『選ばれし黒衣の救世主』










恭也はゆっくりと目を開ける。

「ここ……は」

 つい先ほどのことを思い出したが、目の前にリコの姿が見えて、心の底から安堵する。
 だが、周りを見て驚く。
 そこは先ほどの部屋ではなく、宇宙空間のように真っ暗で、恭也もまるで宙に浮いているかのような感覚にさせていた。
 まさか、自分は死んだのか、とまで思わせた。
 そんな姿を見て、恭也が考えていることを理解したらしく、リコは笑ってみせた。

「大丈夫ですよ。まだ生きてます」
「そうか、ではここはどこなんだ?」

 恭也が聞くと、リコは申し訳なさそうな表情を浮かべながら眉を寄せた。

「わかりません」
「わからない?」
「はい。私も目覚めたらここにいました。それで恭也さんの傷を癒していたので、まだ調べてもいません。次元の狭間に似ている感じではあるのですが」

 リコに言われて、恭也は初めて自分の怪我が治っていることに気がついた。

「すまない」
「いえ。私を庇ったせいですから」

 リコはすまなそうな顔をみせる。
 そんなリコが、恭也にはいつもより多弁で、声もはっきりとしていて、感情の起伏もしっかりとしているように見えた。

「何かいつもと違うな」
「それは……力の消費を少しでも抑えるために、いつもは言葉を話さないようにしていましたから」
「力の消費?」
「そうです。主を持たない私の力は、一度放出したら、二度と戻りません。だから、この姿を維持するためにも、力の消費を抑えないといけないから」
「よくわからんが、まあ、無事ならいいんだ」

 微笑んで答える恭也に、リコも笑っている。
 だが、不意にリコが真面目な顔をして恭也を見つめた。

「恭也さん、さっきはありがとうございました。でも、二度と私のためにあんな危ないことをしないでくださいね」
「それは約束できんな」

 恭也は間髪を入れずに返す。

「恭也さん!?」
「身体が勝手に動いたと言っただろう? 条件反射みたいなものなのだからどうしようもない。
 それに大河だって同じようにするさ。あいつの場合はリコみたいなかわいい娘を傷つけさせるわけにはいかん、とか言いそうだな。まあ、その点は俺も同意見ではあるが」
「そんな……私は普通の女の子じゃないんですよ?」
「そんなことはないだろう? 俺や大河から見ればリコは普通に可愛い女の子だぞ。どんな重い使命を持っていようがな」
「……はい」

 リコはどこか嬉しそうに頷く。
 そして、二人はお互いの目を見つめ合う。
 だが、

「人の創った世界で二人だけの世界を作らないでくれないかしら」

 いきなり二人以外の呆れたような、それでいて怒っているような声が響いてきた。






 第十六章 赤と白と紅






「誰!?」

 リコが真っ暗な……黒い空間を見渡しながら叫ぶ。
 すると二人の目の前に紅い本が現れ、それが輝き、人の姿に変わる。

「お久しぶり、マスター」
「レティア」

 案の定というべきか、現れたのはレティアだった。

「レティア……?」

 リコは驚いたようにレティアを見ている。
 レティアはそんなリコを無視して、恭也を睨みつけた。

「マスター、私、言ったわよね。赤の精や白の精に浮気したらギタギタにするって」
「い、いや待て。浮気って言われてもだな」

 レティアに睨まれて、恭也は顔を引きつらせる。さらに、背中に大量の冷や汗が流れてきた。
 だが、すぐにレティアは恭也を睨むのを止めて、力なく肩を落とす。

「はあ、まったく。マスターに全てを話すために、わざわざ世界を創って、それがやっと出来上がって、マスターを呼ぼうと思ったらとんでもないことになってるんだもの」
「世界を創った……?」

 信じられない言葉を聞いて、リコが呆然と呟く。
 それで初めて、レティアはリコの方を向いた。

「そうよ。ここは私が創った世界。
 とは言っても、完全に一から世界を創るような力は私にもないから、流れとかを色々と流用しただけだけどね」
「あなたは……いったい……」

 それを聞いて、レティアはいつも通りに微笑む。

「はじめまして赤の精……とは言っても、本当ははじめまして、じゃないんだけどね。それはいいわ。
 とりあえず、私は紅の精のレティア。まあ、発音があなたと一緒になっちゃうから、紅(くれない)の精って呼んでもいいわよ」
「紅の精……?」
「そう、あなたとは違う目的……いえ、正反対の目的で創り出された書の精霊」
「そんな!?」

 リコの驚く姿を見て、レティアはさらに笑みを深める。
 それを端から見ていた恭也は、何となく彼女の性格が、あの白の精と名乗るイムニティに似ているのではないか、などと考えてしまう。

「私たち以外に書の精霊がいるわけがありません!」
「なんで断定するわけ? 現に私はここにいるじゃない。というよりも、私はあなたたちよりも前に生み出されてるのよ。つまり私はあなたよりも年上。ただ、私は今まで表立って行動した事がほとんどなかったから知らないだけ」
「そんな……」

 リコはやはり信じられないとばかりにレティアを見つめる。

「あなたが命の心を守る精霊だというのなら、私は命の誕生と終焉を象徴とし、守る精霊」
「命の誕生と終焉?」

 それは恭也も初めて聞くことだったので、つい割って入ってしまった。

「そう、心や精神ではなく、命そのもの。命の誕生とその終わりを見守り、守る精霊よ。
 私の紅って言うのは、生命の息吹を模してるの。生命は誕生と終わりの瞬間、炎のように燃え上がる。それを紅く例えたってこと」

 初めて聞く話に、恭也は感心したように頷く。だが、レティアが前に言っていたことを思い出して、すぐに首を傾げてみせた。

「しかし、いいのか? 前にあまり自分のことは言えないとか、長く俺のそばにいられないとか言っていたが」
「そのためにわざわざこの世界を創ったのよ。ここならあいつの目も誤魔化せるから。
 苦労したのよ? だから今までマスターの所に行けなかったわけだし、ここを創っている間はどんなことが起きてるのか把握できないし」

 つまり、今までレティアが現れなかったのは、この世界とやらを創っていたかららしい。

「だけど……」

 なぜかレティアはため息をついてリコを見た。

「余計なのを一人つれて来ちゃったから、そう長い間この世界を維持できなくなっちゃったわよ」
「余計?」
「赤の精のことよ。この世界は急ごしらえで創ったから維持が難しいの。これが普通の人間とかなら問題ないけど、赤の精がいたらそう長く維持してられないのよ」
「つまりどういうことなんだ?」

 レティアの言いたいことが理解できず、恭也は何度も首を傾ける。
 そんな恭也の姿を見て、レティアは肩を竦めた。

「説明すると長くなるからしないわよ。ただでさえ時間がなくなっちゃったんだから。もう全部を話すなんて無理。なら今話せることだけ話したいわ」
「す、すまん」
「別にマスターのせいじゃないわよ」

 マスターという言葉に、リコが初めて反応をみせる。どうやら、今までは話の流れについていけずにいたらしく、今気づいたようだ。

「マスターというのは恭也さんのことなんですね? そして、アヴァターに連れてきたのも……」
「そうよ。もっとも、あなたたちのマスターと書の精の関係ともまた違ったものだけどね」
「あなたは……いったい……」

 リコの質問に、レティアはなぜか鼻を鳴らす。

「あなたを創り出した存在よりも上位な存在に創り出された書」
「え……」
「ある意味では敵同士よ。あなたが自分の創り主をどう思ってるかによるけど」
「ま、待ってください!」

 リコは、勝手に話を進めるレティアを慌てて止める。

「私を創った存在よりも上位?」
「ええ」

 再び恭也は話に入れなくなり、二人の話を黙って聞いているのだが、まったく訳がわからない。
 リコはわかるらしいのだが。

「そんな、あの存在以上の存在がいるわけがない!」

 目を見開いて叫ぶリコを見て、なぜかレティアは満足そうに笑う。

「誰がいるなんて言ったのよ。正確にはある、よ。もっとも、その言い方も正しいのかはわからないけど」
「ある……!?……」

 訳がわからないという顔をしていたリコだったが、再び目を見開いた。

「まさ……か……」
「へえ、あれだけの言葉でわかるなんて、さすがは世界の理を持つ書の精霊ってところかしらね」

 レティアはリコの反応を見て笑っているのだが、当人のリコは信じられないとでも言いたげにレティアを見ている。

「あ、あなたは……なぜ……」

 リコは、声を震わせて言葉を紡ぐが、その先が出てこない。
 まるで、それが禁忌であるかのように。

「なぜ生み出されたか、かしら?
あなたの考えている通りよ、たぶんね。とうとう『あれ』はあなたたちの創り主の暴挙に限界がきたの。
 だから私を創り出し……マスターを生み出した」
「恭也さんまで!?」
「俺?」

 突然、自分が出てきたことに驚きはしないものの、またも首を捻る。
 レティアはそんな恭也を見て微笑み、すぐにリコに向き直る。

「私はただの補助みたいなもの。マスターの方が本命」
「そ……んな……」

 恭也にはやはり理解できないのだが、リコはなぜか愕然としている。

「やはり、俺がついていけていないのだが」
「マスターは知らなくてもいいわ」
「なに?」
「全部話せるのなら言ってもいいんだけど、残り時間を考えてもそれは無理。なら中途半端に知ってしまうのは危険よ。特にマスターの役割わね」
「そうか」

 恭也はそれだけで納得してしまう。
 無論恭也とて、自分に関係のありそうなことなので知りたいとは思っている。
 だが、中途半端に知れば危険だと言うのなら、恭也は聞こうとは思わない。もはや自分の危険は他の者にまで飛び火しかねないのだから、迂闊なことはしたくない。
 それに、今は紅の精やら、白と赤の精やら、導きの書やらなどで正直訳がわからない状態なのだ。

「さて……」

 レティアは驚愕の表情を張り付けたままのリコを見て、悠然と微笑む。

「あなたはどうする?」
「え?」

 レティアの突然の質問に、リコは目を瞬かせた。

「あなたは確かにあいつに創られたのかもしれない。だけどあなたの意思は? あいつに逆らうつもりはある?」
「なにを?」
「正直、こっちとしても手詰まりなのよ。なんでわざわざ敵になる可能性もあるあなたまで助けたかわからないの?」
「私を助けたのにも意味があるということですか?」

 リコはレティアに言われても、自分が助けられた理由が思いつかない。
 そんな彼女に、レティアは少しだけため息をついてみせた。

「ま、ね。大きな理由は二つあるわよ。
 一つ目は、白の精とのことは途中から聞いてたけど、あっちは主を決めてしまった。つまりあなたが死んだら救世主が誕生しちゃうってこと」
「あなたにとっては望むところではないんですか?」

 その言葉にレティアは、気に入らないとばかりに、フン、と鼻を鳴らす。

「まさか。まだ準備の時間がほしいし、私もついさっき今の状況を知ったぐらいなのよ。まあ、それとは別にしても、あんなもの誕生してほしいなんて思わないけどね。
 私はずっとこの世界を創ってたから、私がアヴァターで起こったことを知っているのは、なのはちゃんたちがアヴァターに来た日まで。だから、白の主が誰なのかもわからない。これじゃあ対策の立てようもないわよ」
「今の時点では、あなたも救世主が誕生されては困る、ということですね」
「そういうこと」

 レティアは軽く肩を竦めつつも頷いてみせた。
 リコは何かを考えたあとに、再び口を開く。

「もう一つはなんですか?」
「あなたを見捨てたら、私がマスターに嫌われるから」

 すぐさま返答するレティア。
 リコの表情が、再び呆然としたまま固まる。
 恭也も眉を寄せていた。

「なによ?」

 レティアは二人の反応が気に入らなかったのか、口を尖らせる。その仕草は、何か文句あるの? という感じだ。

「いや、俺はあまり話が理解できなかったが、それでもマクロな話から、いきなりミクロな話に変化したのはわかったぞ」
「私にとっては他の何よりも重要よ」

 素直にそう返されては、当の本人である恭也も悪い気はしないし、何と返答していいのか迷う。

「話を戻してもいいですか?」

 そんな二人を見て、リコがなぜか不機嫌な様子で言った。

「ええ、どうぞ」

 レティアは彼女に向かって、やはりなぜか余裕の笑みをみせる。

「つまり、私にあなた側につけということなんですか?」
「あなたも、もう救世主なんて生み出したくないんでしょ?
 私たちにつけば、もう二度とそんな使命に従わなくてもいいのよ。悪い条件じゃないんじゃないかしら?」
「そう……かもしれませんね」

 リコは指を口に当てながらも、どこか辛そうな表情をみせる。

「私としては、もう少し時間を稼ぎたい。あなたもあんな因果の鎖を断ち切りたいと思っているはずよね? 一応は、お互いの利害が一致していないかしら?」

 レティアの追い打ちのような言葉を聞いて、リコは目をつぶる。
 だが、すぐにその目を開けた。

「わかりました。協力します」
「そう。それはよかった」
「もっとも今の時点では、と付け加えますが」
「それでかまわないわ」
 
 レティアは、リコとの話は終わったとばかりに彼女から視線を離し、そのまま恭也の方へと移した。

「マスターは聞きたいことがある?」
「まあ、色々とあるが」
「私と赤の精に答えられることなら答えるわ。あんまり時間がないから手短にだけどね」

 レティアの答えを聞いて、恭也は考えながらも口を開く。

「まずは、リコとあのイムニティというのはどんな役割があるんだ?」

 その問いにはリコが答えた。
 リコとイムニティは、対立する目的のために、導きの章から生まれた。
 世界は対立する二つの力から成り立っていて、その一つが支配因果律の力。これは、恭也たちのいう物理や化学とか言われるもの。他にも、弱肉強食とかの言葉に表現される関係もこれに含まれるとのことである。

「物理やら化学が、そんな四字熟語と同じカテゴリーなのか?」
「どちらも支配ヒエラルキーによる完全帰結型ロジックの原理ですから」

 感覚的には何とか理解できる。
 もう一つの力は、生き物の命と命がお互いに及ぼしあう力であり、無から有を生み出し、世界を成長させる精神の力。

「精神か……」
「こちらはロジックを含みません。何しろ完全な無から、ある時突然に有を生み出すものですから」

 恭也にとってはなかなか難しい説明ではあるが、何とか大学生の意地をみせて理解していく。

「私たちは白、世界の因果律を守る精霊と、赤、命の心を守る精霊として書から誕生しました」
「その二つが対立しているわけはなんなんだ?」
「ロジックとは、それ自体を守る存在でもあります。
 1+1が3や4かもしれないとしたら、世界の法則が狂ってしまいます」
「確かに」
「しかし精神は無から有を創り出すことができます。これはイムニティ的ロジックからみると0×1が1や2になることを意味します」
「なるほど、存在自体が対立しているのか」

 恭也はそれらの情報を何とか、自分にわかりやすくまとめていく。
 そこで、恭也はレティアの方を向く。

「ならレティアはどうなるんだ?」
「私は命そのもの……だから、存在理由自体はまったく違うものよ」
「違う?」
「私が司るものは命の誕生と終焉。だから、赤の精の命の心を守るというのと似たように感じるかもしれないけど、まったくもって別の存在なのよ。つまり、私の存在理由の間に、赤と白の精の理があるの。
 それに私は世界の理だとか、在り方だとか何だとかには関与してないし、創られた目的からして違うしね」
「なるほど」

 何とか理解して頷く。
 そこで、再びリコの方を向く。
 ……しかし、どうでもいいことなのだが、恭也が顔の向きをかえるたびに、顔を向けた方の表情が機嫌よくなったり、逆が不機嫌になったりするのはどうしてなのだろう。

「リコが救世主候補として、この学園にいるのはなぜなんだ?」
「私とイムニティは、真の救世主を選ぶ事を目的としています。だから私は、その為に姿を変えて、召喚術の出来る救世主候補の一人として学園に入りました」
「確かに、召喚士として救世主候補を選ぶ役になればいち早く救世主を見つけられるな」

 恭也は自分でそう言ったものの、何か矛盾を感じた。
 だが、その答えはすぐに出た。

「しかし、リコは救世主を選びたくないと言っていなかったか?」
「……それは、そうです。でも、私には書の精霊として、なさなければならない役目もありました。だから、救世主候補をアヴァターへ招き入れる役目を降りる訳にはいきませんでした。
 ですが、私はずっと、ここに来る救世主候補たちに違っていて欲しいと願ってきました」
「なぜだ?」
「救世主には……とてもつらい役目があるんです。
 私は……、その役目に耐え切れず、精神を崩壊させ、自らの命を絶った救世主たちを幾人も知ってます」

 その言葉に恭也は眉を寄せた。
 知佳と色々と話して、救世主には何かしらの裏があるのではないか、という疑問が出たが、どうも的外れではなさそうだ。
 破滅が未だに存在することや、今のリコの説明からして、救世主とは単純に破滅を滅ぼす存在というわけではないのだろう。

「ここで問題になるのが、イムニティとリコ・リスの二人いることなのよ」

 今まで黙っていたレティアが語りだす。

「この二人が、救世主を選ぶ。この救世主がさらにイムニティかリコ、どちらか一方を世界の運命を決めるためのパートナーとして選ぶの」
「世界の運命?」

 レティアの説明は、やはり伝えられている救世主の伝承とはまるで違う。

「そう。だけど、どちらを選択しても、それを完遂できたものはいないわ。もっとも、完遂なんてされたら困るんだけどね」

 レティアは後半を、恭也に聞こえないように呟くが、彼はそれに関しては何も言わなかった。
 そこでリコがレティアに代わり、続きを話し始める。

「みな途中で、白か赤か、どちらか一方の心が現われて、くじけてしまうんです。そうして幾万年もの間……私たちは延々と自分の命を絶ち続ける救世主たちを見続けてきました」
「そんなに……」

 リコの哀しげな言葉を聞いて、恭也は顔を顰めた。
 だが、レティアはそんな彼女を鼻で笑った。

「その程度ならまだマシじゃない」
「レティア!」

 レティアの突然の物言いに、恭也は思わず怒鳴る。
 だが、彼女はリコ以上の悲しみの色をみせた。

「私だってずっと……赤の精の数十倍、数百倍の長い間見続けて、聞き続けてきたわよ。
 命の慟哭と絶望、……の軋みと痛みを」

 レティアは今にも泣きそうな表情で呟く。
 それは、今までどこか年上ぶりながらも、コロコロと表情を変えていた彼女が見せた初めての表情。
 だが、すぐにレティアは首を振る。

「ごめんなさい。変な囲気にしちゃったわね」
「いや……」

 レティアはいつものように笑ってみせる。
 それを見て、恭也は何も言えなくなった。

「とりあえず、救世主の目的に関してはまだ知らないほうがいいわ」
「なぜだ?」
「全部を話す時間はないって言ったでしょ。中途半端に知って行動するよりも、何も知らないで行動した方がまだ良いってことよ。下手に知ってしまったら、余計に動きずらくなる情報というのもあるのよ。自分で真実に辿りつくならともかくね」
「私も救世主以外の人には、話してはいけない決まりになっているので」
「そうか。ならいいんだが」

 恭也は、肩を竦めるレティアと、申し訳なさそうに言うリコに軽く頷く。

「だが、あのイムニティが主を決めてしまったのなら、もう救世主と世界の運命は決まったということか?」
「違うわ。救世主になる条件はリコ・リスとイムニティ両方の主になること。それから救世主が世界を赤か白のどちらにするかを決める」
「リコはまだ選んでいないから」
「はい。だから、まだ世界の運命が決まったわけではありません」

 それに恭也は安堵する。

「あいつはリコを殺すと言っていたが」

 恭也は、先ほどのイムニティの姿を思い出しながら呟く。

「あの娘のメンタリティからすれば当然のことよ。
 私たち書の精霊を完全に消去することは不可能だけど、殺すという表現で書に還元することは可能なの。そうすることで、イムニティがリコを間接的に支配することは可能なのよ」
「そして、私を支配したということは、自動的に世界は彼女の支配を受け入れた事なります」
「その時点で、彼女が選んだ救世主によって、世界の運命は決定されるということか」

 恭也の言葉に二人は頷いて肯定する。
 しばらく三人の間に沈黙が満ちる。
 それぞれが何かを考えているようだった。

「しかし、これからどうするんだ?
レティアの話だと、この世界は長く維持できないんだろう?」

とりあえず、黙っていても話は進まないし、時間もないと言っていたので、恭也がレティアに聞く。

「そうね。あと少しってところかしら」
「この世界が維持できなくなったらどうなるんですか?」
「私はこの世界を消滅させるつもりはないわ。こちらの都合で消滅させたら、やってることがあいつと同じだもの。だから、完全に維持できなくなる前にあなたたちには戻ってもらう」
「戻るのはいいとして、どこに戻されるんだ?」

 恭也の当然の疑問に、レティアは深々とため息をついた。

「導きの書があった部屋よ」
「ということは、イムニティがいる場所ですか……」
「マスターが危ないのを見て、何の準備もなく強制的に召喚したからね。
 私の世界移動に関しては、次元の橋はそれほど重要ではないんだけど、色々と制約があるのも事実。アンカーもないし、さっきの逆の手順で送ると、やっぱり元いた場所に戻される」
「つまり、イムニティとは戦わないといけないということか」

 さきほどのイムニティの力を思い出すに、少々辛い。
 恭也はイムニティの魔法にはまったく耐えられそうにないし、リコの魔法も彼女よりも下であるのは間違いなかった。

「マスターの魔法耐性のことが問題なのよね?」
「まあ、一撃で終わってしまうからな」

 回避に専念すれば何とかなるかもしれないが、前衛の恭也が回避ばかりでは、まったく意味のないものになってしまう。
 そんなことを考えていた恭也に向かって、レティアは笑った。

「私がそのことを考えていなかったとでも思ってるわけ?」
「なに?」

 レティアは胸元から、紅い宝石のついたブレスレットを取り出した。

「はい、これ。腕につけておいてね」
「なんだ、これは?」
「マジックアイテム、お守りみたいなものよ。それ自体にかなり魔力がため込まれていて、召喚器並とは言わないけど、それなりに魔法の威力を軽減してくれるわ」

 レティアの説明を聞いて、驚きながらもブレスレットを腕につける。
 別に何も変わった感じはしないが、レティアが言うのだから、それなりの効果はあるのだろう。

「紅月のときも思ったが、こういうのはどこから持ってきてるんだ?」
「別に知らなくてもいいって言ったけど。まあ、はっきり言っちゃうと私が作ったんだけどね、二つとも」
「レティアが作った?」
「そうよ」

 レティアは胸を張って笑ってみせた。

「でも、それはこの世界を創る片手間に作ったものだから、あんまり過信はしないでね」

 その話を聞きながらも恭也が感心していると、横でリコがボソッと呟く。

「紅の精とか大層な名前を持ってますけど、ただのご都合というか、お助けキャラというか、ほとんど四次元ポケットを持った猫型ロボットみたいな役割じゃないですか……」
「何か言ったかしら、赤の精?」

 レティアは頬を引きつらせて、リコを睨む。

「いいえ、何も」

 リコはそんな彼女を見ても、無表情で返した。
 そんな二人を見て、恭也はもしかしてこの二人は相性が悪いのか、と思ってしまう。
 レティアは頬を元に戻すが、気にいらなそうな表情のまま口を開く。

「問題はまだあるわよ」
「なんだ?」
「リコ・リスのことよ」
「私ですか?」

 もしかして、先ほどの言葉の仕返しか、などと考えつつリコが返事をする。

「そうよ。あなたはまだ主を決めていない。喋ることすらを封じてまで、力を失わないようにしてる。だから、あなたの力はイムニティに比べてまったく及ばない。そう言う意味では、彼女はかなり強い力を持つ人を選んだわけよ」
「そう……ですね」
「今回は何とかなったとしても、このままだと、いつかあなたはイムニティに負ける。でも、あなたが死ねば救世主が誕生してしまう。それは避けないといけない」
「私に主を選べ、と?」

 レティアの言いたいことがわかり、リコは彼女を睨みつけた。
 だが、その視線をレティアは軽く受け流す。

「そうしなければ時間稼ぎも何もありはしないわ。あなたが死ねば救世主は誕生してしまう。なのにあなたが身を守る手段がないんじゃ話にもならないじゃない」
「だからって! 自分を守るためだけにマスターを選ぶことなんてできません!」
「そのへんはマスターを持つ身としてはわかってるわよ。だから、最終手段」
「最終手段?」
「そう、正直、賭けに近い手段。
マスターを……私のマスターを赤の主に……そして、あなたのマスターにする」

 その言葉を聞き、リコだけでなく、恭也も目を見開いた。
 リコが何かを言う前に、恭也が慌てたように口を開く。

「待て。俺は救世主候補じゃない、ということは、赤の主とやらにもなれないだろう?」

 恭也の言葉に、レティアはゆっくりと首を振った。

「私……というか、私たちを創った存在の誤算の一つ。マスターは召喚器を持ってる」
「なっ!?」

 レティアの答えに恭也は驚く。
 だが、先ほどのマスターに恭也を選ぶということには驚いていたリコだったが、この答えにはまるで驚いていなかった。

「今は休眠していて相当に小さい力だから、よく視ないとわからないかもしれないけど、リコ・リスはわかってるわよね?」
「はい」

 リコは静かに頷いて返した。

「マスターだって覚えがあるでしょう?」
「覚え?」
「最初のテストのときに、私が現れる前に聞いた声」
「あ……」

 レティアに言われて思い出した。
 テストの時に聞こえた声。
 今では、夢ではなかったのかとさえ思えるほどにおぼろげではるが、確かに聞こえた。

「あれがマスターの召喚器の声よ」
「あれが……?」
「ここでなら、呼び出してもいいわ」
「呼び出せと言われてもな」
「あのときのことを思い出してみればいいのよ。そして、自分の中にいる存在に話かければいい」

 レティアに言われ、恭也は心を静め、目を閉じる。
 すると、違和感を覚えた。
 まるで、自分を守るような暖かいものを感じる。

《寝てるというのに、何かようか?》

 声は響いてくるのだが、どちらかというと意思のようなものに近く。それがどのような声質を持っているのか把握できないが、確かに聞こえた。
 その瞬間、リコが目を見開いた。

「これは……こんなに強い力が?」
「言ったでしょ、休眠してたって。下手に力を放出されたら、マスターの存在がばれるもの。そのへん理解してくれてたみたいね」

 恭也は二人の会話が、どこか遠くで聞こえるような気がした。
 そして、ゆっくりと目を開けて、その手を前に掲げる。

「来い。斬神【きしん】」

 その言葉とともに光が集まり、小太刀の形に収束していく。
 そして、恭也の手の中に、刀身から鍔、柄まで漆黒の小太刀が現れた。

「……これが……召喚器?」

 自らの召喚器……斬神を眺める。

「はいはいはい。呆然とするのはいいから、とっとと消して」
「は?」

 今出したばかりだというのに、レティアが詰め寄って言ってくる。

「召喚器の力は世界の根元力を引き出すこと。つまり、この世界を維持する力まで奪っちゃうのよ。だからとっとと消す」
「あ、ああ」

 恭也はレティアの説明を聞いて、慌てて斬神を消す。

「で、悪いんだけど、あなたは今まで通り眠っていてもらえるかしら」

 レティアはテストの時のように、恭也にではなく、その奥にあるものに向かって話かける。

《まったく、起きろと言ったり眠れと言ったり……手みやげぐらいほしいもんだ》

 恭也の中で、何やら愚痴っているような意思がある。
 何か、この感覚が非常に懐かしいものであるような気がするのだが、思い出せない。
 しばらくするとその意思も小さくなり、恭也にすらまるで感じ取れなくなってしまった。

「ね、わかったでしょ? マスターにも資格はあるのよ。非常に不本意だけどね。だけど、今はこれを利用するしかない」
「待ってください」

 レティアの話を聞いて、リコは止めに入る。

「あなたの目的のリスクにも為り得るかもしれません。それでもいいんですね?」
「どんな目的も、リスクなしじゃ達成できないのよ」

 それにリコは頷いたあとに、恭也の方を向いた。
 あまり話は理解できなかったが、恭也も真剣な顔でリコを見る。

「恭也さん、私と……契約してもらえますか?」
「契約……か」

 今までの話を考えると、つまるところ、救世主になるための資格の一つと解釈すればいいのだろうが、恭也の中では複雑なものだった。
 とくにリリィには、自分が救世主になることはないと言ってしまっている。
 その自分が資格を得るというのは、騙して……いや、いきなり関係のない自分がかすめ取ってしまったようにも感じるのだ。

「リコはいいのか? リコにとっても主を決めるというのは大事なことなんだろう?
それを状況に流されるみたいに決めてしまっても」
「私は恭也さんならいいと思います」
「なぜ?」
「私は、こっちの世界に恭也さんが来てから、ずっと見ていました。だから知っています。恭也さんが他の皆さんを大事にしているということ、優しい心を持っていること。そんな恭也さんだから、契約してほしいって思います。
 でも、怖くもあるんです」
「怖い?」

 恭也はリコの言う意味がわからずに聞き返す。

「千年前と二千年前……つまり、前回と前々回の時も、白と赤の陣営が戦うことになりました」
「白と赤……か」
「前回は友人同士が、前々回は小さな時からの知り合い同士が殺し合うことになりました。私はもう、あんなのを見たくないんです」

 それを聞いて、恭也は何かを言おうとするのだが、レティアが先に口を開けた。

「マスターが白の主と戦う必要はないわ。二人は時間稼ぎをしてくれればいいんだから」
「時間稼ぎ?」
「そう。その間に、私があいつのいる次元に渡る方法を見つける。どこにいるか自体はわかっているんだけど……」
「またあいつ、か」

 レティアからよく出てくる言葉。
 その意味が相も変わらずわからずに、恭也はため息をついた。

「ごめんなさい。だけどそいつを倒せば、この救世主の悲しい戦いも終わらせられる」

 レティアの話を聞いて、恭也は頷いたあと、リコの方に向き直る。

「だそうだ。俺は白の主とは戦わなくていいらしい。
 だから、リコもそんなに背負うなよ。今まで、どこかぶっきらぼうだったのも、みんなの中から救世主を選ばないためだったんだろう?」
「あ……」
「もう一人で何でもかんでも背負うな。俺も……少しは一緒に背負ってやれるみたいだから」

 恭也は少しだけ微笑みながらリコの頭を撫でる。

「恭也……さん」

 リコもどこか潤んだ瞳で恭也を見つめる。

「だから、二人の世界を作るな!」

 レティアが、そんな二人を見て怒鳴る。
 それに驚きながらも、恭也はリコの頭から手を離した。
 リコはレティアに、まるで邪魔者を見るような視線を向ける。

「それでは、私は恭也さんと契約させてもらうので」
「何が言いたいのかしら、赤の精?」
「邪魔です」

 リコは笑顔で、はっきりと言い放つ。
 それに、レティアは再び頬を引きつらせた。

「言っておくけど、契約で書の精との完全なる一致……なんてさせないわよ」
「なぜです!?」
「あたりまえでしょうが!」

 なぜか言い争いを始める二人を、恭也は少しだけ身を反らして見ていた。
 やはり思った通りである。この二人、徹底的に相性が悪い。元の世界の恭也を師と呼ぶあの二人のような感じだ。

「あれがもっとも深い契約の形です!」
「何言ってんのよ! 今までの救世主候補は全て女だったのよ! アンタ、今まで女とそんなことしてたわけ!?」
「してません! 恭也さんが男の方だから初めてできることなんです!」
「ふざけんじゃないわよ! 他に方法があるんだからそっちでやりなさいよ!
私だってマスターとそういうことしたことないんだから、後から来たくせに抜け駆けなんかさせないわ!」
「この際順番なんて関係ありません!」
「関係あるに決まってるじゃない! 私が正妻、アンタは後妻、もしくは愛人よ!」
「正妻ってなんですか! 結婚してるわけじゃないんですよ!
 それに、そ、その……こ、行為で補充したマナで恭也さんの膝を治すことだって可能です!」
「確かにマスターの膝は大事だけど、それと同じくらい貞操の方も大事よ!」

 二人はどんどんヒートアップしていく。
 もう今までの雰囲気などぶち壊しである。
 恭也はため息をついてあとに、息をできるだけ吸い込む。

「いい加減にしろ!!」

 恭也が怒鳴ると、二人はビクッと震えてバツが悪そうな顔をする。

「時間がないのだろう? 何を理由に言い争っているのかはわからないが、そんなことをしている場合じゃないはずだ」

 恭也にそう諭されて、二人は同時に肩を落とす。

「す、すいません」
「ご、ごめんなさい」

 やはり同時に頭を下げて謝る二人。

「まあ、それはいいが、契約とはどうすればいいんだ?」

 恭也がそう聞くと、レティアがリコを睨む。
 そんなレティアに、リコはムッとした表情をとる。

「深い契約はなしにします。ですが唇の接触ぐらいはいいですよね?」
「……まあ、それは私もしてるからね」
「今回はそれで妥協しておきます。決着はまた後でつけますけど」
「返り討ちにするわ」

 険悪ではあるが、先ほどのような言い合いにはならず、恭也は内心で息をつく。
 だが、リコの言いようが気になった。
 唇の接触……。
 レティアと初めて出会ったときのことを思い出す。

「ま、まさか」

 何やら先の展開が見え始めた。
 だが、そんな恭也には気づかず、リコがおずおずと近づいてくる。

「もう一度聞きます。恭也さん、私と契約してもらえますか?」
「あ、ああ」
「では、その証を」

 そう言って目をつぶるリコ。
 それを見て、恭也は頭を抱えたくなった。
 レティアもどこか不機嫌そうに見ているし。
 だが、これはしなければならないらしい。
 いつまでもこうしているわけにはいかない。だが恭也としては、契約のためにキスをするということには抵抗がある。
 先ほどの二人の会話の意味を理解したら、もっと葛藤しそうだが。

「リ、リコ、いいのか? 契約のためとはいえ」

 それを聞くと、リコは目を開けた。

「私は恭也さんにしてほしいです。その契約とかは関係なしにでも……ホントはその先も」

 リコは即答してみせた。
 後半の言葉は声が小さすぎて、恭也には聞こえていない。
 だが、恭也は心を決める。

「わかった」

 恭也が頷くのを見て、リコは再び目をつぶった。
 そんな彼女の肩に、恭也は手を置く。
 そして、少しずつリコの顔に、自らの顔を近づけていくのだが、不意に横を向いてレティアを見た。
 彼女は、自ら契約しろと言ったくせに、不機嫌そうに二人を睨んでいる。

「レ、レティア……そんなふうに見られるとやりにくいのだが」

 それを聞いたレティアは、口を尖らせて横を向いて二人から視線を離した。
 それを確認して、恭也は再びリコに向き直る。

「リコ。俺には書の精とかいうのはよくわからないが、これはリコ・リスっていう女の子にすることだから」
「はい……恭也さん……マスター……」

 二人の唇がゆっくりと重なる。
 そして、やはりゆっくりと二人の唇は離れた。
 リコはどこか夢心地のような感じで、ボーっと恭也を見ている。
 なんていうか、先ほどまでは想像できなかった表情である。
 だが、恭也もそんなリコを優しげに見ていた。

「だーかーらー! 二人の世界を作んな!」

 またも耐えきれなくなったレティアが、地団駄を踏みながら叫ぶ。
 どうやらこっちの書の精は壊れてきているようだ。こちらもなんというか、今までの彼女が作ってきた雰囲気がぶち壊しである。
 とりあえず、恭也はそんなレティアを見て、顔を引きつらせつつ、リコから離れる。リコはリコで、そんな恭也を寂しそうに眺める。
妙なトライアングルが完成している。
 レティアは自らを落ち着けて、口を開く。

「これで契約は完了、でいいのね?」
「はい」
「まあ、俺にはよくわからんが」

 恭也としては、自分には何の変化もないので、本当に契約とやらができているのかわからない。

「リコ・リスが言うんだから間違いないでしょ。
 まあ、そんなことはいいわ。もうこの世界を維持するのが難しくなってきたし、そろそろ二人には戻ってもらうわよ」
「もうか?」
「ええ。本当は今回で全てを説明しときたかったけど、仕方ないわ。
今後も、しばらくは私とは連絡がとれないと思っておいて、色々とやることがあるから」
「わかった」

 レティアが呪文を呟くと、二人の真下に召喚陣が現れる。

「赤の精……一応、マスターのことを頼むわよ」
「言われなくてもわかってます」
「そう」

 レティアはリコの返事に笑ってみせたあとに、次の呪文を完成させた。
 そして、次の瞬間には、恭也とリコは消え去っていた。

「頑張って……二人とも」

 真っ暗な、創りたての世界にレティアの声だけが響いた。











あとがき

 今回のあとがきは少々長くなります。
エリス「今までだって長かった」
 そう言わないでくれ。
エリス「で、何が言いたいの?」
 おそらく多くの方は、なんで大河がいるのに赤の主が恭也なんだ、と思っているのではないかと。しかも、こんなにわけのわからない説明をズルズル続けやがって、と。実際、この章だけで一万六千文字以上。
エリス「私も思ったもん」
説明がわけわからなかったり、ダラダラとしてしまったりなどは、自分の技量不足です。
 そして、赤の主に関しては、自分もかなり迷いました。最初から、赤の主は三パターン考えていて、一つは今回のとおり恭也。そして、原作通りの大河。もう一人がなのはです。
エリス「なのは? なんかかなり思い切ったこと考えてたね」
 思い切った考えというか、実際に今回投稿した分と、もう少し前の話はそれぞれのパターンを書いた。
エリス「書いたの?」
 それを見ながら悩んだわけだから。
 最初から悩んでいたと言ったとおりに、それぞれの設定とプロットはできてます。まあ、感想を聞いたり、ジャスティスをプレイしたあとに少しずつ変えたりしてますけど。ただかなり流れが違ってきます。はっきり言って、もう正反対なぐらいに。むしろ、ほとんどオリジナルな話になります。
 正直、自分でもなんでこんなに変わるんだ、と思ったぐらいに。最初は分岐ものにして、全部平行して書くか、とも思ったのですが。
エリス「書けるの?」
 難しいから選んだの。それで悩み続けた結果、恭也で決定しました。
エリス「理由は?」
 自分が一番書きたいと思ったのが、恭也が赤の主の話だった。まあ、他にも色々と理由はあるんだけど。無論、大河は赤の主ではないとはいえ目立ちます。というか、彼はむしろこれから色々な意味で目立たせます。自分の技術のせいで描写が少なくて申し訳ないですけど。
 というわけです、皆さんごめんなさい。
エリス「すいません。もし読んでくださっている方が、大河、なのはが赤の主バージョンを読みたいと言ってくださるのならば、こいつに書かせます。どうぞ遠慮なく言ってください」
 ってちょっと待てい! なぜそうなる!?
エリス「当たり前でしょ。最初はそうしようか悩んでたんだから」
 いや、まあ、そうなんだけど、恭也を選んだのは他にも理由があるんだよ! さっき言ったでしょうが!
エリス「じゃあ、その理由はなんなの?」
 なのは編はある意味二番煎じな感じになる。
エリス「二番煎じ?」
 展開的にすでに書いた方がいるってこと、勘のいい人ならこれだけでわかるはず。
エリス「大河は?」
 これは展開的に無茶が出る可能性が大。こっちでもすでに無茶やら無理矢理感があるのに。
 まあ、どれも召喚器あたりで矛盾と無茶がありそうなんだけど。設定とプロットを作って書き始めたのが、ジャスティスが出る前だったから。そのあと、ジャスティスとデスティニーをやって色々変えたりもしたけど。
エリス「もう、自分で決めたとか言うわりに、決めてないような気がする」
 うう、すいません。
エリス「でも、書いてほしいと言われたら?」
 で、できるだけ応えます。
エリス「それでよし。で、こっちはこれからどうなるの?」
 まあ、赤の主が恭也になってしまったことが重要ではあるのですが、恭也はこれからも召喚器は使いませんし、それ自体がまた休眠してしまったので、やっぱり今までと戦闘能力は大きく変わりません。潜在能力の引き上げも、召喚器がないだけに、効果も少ないと思います。だけど、リコの力は回復するという無理矢理感があり、無茶な設定だと思うのですが、勘弁してください。
エリス「とりあえず、召喚器は今まで通り封印ってわけね」
 召喚器を呼び出さない……というか、呼び出せないのが今後重要になる。戦闘能力以外の意味で。
エリス「後はあんたが続きをとっとと書くということで」
 了解です。
 それでは最後の叫びを……召喚器の名前が思いつかなぁぁぁぁぁぁぁぁい!
エリス「あんた、ネーミングセンスないし、雑学もあんまりないからね」
 うう。
エリス「それでは長々と失礼しました。こういうことになりましたが、これからもお願いします」
 お願いします。






赤の主となった恭也。
美姫 「うんうん。二人の精霊の主になったのね」
だな。今後の展開も楽しみ出し。
美姫 「一体、どうなるのかしらね」
それはそうと、名前は確かに難しいよな。
美姫 「アンタも苦手だもんね」
まあな。特にタイトルが苦手だ。
美姫 「そうよね」
うんうん。いつも、タイトルで時間を取ってしまう。
美姫 「その割には、そう捻りも何もないタイトルよね」
ほっとけ。
美姫 「それじゃあ、次回を期待しつつこの辺で」
次回も待ってます。
美姫 「それじゃ〜ね〜」



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