さあさあ、白薔薇様のお宅で一晩を明かした恭也は一体どうなったのでしょうか?

 

でわでわ〜〜

 

薔薇に愛されし者

 

『恭也リリアンに通う?』

 

 

朝五時半ごろ

いつも走り込みなどをして、早朝鍛錬をしていた恭也は自然と目を覚ました

 

「もぅ朝か……起きないと………」

 

そんなことを言って起き上がろうとする恭也

しかし、起きようとしたら何かに包まれていたせいか、うまく起きることが出来ない

聖が恭也のことを抱きしめた状態でいたせいであった

 

「あぅ〜〜、聖お姉さん離してください〜〜」

 

小声でお願いするが聖は一向に起きる気配はない

あきらめて自力で脱出しようとすると

 

「まだねむい〜〜」

 

寝ぼけているのか、それとも寝言なのか

もがいて布団を出ようとする恭也を強く抱きしめながら布団にもぐりこむ聖

 

「はぅ〜〜〜」

 

声が出すことが出来ず、仕方なしに二度寝をするしかないと思い、また夢の世界に旅立とうとする恭也

 

(おなすみなさ〜〜い)

 

聖に抱きしめられて安心したのか、それとも彼女の肌の温もりが心地よかったのか

どちらにせよ、恭也は穏やかな寝顔で夢の世界へともう一度堕ちていった

 

 

 

それから時間が経ち、現在6:50

いつものように起き始める聖

否、今日の彼女はいつもより目覚めが良さそうだ

 

「朝か〜〜昨日は恭也くんがいたから暖かく寝られたな〜〜」

 

そういって布団から出ようとすると彼女の胸元に何かがしがみ付いているのを確認した

 

「あらら〜〜こんなに引っ付いてくれちゃって

嬉しいね〜〜♪」

 

彼女にピッタリと張り付いていた恭也

嬉しそうに目を細めながらも流石にどうしようかと考えていると

 

「ふぁ〜〜う。おはようございます、聖お姉さん」

 

ねむたそに目を擦りながら起き上がる恭也

 

「ん、おはよ。恭也くんのおかげで暖かく寝られたよ〜〜♪ありがとね」

 

肌寒くなってくる季節のせいか布団に入ってもどうしても寒いときはある

だが今日は、恭也が添い寝していてくれたおかげで暖かく寝ていられた聖は

 

「ありがとね〜〜」

 

手でそっと頬を撫でた後に、頬擦りして感謝の意を表してから布団から出る聖

恭也は真っ赤になりながらも布団を出た

 

「さってと、着替えないとね〜〜」

 

さくさくとパジャマを脱ぎ始め、制服に着替え始める聖

あわてて壁の方を見る恭也

 

「あ、あの、聖お姉さん、着替えるなら一言言ってください………」

 

顔を真っ赤にしながら訴える恭也

そんな恭也を見て聖は

 

「ん〜〜、そんなに恥ずかしがることないじゃん

一緒にお風呂に入った仲でしょ♪」

 

そんな切り返しにあい真っ赤になって何も言えなくなっていた

 

(ちょっと突っつきすぎたかな〜〜)

 

壁の方を向いて俯いている恭也を

着替えが終わった聖は後ろから抱きしめながら告げる

 

「はいはい、恭也くんも早く着替えてね〜〜

そしたら朝食をしに行こうね〜〜♪」

 

「あの、何に着替えたら良いですか?」

 

「そっか、恭也くんの服昨日洗濯に出しちゃったっけ

う〜〜ん、じゃあお姉さんのを何か貸してあげよう。どれがいい」

 

タンスの前に連れて行きどの服がいいか選ばせようとする聖

少し考えてから恭也は自分が着ていたのと似た服を選ぶ

上は襟付きの黒色のシャツであり、白色の文字で英語がなにやらたくさん文字の書かれたシャツで

下はダークブルーのソフトジーンズ

 

しかし、サイズが聖のもののためかダブダブで、手がちょこんと出していている状態になっている恭也

そんな恭也を見て聖は

 

「可愛い〜〜〜!!!サイズが合ってない服ってこんなに可愛いんだ〜〜♪」

 

といいながら小さな恭也の体に飛びつき抱きしめる

 

回避しようと思えば恭也は交わすことが出来たが、聖に抱きしめられることに慣れたのか

はたまた聖が怪我をする心配をしたのか、彼はかわさなかった

 

 

そんなこんなのじゃれあいを経てから食事をするために部屋を出て、昨日食事をしたテーブルへと向かう

 

キッチンでは京子が聖と恭也のためにご飯と味噌汁と用意していてくれた

 

「あれ?珍しいね。朝がパン食じゃないのは………」

 

「そうよ〜〜。恭也くんが和食の方が好きそうに思ったからね」

 

恭也の雰囲気から洋食より和食の方がいいのではないかと思った京子は

ご飯に、味噌汁、、卵巻きにメザシの焼きものなどといった和風の食事を準備していた

 

もちろんこの食事を用意された恭也はというと

 

「ありがとうございます、京子さん。確かにボクは和食の方が好きです♪」

 

満面の笑みを浮かべながら京子にお礼を言う

そんな様子を見た京子は、恭也に合わせるようにかがみ込み

 

「うれしな〜〜そういってくれて。じゃあ一緒に食べようか♪」

 

恭也に頬擦りをしてからテーブルに着いた

 

 

それから恭也たちは朝食を開始した

ちゃんと手を合わせてから食事を始める恭也に聖と京子の二人は微笑ましく見つめてから

自分たちも食事を始めた

 

行儀良く食べている恭也を他所にして、京子は突然聖に質問をした

 

「ねえ、聖。恭也くんのこと、どうするの?」

 

「どうするって、何のこと?」

 

質問の意図が分からなく聞き返す聖

 

「だからね………恭也くん、今日は山百合会の違う子が預かるんでしょ?

他の子が恭也くんを連れ帰るまで何処に預けるの?ってこと」

 

「ああ、大丈夫。今三年はほとんど授業やってないから学校に連れて行っても問題ないから

それより恭也くんのお弁当の方お願いしていい?」

 

「っちぇ。なーんだ、恭也くんの置いていってくれないのね」

 

「あのね〜〜」

 

「だってこんな可愛い子、早々いないわよ

それに礼儀正しいし、お手伝いとかもちゃんとできる

いっそのこと、恭也くんのこと家の子にしたいな〜〜」

 

「そりゃ〜〜私も思うけどね。でも、その前にこの子の親に一言『ガツン』と言ってやってからにしてよね」

 

 

 

聖と京子が話をしていると恭也は食べ終わりご飯をよそってあった茶碗と味噌汁が汲んであった汁碗を持ってキッチンの桶に浸し、自らの使用していた物を洗い始める

 

「あら、恭也くん。

そんなことしなくてもいいのに」

 

「いえ、お世話になってばかりですし。それにやりたいからやってるんです

あまり気にしないでください」

 

それだけ言うと恭也はセッセと茶碗などを洗い始める

 

「う〜〜ん、本当にこの子がほしいわ〜〜」

 

京子は大変恭也のことを気に入った様子であった

だが今日はもう一緒にいられないと思うとちょっと悲しそうな表情をしていた

 

 

 

 

「じゃ、恭也くん私は学校へ行く準備をしてくるからちょっと待っていてね〜〜」

 

「はぁ〜〜い、わかりました〜〜」

 

大急ぎで部屋に戻り学校へ行く準備をしてくる聖

何故、そんなに急ぐのか

 

恭也のことをあまり他の生徒たちに見られないように、彼女は少し早めに登校をしようと思ったようだ

 

「じゃ、準備できたから行こうか♪」

 

「はい」

 

嬉しそうな表情をして聖から差し出された手を握り返し頷く

 

「はい、お弁当

こっちは恭也くんのね。

ねえ、聖。また恭也くんを連れてきてよ」

 

「う〜〜ん、まあ出来たらね」

 

「はい、じゃあ行ってきます♪」

 

にこやかな表情をして玄関にて靴を履いて京子に告げる恭也

そんな表情を見て京子は恭也の頬にキスをしてから「行ってらっしゃい」といった

 

「いいの〜〜浮気じゃないの〜〜これって」

 

「なに言ってるのよ、こんな可愛い子は誰だってキスの一つや二つしたくなるものよ」

 

キスをされた恭也はというとやはり赤くなっており、差し出された聖の手を握りリリアン女学園へを出発した

 

 

 

 

「ふぁ〜〜あ、っといけない、いけない

白薔薇様のベストショットを取るために張ってるんだからちゃんとしないと」

 

フレームの無いシンプルなメガネを掛けた女性が植え込みの中でつぶやいた

 

「もう数ヶ月も経つと三薔薇様もいなくなるから今のうちにきっちりと写真に収めとかないとね〜〜」

 

そういって自らの持つカメラを強く握る

そんなことをしているとちょうど聖は恭也の手を握って校門の方へとやってきた

 

「あれ?今日は早いな……

まあ、良いや。さあ、白薔薇様の表情を………」

 

そう言って聖の表情をフレーム内に収めようとすると、聖のあまりの嬉しそうな表情に驚く

 

(うわ〜〜すごい表情。これはいいのが取れるわ〜〜)

 

そう考えてから次々とシャッターを切る

すると不意に聖の手が何かを握っているのを気がつく

 

「なに握っているんだろう?」

 

そう思ったらすぐにカメラのレンズで確認するためにそちらの方へと向けると

小さな男の子を連れているのがわかった

 

(か、かわいい〜〜)

 

そう思ったら思わずシャッターを切っていた

もう次から次に……

 

恭也を一人で取ったり

聖と一緒のペアでとったり

気がつくと二人はもう校舎の中に入っていた

 

「なんだったんだろ?あの可愛い男の子………」

 

疑問に思った少女は思わず自分の考えていたことを呟いていた

 

 

 

 

 

「じゃあ恭也くん何しようか?」

 

あまり人数のいない教室で聖は恭也に告げた

 

「えっと、ソロバンをしていていいですか?」

 

「ん〜〜?いいけどどうして?」

 

「えっと、父さんと旅をしているとちゃんとお金の管理を出来ないとすぐにご飯が食べられなくなっちゃいますから………」

 

哀愁の漂う表情で恭也がそう言うと三年藤組みの生徒たちは爆発的な悲鳴を上げた

 

 

「聖さん、この子どうしたの?可愛すぎるよ〜〜」

 

「お姉さんが何かご馳走してあげようか?」

 

「一緒にどこか行こう」

 

 

教室内には二十人にも満たない生徒たちがいっせいに恭也に言葉を掛けた

もちろん、そんなに言葉を掛けられて恭也はというと目を白黒さており、困惑していた

 

「はぁ〜〜い、やめてね〜〜。恭也くんは、今迷子でお父様が迎えにこないから私たち山百合会で預かってるの

声を掛けるのはかまわないけど、あまり驚かせないであげてね

人見知りするわけじゃないけど、まだ小さいんだからね」

 

そうやって聖が言うと、ひとまずは藤組みの生徒は落ち着いた

しかし、恭也はというとあまりのたくさんの人が押し寄せたために、涙目になりながら聖のスカートの裾を握っていた

 

「はい、もう怖くないよ〜〜

別にここにいるお姉さんたちは恭也くんのことを驚かせようとしたんじゃないからね

ちょっと仲良くしたかっただけだからね

だからそんなに小さくならないでね」

 

「は、はい」

 

そっと抱きしめながら語りかけてくれた聖のおかげか、何とか落ち着きちょっと固い笑顔をうかべながら挨拶をした

 

「はじめまして恭也です。あの、よろしくお願いします」

 

「ん、良く出来ました♪」

 

恭也が頭をペコリと下げながら挨拶をすると聖はそっと頭を撫で褒めてあげる

そんな様子を見ていた藤組みの皆様方は

 

(可愛い〜〜、いいなあ聖さん。あのことあんなことやこんな事したんだろうな〜)

 

(もお、連れ去りたい位可愛すぎだよ〜)

 

(弟にほしい……)

 

(こんな子がほしいよ〜〜)

 

などなどと恭也のことを思っていたりしていた

 

 

 

 

それから恭也は一躍三年藤組みのアイドルと化した

否、アイドルというよりはその可愛さから愛されてまた愛してといった感じであろうか

 

とにかく、皆様方で恭也のことを猫可愛がりしたのである

髪を撫でたり、その小さな手を握ったり

はたまた体を軽く撫でたりと、まあ多種多様な愛撫をもたらしていた

 

そして、恭也がいることは他のクラスに漏れると何かと困ると全員一致の意見で

クラスの情報を完全にシャットダウンした

もちろん、時折自習を見にやってくる先生方にはあの手この手で黙っていてもらうようお願いをしていた

 

 

 

 

そんなこんなで放課後…………

 

恭也は薔薇の館に来ていた

 

「じゃあ、今日は私の家だからね恭也くん♪」

 

江利子が嬉しそうにそう告げた

何しろ彼女はめずらし物や変わったものに目が無いお人である

こんな人が恭也を前にするとどうなるか

もちろん興味津々になる

 

「あ〜〜あ、もう一日私のうちでもいいのにな〜〜」

 

寂しそうな声でそう告げる聖

そりゃそうだ

彼女はとてつもなく恭也のことを猫可愛がりしていた

そんな人物が自らの手元から離れるというのに黙ってみていられるわけが無い

 

ひとしきり愚痴を言いながら聖はひとまず黙った

 

「そう言えば祥子は?」

 

ちょうど聖が黙ったときに紅薔薇こと蓉子が誰と無し尋ねた

 

「えっと、わかりません、お姉さまが来てない事は確かです」

 

祐巳がそういうと丁度そのとき扉が開いた

 

「ごきげんよう、祐巳。薔薇様方も……」

 

「ああ、祥子どうしたの昨日はここに来ないで」

 

「家の用事がありまして………」

 

蓉子が祥子にそう尋ねると少しすまなそうな表情で素直に答える祥子

そんなことをしていると

 

「そうそう、祥子

可愛い子が今いるんだよ〜〜」

 

彼女の友人でミスター・リリアンこと令がそう告げた

 

「可愛い子?」

 

「ほらこの子だよ」

 

そういって江利子は自分の抱きかかえていた恭也を差し出して祥子に見せる

 

「お久しぶりです、祥子お姉さん」

 

にこやかな笑顔を浮かべて挨拶をする恭也

 

「あれ、祥子とも知り合いなの?恭也くんは」

 

蓉子が当然のように質問をしてくる

すると

 

「ええ、お姉さま。この子は二年ほど前に私の父のボディーガードについた人のお子さんです」

 

祥子がそう告げると皆がいっせいに祥子に質問をする

 

「この子のお父様はどんな人なの?!」

 

語調を強くして尋ねる

 

「どういう方かというとですね………

はっきり申し上げて計画性の無い方ですね

恭也くんもお父様について、当時は修行のたびのに付いていたらしかったようですけど

どんな生活をしていたかと聞くと凄い物がありましたよ」

 

それから話し出す祥子の話に山百合会全員が耳を済まして聞いていた

その内容は

行き当たりばったりで無計画な父・士郎の人物像を浮き彫りとし

さらには息子の恭也が心配して当たり前な無茶な生活スタイルがはっきりとした

 

もうこう来ると山百合会の全員が恭也のことがあまりに不憫なために全員がこういった

 

『恭也くん、私の弟にならない?』

 

そういったが恭也は首を縦には振らなかった

 

「まあ、恭也くんがそう言うのならしょうがないわよね………

でもね恭也くん、いつでもお姉さんたちを頼ってきてくれて良いからね」

 

蓉子が恭也にやさしく諭すようにそう言ってあげると

 

「はい、蓉子お姉さんありがとうございます

でも、ボクは大切な人を守れるだけの強さがほしいんです

だから、父さんについていって強くならないといけないんです」

 

力強い瞳をしてその決意の程を述べると

 

「うぅ、いい子だ。こんないい子はそうそう居ないよ

……よし決めた。この子の親がきたら一発ブン殴ってやる!!」

 

聖が恭也のことを抱きしめながらその決意を語った

するとほかの面々も殴るとまではいかなくともビンタのひとつでもしてやるような決意をしていた

 

 


〜あとがき〜〜

 

今回はすごいことになりました

 

恭也の父・士郎のあまりの酷く安定しない生活

 

これを思いついたのは師匠の書いているとらハ学園の二十一話あたりを参考にいたしました

 

ほかにも数多くのSS作家の皆さんがこのことを書くと、たいてい恭也は士郎の食い倒れ道楽の被害にあっている傾向があるので自分のこの作品にも影響させてもらいました

 

しかし、こうしてみるとホント『ろくでなし』な父親してるな士郎って(汗)

 

でわでわ〜〜



タカさん、投稿ありがとう!

美姫「恭也〜♪可愛いな〜。良いな〜、良いな〜。浩も可愛い恭也書いてよ」

さて、次回は江利子さまのお宅に訪問ですね。
家族たちがどんな反応をするのか、楽しみです。

美姫「無視しないでよね。浩の分際で!」

えらい言われ様だな。

美姫「当たり前じゃない」

はいはい。

美姫「何よ、その投げやりな態度は。まあ、良いわ。タカさん、ありがとうね〜。
    次回も楽しみにしてるわ」

そういう事です。
ではでは。





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