頭を掻いて、どこか顔を赤くしている。
その大河を見て、再び顔を見合わせてしまうリリィたち。だがすぐに苦笑したり、ため息を吐いたり、微笑んだりしたあと、全員が頷いた。

「そうね、大河は信じられないけど、恭也……の強さは信じてるわよ」
「恭也さんとなのはちゃんが強いって言うなら、大丈夫だよね」
「私は恭也さんの言うことは……全て信じます」
「老師の強さは師匠と同じく前衛の拙者が良くわかってるでござるよ、だからお二人がそう言うのなら間違いないでござる」
「恭也さんの言うことなんだから、きっと間違ってはいないでしょうね」

仲間としての恭也への信頼。
その信頼を部外者であるはずの知佳と耕介も感じる。それは恭也の仲間である二人には嬉しいことであったために笑い合う。

「ってかリリィ、ちょっと待て、俺は信じられないってどうことだ!?」
「フン、アンタのことだから知佳さんが一緒だから、とかいう理由もあるんでしょ?」
「当然だ! しかも今回の相手はアンデット! あれに慣れていない知佳さんなら、こう怖がった拍子に抱きつかれるというイベントも……」

どうやらそんな裏があったらしい。

「お兄ちゃん……」
「大河君……」
「師匠……」

いつのまにか召喚器を呼びだして、未亜、ベリオ、カエデは笑顔でそれを大河に突きつけた。
リコはため息を吐いてそれを見つめている。
そしてそんな救世主候補たちを見て、恭也たちは苦笑していた。




とりあえず大河への説教(折檻とも言う)がすまされた後、チーム分けをすることになった。あまり多く集まって行動しても仕方がないし、何よりアンデットを探すにしてもこの学園は広いということで決まったことだ。
そのチーム分けは恭也が行った。これは耕介たちの能力と大河たちの能力を正しく把握しているのが恭也だけだったからだ。
耕介たちに何ができるのかも、まだ曖昧にしか説明していない。耕介の霊力は恭也が使えるから説明しても良かったが、知佳のはどうしても実際に見てみないことには説明が難しかったのだ。というわけで、戦いの中で見せる、ということで決まった。
そして決められたチーム。
一つは、大河、カエデ、ベリオ、なのは(+久遠)、未亜。
もう一つが、恭也、耕介、知佳、リコ、リリィ。
恭也がこの案を出したさい、そりゃあもう非難が出た……特になのはと未亜から。
だが恭也も何の理由もなしに、こういうチーム分けにしたわけではない。
まず前衛だが、大河かカエデに耕介と組ませてもうまく連携できないだろう。だが恭也ならば問題ないということ。
そして後衛は、知佳はベリオと同等の防御能力を持つ上、念動力により援護能力もなのはや未亜並なので、その三人と離した方が無難だった。回復役も両方にいなければならないということで、リリィとリコも恭也側になった。
これには非難ではないものの、大河たちも多少首を傾げて困惑した。つまり火力が大河側は足りないのではないか、ということだ。
が実際の所はそんなことはない。大河側にいるなのは、さらにその彼女の傍には久遠がいるから火力はまったく問題ないのだ。久遠のことはまだ言っていないが、そのへんは彼女の力が必要になった時に説明することにした。
さらに物量という意味でも、なのはと未亜でカバーできる。
耕介と知佳が救世主候補たちとうまく連携ができるなら他にも分け方があったが、今回は即興と言っていいので、恭也がついていなくてはならない。それがこのチーム分けにした最大の理由だった。
それを簡単に説明すると大河たちも……なのはと未亜は渋々……納得した。
そしてそれぞれのチームが別れて行動を開始。
恭也たちは中庭まで来たのだが……

「これはまた……」

そこにいた幾つもの骸骨を見て、恭也は呆れたように言う。
それにリリィも続く。

「なんでこんなにいるのよ?」

今回の件で現れたアンデットは、全員が一体か二体ぐらいだと思っていたのだが、そこにいたのは十体を越えるほどの骸骨たち。その骸骨たちはその手に握る剣を不気味に動かしていた。
なぜこんなにも大量のアンデットが学園に現れたのか。
知佳も初めて見たアンデットに驚いていたのだが、すぐに隣にいた耕介を見た。

「やっぱりただの霊障とは違う」
『似通う部分もありますが……』

その知佳に、耕介と十六夜が小さく言った。
普通の霊障とは気配が違うのだ。

「意思は多少あるみたいだが、何かおかしい」

残念して、それでも現世に留まる霊障は、その強い想いや怨念があり、僅かでも意思が感じ取れるが、これらはそう言った、死後さえも自身の身体や魂を突き動かすような強い意志や怨念がない。

「まあ、今はともかく」

呟いて、耕介は十六夜を構えた。
少なくとも、あの骸骨たちは恭也たちの方を向き、剣を構えている。本当に意思があるのかわからないが、攻撃をしかけてこようとしているということだ。今はそのことの方が重要である。
耕介としてはいきなり武力行使したくはないのだが、あちらの意思が少なすぎて、聞き入れてもらえるとは思えない。

「俺と耕介さんで前に出る」

恭也も今回は八景ではなく、紅月の方を先に抜刀して言った。

「後ろは任せる」

後方にいる三人にそれだけを残し、恭也は駆けだした。
そして耕介も、その後ろに続いていった。








あとがき

やっぱり登場キャラが多くなると必然的に会話も多くなる上、喋れないキャラも出てくるなあ。なるべく全員喋らせようとは思うんだけど。
エリス「またなんというか、中途半端な所で切ったねぇ」
耕介たち参戦で、えらく時間がかかったから。
エリス「ま、とりあえず早く続きへ」
はい。設定の復旧がまだなんで、もう少し時間がかかるかもしれませんが。とりあえず、その原因になった基本設定も投稿してますので。まあ、見なくても問題はありませんが。
エリス「ではでは、今回はこのへんで」
ありがとうございましたー。





耕介も参戦か!?
美姫 「まあ、今回限りかもしれないけれどね」
さてさて、一体どうなるんだろうか。
美姫 「次回が非常に気になる所」
次回も楽しみにしてます。
美姫 「待ってますね〜」
ではでは。



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